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第三話 旅立ち

空間歪曲転移ワープ超長距離転移ジャンプに変更しました。

聡達の"収納空間(ストレージ)„の収納限界量を上昇させました。

転移陣の数を八個から十五個まで増やしました。

 旅に出るとは言ったものの



「あの、聖王様!」

「ん?どうしたのだ?」

「旅に出た事無いので何を持っていけばいいのか分かりません!」



 とりあえず自身堂々と言ってみる



「…………堂々と言うようなことでは無いだろう?」

「そうですね」



 正論で返されると何も言えなくなる。なんか悲しい。



「で、でも私達は旅に出たことないので勝手が分からなくて」

「それは大丈夫じゃろう」

「えっと、学院長それはどういう事ですか?」



 俺たち四人は頭の上に疑問符を浮かべる。



「アイテルとラファエルがいるからのう」

「そうだぜ。分からない事があれば俺とラファエルに聞いてくれ」



 それを聞いて確かに二人がいるのなら問題ないと納得した。



「それじゃあ何を持っていけばいいの?」

収納空間(ストレージ)は使えるよな?」

「使えます」

「お前らは何kgまでなら入れられる?」

「俺は40kgまでなら」

「俺も40kgだな」

「私は59kgです」

「私は……83kgくらい」



 俺、浩介、千夜、夕陽の順番で答える。



「夕陽は空属性に適性があるみたいだから多いのは不通だが、千夜より少ないのか……」

「そ、そんなこと無いですよ!二人とも今より多くの物を入れられるようになる筈です!」



 千夜がフォローしてくれる。

 しかし、千夜と夕陽よりも少ない俺と浩介はアイテルの言葉が思いの外胸に刺さり、項垂れる。



「持っていく服は普段着、制服の予備は?」

「あります」

「ならそれも。後は歯ブラシやタオル。まあ普段使ってる奴を持ってけば何とかなるはずだ」

「お金はどうするんですか?」

「聖王様がくれたから大丈夫だ」

「ちなみにどのくらい頂いたんですか?」



 千夜が恐る恐る聞いてみると



「白金貨が四十枚、金貨、小金貨、銀貨、鉄貨を五十枚ずつに石貨を百枚だな」

「「「「え!?」」」」

「ふむ。少ないか?もう少しやろうか?」

「聖王様。彼らは大金過ぎるから驚いているのですじゃよ」

「ふっ。それくらい分かっているさ」

「あ、そうじゃ。聖王様、彼らに渡すものがあると言ってなかったかの?」

「ん?ああ!すっかり忘れてた」



 そう言うと聖王様は玉座から立ち上がり、玉座の間を出ていった。



「まあ、すぐに戻ってくるじゃろ。アイテル!ラファエル!」

「はい?なんですか?」

「えっと、何でしょう?」



 アイテルさんとラファエルさんは何を言われるのだろうかと揃って首を傾げている。



「旅の間は四人を頼んだぞ」

「任せてください」

「色々と教えてあげればいいんですよね?」

「そうじゃ。四人ともまだ学生じゃからな。戦闘技術、魔術を含めその他諸々のことを教えてやってくれ 」

「「はい!」」

「これで安心じゃな」

「聡、浩介、千夜、夕陽!ちょっとこっちへ来てくれ」



 いつの間にか戻ってきていた聖王様に呼ばれ、俺達は聖王様の下へと駆け寄って行く。



「聡にはこれとこれだ」

「これは?」

「お前の父から預かっていたアダマンタイト製の剣だ。あいつが戻ってくるまでに何かがあったらお前に渡してくれと頼まれていてな。それと、指抜きグローブ。手甲には玉鋼が使われている」



 聖王様から手渡されたアダマンタイト製の剣は、鍔の中心に宝石なのか?よく分からない石がはめ込まれてるが、今まで使っていた鉄の剣よりも頑丈で斬れ味が高そうだ。



「父さん……」



 今どこにいるのか分からない父さんからの贈り物。この剣に恥じない剣士になりたい。



「浩介にはこれとこれだ」

「大剣と……同じグローブですか?」

「同じアダマンタイト製の大剣と、これを使いこなせるように筋力上昇(ストレングス)敏捷上昇(アジリティー)の炎風の加護が施されている指抜きグローブだ」

「早速使わせてもらいます」



 浩介は言うが早いかすぐに着用して大剣を振っていた。

 加護が上手く働いているのだろう、いつもより速く振れていた。



「凄いな、これ。ありがとうございます!」

「うむ。夕陽にはこれだ」

「グローブと…………魔導銃リボルバー?でも、私……持って……ますよ?」

「それはブリタニアで君専用に造られたものだ」



 ブリタニアと聞き夕陽は驚いたのか息を呑んでいた。



「ブリタニアで……名前とか……は」

「右の白いのがファルケン、左の黒いのがアドラーだ」



 夕陽専用に造られた魔導銃リボルバー。純白のファルケンと漆黒のアドラー。今まで使っていた学校の訓練用の銃より使いやすそうだ



「手に……馴染み……ます」

「専用だからな」

「ありがとう……ござい……ます!」

「お礼はブリタニアの技術者に言ってくれ。で、千夜はこれとこれだ」



 千夜は指抜きグローブと一本の杖を渡されていた



「その杖はユグドラシルから送られてきてな。千夜に渡してやってくれと言っていた」



 『大いなる神竜』と呼ばれる存在からの思わぬプレゼントに近くにいた俺も含めそれを見ていた全員が驚く。



「ユ、ユグドラシル様から!?い、良いのでしょうか?」

「問題ない。千夜なら使いこなせるとユグドラシルも思ったのだろうからな」



 千夜は恐る恐る受け取りながら、何か疑問に思ったのか聖王様へと尋ねた。



「この杖の素材は分かりますか?」

「ん?ああまあ、その杖に認められれば分かるだろ」

「認め……?そうなんですね。ありがとうございます!」



 聖王様の言葉を不思議に思いながらも千夜はお礼を言い、俺達は聖王様と一緒にみんなの所へ戻っていった。



「出発は明日だ。港町のコレッタに行く」

「コレッタまで結構距離ありますよ?」

「それは大丈夫だ。"超長距離転移(ジャンプ)„を使って船の所までは送る」

「"超長距離転移(ジャンプ)„?それってなんですか?」

「紙に点と点を書くだろ?その最短距離を求めよってなったら、点と点の間を折ってしまえば最短距離になる。理屈的にはそういう魔法だな」

魔力マナ魔力オドのどっちを使ってるんですか?」

魔力オドだ」



 この回答に絶句する。それなら誰でもというわけにはいかないが、出来る人はそれなりに存在するはずだ。



「勘違いするなよ。そもそもこういう魔術は世界に認められた者しか使えないし、イメージが大切だからな。行った事がある場所にしか行けない」

「どうすれば認められるんですか?」

「さあな。コアにはまだまだ謎が多い。私以外の魔王でも使えた者は限られていたからな、認められる条件なんて分からん」

「それにね、魔王が駄目でも神様なら?って思うでしょう?残念だけど神様でも駄目なものは駄目なのよ。理由はさっきフェルナンドが説明した通りね」



 魔王でも神様でも、使える者は限られているらしい。

 一体どんな条件があるのやら、見当もつかない。



「とりあえず、明日の午前10時までにここ、王城の玉座の間まで来てくれ。衛兵には話を通しておく」

「分かりました」

「質問はないな?」

「ありません」

「ならいい。ああそれとこれだ。アイテル!ほれっ」

「わっ!いきなり投げてこないで下さいよ。えーと……これなんですか?」

「魔通石だ」

「魔通石?」

「ブリタニアの発明品だ。どんなに離れた場所でも会話することが出来るらしいが、どういう原理かは知らん」

「つまり、何かあったら連絡しろと」

「そういう事だ」



 その後、細かい注意を学院長からされてその場はお開きになった。と言っても俺達は学院長とともに学園に戻るだけだ。



「ん?あれ?ちょっと待ってください!」



 転移陣で学院に戻り学院長室まで行ってから、千夜が唐突に言い出した。



「転移は世界に認められた者しか出来ない。なら、転移陣は認められてるんですか!?」

「よく気がついたのう。転移陣は世界に十五個までなら存在しておるよ」

「何で十五個だけなんですか?」

「さあのう。十五個までなら起動したが、十六以降は起動しなかった。じゃから、十五個までなら世界に認められてると思われてるんじゃよ。理由は不明じゃがな」

「そうだったんですか」

コアは謎に包まれておるからの。そろそろ時間じゃ、もう帰りなさい。」

「「「「失礼しました」」」」



 俺達はそのまま学院長室を出ていき、帰路へとついた。



「終焉魔王を倒す……か」

「ははは。びっくりしたよな」

「びっくりなんてものじゃないよ、二人とも。」

「うん。心臓止まるかと思った」

「夕陽のそれは大袈裟すぎだ」



 他愛のない会話をしながら道を進む。



「俺と夕陽はこっちだから」

「聡、千夜。ばいばい」

「ああ、浩介、夕陽。また明日」

「おう。また明日」

「ばいば〜い」



 T字路の所で俺と千夜、浩介と夕陽で別れた。

 いつもなら会話があるけど、今日は会話がない。

 やはり不安に思っているのだろう。元気が無いように見える。



「大丈夫か?」

「うん。大丈夫だよ」



 心配になって聞いてみるが、笑顔でそう言ってきた。

 だけど、俺達は幼馴染みだ。それが本当かどうかはすぐに分かる。



「…………本当は怖いんだ」

「そうだな」

「アイテルさんとラファエルさんもいるけど、誰かは死んじゃうんじゃないかって思うと凄く怖い」

「例え何があろうと、千夜のことは護ってやる。心配するなってのは無理だろうけど、絶対に護ってやる」

「うん。その時はお願いね」



 千夜の不安を取り除けたわけではないけれど、それでも心做しかさっきよりも元気に見える。



「また明日ね」

「ああまた明日」



 俺と千夜の家は隣合っている。千夜の家が手前だ。

 千夜が玄関から家の中に入っていくのを見届け、俺も家の中に入っていった。



「母さん、ただいま」

「おかえり」



 ふと時計を見てみると時刻は十五時二十三分を指していた

 王城であったことなどを考えると、もう少し時間が経っていると思っていた



「母さんに言わなきゃいけないことがあるんだ」

「なに?」

「聖王様の頼みで世界を救う旅に出ることになった」

「知ってるわよ、それくらい」

「え?なんで?」



 これには驚きだ。ついさっきの出来事を母さんが知ってるとは思いもしなかった。というか本当に知ってるの?



「復活した終焉魔王を倒しに行くんでしょ?」

「どこで聞いたの?」

「昨日、聡がまだ学校で授業受けてる時に聖王様が直々に」

「聖王様が直々に?」

「そう。これは使いを出すんじゃなくて、自分の口で言うべきだと思ったって」



 聖王様が直々に言った、確かにこれ程のことならありえるだろう。

 でも、聖王様を知らない人はいない。なのに、騒ぎになっていないのは何故だ?



「騒ぎになっていないのは聖王様が”幻視(イリュージョン)„を使ったからね」

「幻視?」

「闇属性の魔術、自分の姿を偽って相手に視せるもの。魔術を使ってる人と同等、又はそれ以上の実力者じゃないと見破れない」

「へ〜」

「そうね。私から言うことは一つだけ」

「なに?」

「生きて帰ってきなさい。ただそれだけよ」

「うん」



 その日の晩御飯はいつ帰って来られるのか分からないため、それなりに豪勢だった。

 時刻は二十二時。旅の準備を終え、明日からの旅に不安と希望を合わせ持ちながら寝たのだった。



「母さん、行ってきます!」

「おばさん、行ってきます」

「二人とも行ってらっしゃい。帰ってきた時は元気な姿を見せてね」

「はい!」

「聡君。家の千夜をちゃんと護ってやってくれ」

「千夜のこと、お願いね」

「分かってます」



 母さんと千夜のお母さん、お父さんに見守られながら俺と千夜は王城へと向かった

 途中で浩介、夕陽に合流して



「叶芽 聡、水上 千夜、春日井 浩介、村上 夕陽の四人で間違い無いですね?」

「はい」

「それではこちらへ。聖王様がお待ちしております」



 王城の門前で門番とのやり取りがあり、十数分ほど歩いて玉座の間へと辿り着いた。



「来たか。意外と早かったな」



 約束の時間まで二十分くらいあるから、聖王様がそう言うのも無理はない。



「待たせるのも良くないと思いました」

「そうか。なら早いがもう行くか?」

「大丈夫なんですか?」

「大丈夫だろ」



 聖王様の周囲に魔力オドがどんどん集まってくる。

 足下にかなり大きな魔術陣が出来上がる。



「もう少し近くに来い」



 そう言われ、俺達は聖王様の近づく。



「"超長距離転移(ジャンプ)„!」



  魔術陣から光が溢れ呑み込まれる。

  たった一瞬でその場の光景が違うものへと変わっていた。

  さっきまでは玉座の間にいたはずだ。だけど今は、青い空と海が、下には木の板が見える。

 そのまま周囲を見渡してみると、帆や忙しなく動く人達がいた。

 ここは船の上のようだ。

 聖王様に近づいてくるガタイのいい男性が見えた。



「おや?聖王様ですか?随分と早い到着で」

「意外と早く全員が集まったのでな」

「なるほど、そうでしたか。それにしても、そこのお若い四人組の顔色がかなり悪いようですが?」

超長距離転移(ジャンプ)を使ったからな、それで酔ったのだろう。」

「ここから王城だと約一分ですか?まあそれでも初めての方にとっては気持ち悪くなるのも仕方のないことかもしれませんが」



 男性は聖王様と会話をしてから俺たちに目を向けた。



「申し遅れました。私はフィリップ・アルノーでございます。この船、ドミニク号の船長をさせて頂いております。」



 この後に自分達も自己紹介をし、どこに向かうのか、目的地にはいつ着くのかを聞いてみた。



「はい。この船はウラスへと向かいます。到着は明後日の午前9時35分頃を予定しております」

「早いですね」

「風流操作と水流操作を行いますからね、早く着きます。それに」

「それに?」

「今回はうちの商会に所属している者以外に、魔法師団の方々が乗ってくれていますから」



 話を聞くと、魔法師団からは男女三人ずつ来ており、今回の船旅に同行するそうだ。アルノー商会に所属している人達もそれなりに優秀らしいから、安全だ。



「そろそろ十時になります。出航しても宜しいですか?魔法師団の方々の自己紹介は出航してからと言うことで」

「うむ、そうだな。私もそろそろ王城に帰るとしよう。皆のもの、後は任せたぞ」



 聖王様はそう言うと、超長距離転移でさっさと帰っていった


「船が動きますと少々揺れますので気をつけてください。それでは、出航だ!錨を上げろ!帆を広げろ!」



 こうして、俺達の終焉魔王を倒す旅が始まった。


 ――――――――――――――――――――――――



 某所某時刻



「『博士』彼らも出航したみたいです」

「そうだね。我らが創主(グランドマスター)からの命令だし、遅かれ早かれやらないとダメなことだからね。ちゃんとするさ」



 博士と呼ばれた者の背後には4m近いゴーレムが守護するかのように立っている。



「『剣姫』殿も剣帝の足止め、頑張ってください。そうじゃないと、彼らの実力が測れない」

「分かっています。ふふふふふふっ。兄さん待っていてくださいね。貴方は私が────」



 剣姫と呼ばれた者の最後の言葉は強風によってかき消され、誰の耳にも残らなかった。

補足


魔導銃リボルバー


モデル コルト・ニューサービス

ダブルアクション

銃身 8インチ(20.32cm)


コルト・ニューサービスにした理由はリボルバーの形を調べていた際に理想に近かったから



この世界の船のモデルはクリッパー船です

風流操作、水流操作により、日が出ている間は15ノットで、日が沈んでから、明け方までは4ノットで移動します



加護


付与エンチャントは人に能力上昇、耐性強化を施すのに対して、加護は武具や防具に使用者の基礎能力の強化、状態異常無効などの効果を施す物です。

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