第十七話 四人vs一人 【ここから改稿中】
誤字脱字等ございましたら報告をお願いします。
「二人とも大丈夫?!」
千夜は多重魔力障壁を維持しながら浩介と夕陽に向かって走っていく。
俺は浩介と夕陽を追い詰めた女子をじっと見ながら星雷一条の構えを取った。女子もこちらをじっと見ていたが、不意に口を開いた。
「ゴーレムを倒したという事はそれなりの実力はあるということですか。あの二人には名乗りましたが、あなた達には名乗っていないのでもう一度名乗りましょう。私の名はアインスです」
「……俺の名前は」
「知っています。さて、千夜さんでしたか?彼女が二人を見ていてくれるようですよ」
俺はゴクリと喉を鳴らす。
アインスの威圧感が増す。俺は深呼吸をして息を整え
「すーはー。……星雷一条!」
足元の魔力を爆発させアインスに向けて突撃する。
「遅いですね」
アインスは一歩右にズレることで躱し、俺が半分ほどアインスを通り過ぎた所で膝を腹部に叩き込み、浮いた体に左脚の回し蹴りをみまう。
ズザザザザ
「ゲホッゲホッ」
地を滑るようにして後方へと流される。ざっと確認してみるが骨は大丈夫のようだ。
「大丈夫ですよ。骨にはダメージが入らないようにして蹴りましたから」
気遣いをされていたようだ。
「それは、ありがとうございます」
立ち上がり、剣を右脇に構え
「"ブースト„」
地を駆けた。
「千鳥!」
斬り上げから即座に十字に斬るが、全て軽いステップで躱されてしまう。
「千鶴!」
三連づきに繋げるがこれもまた軽いステップで躱される。
「ダガーモード」
アインスが呟くとその手に持つ銃を魔力が覆い一際大きく輝くと、銃把から銃口までが一直線となりダガーと呼ばれる形状に変化した。と言っても剣になったのではなく、銃身を覆っている魔力が刃を形成している。
アインスは二丁拳銃からダガーによる二刀流に変えたのだ。
「さて、いきましょうか」
少し身を沈め連撃を放ってくる。速い。
今は身体強化のお陰で辛うじて捌くことが出来ているが、アインスの底が見えない。こちらが反応できるギリギリの速度を保ちながら連撃を放ってくる。
(切り傷も少しづつ増えてきてる……これ以上はマズイ!)
「ハァァァァァ」
残っている魔力を前方へと一気に放出する。アインスは後方へ跳躍し距離を取ったが、何事も無かったかのように追撃のため距離を詰めてくる。
魔力の急激な消費による倦怠感を我慢しながらアインスの動きに合わせるようにして
「ヤマタノオロチ!」
八もの斬撃をアインスに向けて右逆袈裟から放つ。
その八連を全て
「双剣乱舞」
防がれた。使用後の一瞬の硬直。その一瞬で無数の切り傷が俺の体に刻まれた。その痛みを我慢しながら剣を薙ぐが、軽やかにステップを踏みながら舞うようにして扱うダガーに逸らされる。
防戦一方となり反撃の隙を見つけようとするが見つけられるず、逸らすことも防ぐことも出来なかった分の切り傷がただただ増えていく。
(……手加減されていても届かないのかよッ!)
「思考を逸らすとは余裕ですね」
「しまっ」
回し蹴りが左脇腹に直撃する瞬間にアインスは膝を曲げて何かをそのまま膝で蹴った。それが両手剣だと気づいた時にはアインスはバックステップを踏みながら
ギギンッ
今度は飛んできた何かを斬り
「ガンモード」
左手のダガーを覆っていた魔力が無くなり元の魔導銃へと戻して
ドパンドパンッ
ドパンドパンッ
バチバチッ
目の前で火花が散る。
一度目の銃声は後ろから、二度目の銃声は前から聞こえた。そして、アインスは銃口をさっき火花が散った場所に向けている。何が起こったのかを理解した。
銃弾を銃弾で逸らしたのだ。
「……う、そ」
「…………ハッ!聡、大丈夫か?」
「あ、ああ。大丈夫だ、ありがとう」
後ろから夕陽の驚いている声が聞こえた。アインスの蹴りから俺を守ってくれた浩介に全身の無数の切り傷について心配されたが大丈夫だ、と返した。感謝の言葉も忘れずに。
「そうか。魔力は?」
「ほとんど残ってない」
「手を出せ」
言われるままに手を出すとその手を浩介の手で握りしめられた。
「"魔力譲渡„」
浩介から譲渡された魔力のおかげで体を襲っていた倦怠感が軽減される。
「ありがとう、浩介。それにしても魔力残ってたのか?」
「ん?さっき千夜に魔力回復薬を貰ってな。聡が頑張ってくれたからある程度回復したんだ」
「そっか。……アインスに俺達の攻撃は通用しない。どうする?」
「千夜と夕陽に支援してもらいながら接近戦を仕掛けるだけだろ?」
「……そうするしかないか」
「下手に策を弄しても意味ないかもって千夜が言ってたからな」
「そっか。合わせろよ?」
「聡こそ」
二人で同時にアインスへ向けて駆ける。千夜は魔力消費の少ないアクア・ハスタムを乱れ撃ち、夕陽はアインスの動きに合わせて銃弾を撃って牽制している。
「蟷螂」
身を深く沈めアインスの脚を剣で薙ぐが高く跳躍して躱される。浩介は胴の位置に両手剣で突きを放つ。それに合わせて俺は剣を斬りあげる。
当たると思われたが、体を捻り両手剣の腹を膝蹴りして弾き、足裏に魔力を集中させて両手剣を弾いた反動を利用して剣の刃の部分に触れ勢いを利用しつつ後方へと更に跳躍した。
その間に夕陽は銃弾を、千夜はアクア・ハスタムをアインスに向けて正確に撃っていたが、その全てを銃弾で逸らすか撃ち抜かれるかだった。
「あ、ありえない」
「マズイんじゃないか」
「…………嘘、でしょ」
「あ、諦めちゃ駄目だよ!」
俺、浩介、夕陽か遠い目をして絶望感を漂わせているなか、千夜は冷や汗をかきながらも励まそうとするが
「これくらいは出来て当然です」
千夜も遠い目をしかけるが首をブンブンと勢いよく左右に振る。
「"アクセルダウン„!"サークル・アクセル„!」
聡達には加速の魔法が、アインスには速度低下の魔法がかけられる。
「みんな!やるよ!」
「ああ!」
聡は返事をしてからアインスへと斬りかかる。続くようにして浩介も斬りかかる。夕陽は前衛の邪魔にならないような位置をキープしながら撃つ。
「体が重い。ですがッ」
袈裟、薙ぎ、突きを二人して連続で繰り出すがアインスは最小限の動きで躱し、銃弾も撃たれる瞬間に射線から逃れることで躱す。
「何で追いつける!」
「下げられたてもこちらが速いだけで……しょう!」
アインスは千夜のロックバインドを間一髪で躱す。だが、
「フレイムスラッシュ!」
「千鶴!」
躱した際に少しばかり体勢を崩していた。その隙を狙っての前からの三連突きと後ろからの右薙ぎの一撃。アインスは右に跳びつつ三連突きをダガーで逸らし、最後に斬りあげた。
「"断罪の光弾„」
そこへ夕陽から放たれた光がアインスに直撃し吹き飛ばされた。
「ゲホッゲホッ……遊び過ぎましたか。いや、彼らの実力を見誤っただけですか」
「"チェーンバインド„」
千夜が魔法名を口にすると虚空から鎖が出現し、アインスをがんじがらめに拘束した。だがアインスはこちらを見ずに村の方へと顔を向けている。疑問に思い、村の方へと顔を向ける。人影が見える。誰かがこっちに走っきていた。
その人影はこちらに向けて加速した。
ガキンッッ
聡は一歩前に出て振り抜かれた刃に対応した。速くて重いその一撃に聡は後退する。攻撃してきた女はアインスの方へと飛びずさる。
見覚えのある顔だ。確か、ミーナという名前のアイテルの妹だ。
「アインス、情けないわね。捕まるだなんて」
「実力を見誤っただけです」
両手を上げてやれやれとでも言うかのような仕草をするミーナにアインスは抗議する。
「ミーナだってボロボロじゃないですか」
「兄さんが意外と強くて」
「はぁぁぁ」
「何か文句ある?」
「情けないですね」
「……助けないわよ」
「冗談です」
鎖が音もなく斬れアインスの拘束が解ける。
「……見え、な……かった」
「速い、な」
いつ斬ったのか、いや今斬ったのだろうが、その太刀筋が見えなかったことに浩介と夕陽は声を上げる。千夜と聡は厳しい表情をしている。
「マズイな。千夜、逃げられると思うか?」
「無理だよ」
「逃げれますよ?そろそろ帰るので」
「そうね」
ミーナはその刀の切っ先を聡達へと向けている。だと言うのにアインスは帰るから逃げれるだろうと言っている。
「そろそろですね」
「!?」
聡は何かを感じたのか離れた場所に勢いよく顔を向ける。だがそこには何も無い。アインスとミーナは聡を一瞥すると
「そろそろですね」
「あー兄さんもこっちに走っきてるわね」
確かにアイテルが走っきているのが見える。しかし、そうじゃない。聡は緊張した面持ちで離れた場所を見ている。そんな聡に気づいたか千夜が声をかける。
「どうしたの?」
「いや、なんか……!?」
聡は驚きのあまりに言葉を続けるのを忘れ、ただただじっと見ていた。不思議に思ったか千夜と夕陽、それに浩介も聡の見ている場所を見ると、空間が歪んでいた。
次の瞬間、カッと光ったと思うとエル先生とアインスにお父様と呼ばれていた男性が姿を現した。聡達の場所へは一拍遅れてアイテルが到着する。
男性が口を開く。
「さて、一度報告のために帰ろうか」
サブタイで四人vs一人と書きつつあまりその通りになってないことには目をつぶってください。
魔力回復薬
試験管に入っている紫色の液体。
魔力を少量だけ回復する。
ヤマタノオロチ
聖王流剣術・八の型
流れるようにして八つの斬撃を繰り出す。
聡は右袈裟から始めるが、どこから始めるかは人それぞれ。
蟷螂
聖王流剣術・五の型
身を深く沈め相手の足首の辺りを剣(刀)で薙ぐ。