第十二話 村への道中
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目を覚ましたアイテルは時間を見ると午前5時ちょうどを示していた。すぐに支度を済ませ、聡と浩介を起こし、二人の支度も済まさせると宿の中庭へと向かった。
「二人とも剣を取れ」
アイテルがデュランダルを二人に向ける。二人は何をするのか気づいたのか、急いで収納空間から剣を取り出し構えを取った。
「さあ来い!」
「「はい!」」
こうして早朝の訓練は始まった。6時半頃になってラファエル達が降りてくる。三人の視線の先には大の字になって地面に寝転がっている聡と浩介、それに手ぬぐいで額の汗を拭っているアイテルの姿があった。
「エル達も起きてきたしそろそろ飯にしよう。二人とも起きれるか?」
「なんとか……」
「起きれます……」
聡と浩介はよろめきながらも立ち上がり、アイテルへ礼を言う。近寄ってきたラファエルは二人を見て、アイテルに聞く。
「回復魔術をかけますか?」
「そうだなあ。一応かけて上げてくれ」
「分かりました。”ヒール„」
二人の体をラファエルの魔力が包み込み、二人の体力を回復させた。そのまま中庭を出て、夕陽と千夜の二人と合流し、食堂へと向かう。朝食を取り、勘定を済ませすぐに部屋に戻った。
男三人は支度を済ませていたので、女性組の支度が終わるまで待っている間に、聡と浩介は中庭での模擬戦から、アイテルに自分たちの改善点を指摘してもらっていた。
「待たせましたね」
「遅くなってすみません」
「……待った?」
「いや、あまり待ってないから大丈夫だ。行くか」
冒険者組合へ行き、用件を受付嬢へと告げると、既に手配されていたらしい馬車の下へと案内された。
御者台にはアイテルが座り、聡達は馬車に乗り込む。アイテルは全員が乗り込んだのを確認すると、馬を走らせた。
「ゆ、揺れが凄いですね」
「うぅ……気持ち……悪い」
「仕方ありませんね。”クッション„」
馬車に慣れていない聡、浩介、千夜、夕陽の四人は馬車の揺れと座り心地の悪さに辟易していたが、ラファエルの魔術により、ある程度軽減され気にせずに乗れることが出来た。
「ありがとうございます」
「いえ。ですがこれでもマシな方ですよ?」
「そうなんですか?」
「この馬車には風の加護がかけられているからな。馬車にしては快適な部類だ」
こちらの会話を聞いていたのだろう。アイテルが御者台から声をかけてきた。
「風の加護が……」
「ええ。加護のおかげでクッションを使うとほぼ揺れることはありませんね」
「加護がなければ?」
「先程よりも多少はマシという程度ですね」
なるほど、と四人が感心している中、いつの間にか馬車の中に入ってきていたデュランダルがラファエルに尋ねた。
「特訓か何かしないのかい?」
「そうですね。簡単なのから始めましょうか」
こうして特訓が始まった。
「魔力は血液と同じで体内を循環しています。これは分かりますね?」
「はい。学院の小等部で習いました。魔力を制御するのに必要とのことなので毎日やっています」
「そうね。三人は?」
「やってます」
「やって……ます」
「魔法も効率よく発動できるようなのでやってます」
普段は無意識に制御している魔力だが、学院に入学すると、意識して制御できるようになるために必ず教えられる。魔法師団や騎士団に親がいる場合は、入学前から教えられる。これは、意識して制御できるようになると、余分に魔力を消費せずに魔法を使用出来るようになるからだ。
何故このようなことを教えるのか。
魔法師団や騎士団に入団する者、冒険者になる者と色々いるからだ。余分に魔力を消費すると、生死のかかった場面で魔力が足りず魔術が発動出来なかったとすると、何も出来ずに死ぬ可能性も出てくる。この技術はこの可能性を極力避けるために学院では必修扱いとなっているのだ。
「四人とも毎日やっている。……それでは指先に魔力を集中させてください」
四人とも魔力を指先に集中させる。
「それなりに出来ていますね」
「ラファエル。何を教えるのか悩んでいるのですか?」
「ええ。剣を魔力で覆うことが出来る時点で魔力の制御を出来るのは分かっていましたが……何を教えればいいのでしょう」
「魔素の制御技術を教えればいいと思いますよ?」
デュランダルの言葉にラファエルは迷う素振りを見せたが、横に首を振った。
「魔素は魔力と違って制御に失敗すると、この馬車ごと吹き飛びますから……」
その言葉に聡達は冷や汗をかいた。
「そうなると今教えられる事ってほとんどないですね」
「あーじゃあ質問してもいいですか?」
「面白そうだね。僕とラファエルが答えられることなら問題ないよ」
「勝手に決めないでください。ですが……仕方ないですね。いいですよ」
浩介の提案にデュランダルとラファエルは頷いた。
「今の魔剣と昔の魔剣は別物って聞くけど、魔剣と昔の魔剣って何が違うんだ?あと聖剣と魔剣の明確な違 いって?」
浩介の質問に答えたのはデュランダルだった。
「それはね――」
馬車
今回出てきた馬車はキャラバンと呼ばれるタイプです。
通常は7〜14km/hで移動しますが、この馬車は風の加護がかけられているため14〜21km/hで移動します。