第十一話 これからの方針
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時計は午後5時を示している。
男性組の部屋に女性組も集まり、明日からの動きを話し合っていた。
「アイテルと浩介がロマンから得た情報の方が、やっぱり精度は高いですね」
「いや、こっちも治療院の治癒師達が動向してるってのは知らなかったからな。お互い様だよ」
「それもそうね。明日はネフーニュ村に行くでいいですね?」
ラファエルは聡と千夜、夕陽の目を順に見ながら確認し、三人はそれぞれ頷きを返した。
「エルの目で見れば原因が分かるか?」
「断言は出来ないですね」
「終焉魔王が関係してる可能性は?」
「千夜はいいところに目をつけましたね。でも残念ながら、それはないです」
「ないんですか?」
「はい。封印されていた終焉魔王はそれぞれ『炎王』、『鎧王』、『絶王』の三人なので」
『炎王』、『鎧王』、『絶王』
この三人は名が示している通りの存在だ。
炎王は火属性魔法の扱いに長けており、相手を一切近づけることなく、燃やし尽くす。
鎧王はその肉体が鎧を着ているかのように堅く、どんな一撃でも傷がつかないと言われる。
絶王は空間魔法の扱いに長けており、空間の断続性を切ることで相手の攻撃を防ぎつつ、相手を裂くことも出来たようだ。更には魔王の中でも竜帝や聖王に匹敵する力の持ち主だ。
「終焉魔王が違うなら……結社じゃないか?」
「それも……違いますね」
結社でもないと言われ、ラファエル以外の全員が首を傾げた。
アイテルが何故、結社ではないと言いきれるのか聞く。
「それはですね――」
「ラファエル。今の主を含めて、まだ彼らには資格がない。だから、言うのは良くないと思うよ」
「デュランダル……」
「どういうことだ?」
ラファエルとアイテルは当然のように話しているが……
「「「「アイテルさんの剣が喋った!?」」」」
聡たちは驚いていた。
常識で考えて、剣が喋るとは思わなかったからだ。
「ふむ。アイテル」
「あー、なっていいよ」
「助かるよ」
アイテルの承諾を得た剣を光が包み、そのまま等身大になったと思うと、光が霧散する。そこにいるのは剣ではなく、物腰の柔らかそうな少年だった。
「さてと。四人とも、この姿では初めましてだね。僕の名はデュランダル。れっきとした聖剣だよ」
「「「「…………!?」」」」
目の前で剣が喋ったばかりか人の姿になったことに、四人は驚く。
「話の続きをしようか。資格が無いというのは……そうだね。アイテルも含めて君たちはまだ未熟だからだよ。故に結社の真実を話すことは出来ない」
「終焉魔王の封印が解かれました。これは緊急なのではないですか?」
「確かに緊急時は資格がないのだとしても、話していいとされている。だけどね。まだ終焉魔王だけだ」
「緊急とは呼べないと言うことですか……」
「そういうことさ」
ラファエルとデュランダルは二人にしか理解できないことを話し、五人を置いてけぼりにしている。
その事に気づいたのかデュランダルは苦笑を浮かべると、
「まあ君たちにはまだ話せない、ということだけ分かってくれればいいよ」
「デュランダル……」
「アイテル。すまないね」
「どうしても……言えないのか?」
デュランダルは静かに頷きを返す。アイテルはそれを見て、何を言っても話してくれないのだろうと悟り、話しを戻すことにした。
「話しを戻そう。明日はネフーニュ村に行くというのは決まった。その後の事を決めよう」
「前線に向かうんですよね?」
「そうだな。聡、千夜、夕陽はそれでいいか?」
「「「はい!」」」
頭を切り替え、詳細を詰めていく。
そうして決まったのは、
「明日はロマンさんが手配した馬車を使ってネフーニュ村に行き、何も分からなければこっちに戻って来る。往復にはそんなに時間はかからないと思う。戻ってきしだいロマンさんに報告する。食料などを買って準備ができ次第前線に赴く。で、いいな?」
全員が頷きを返す。
「よし。これで決まりだな」
その後は一階の食堂で晩御飯を食べ、部屋に戻ってから、デュランダルを含めて談笑するのであった。
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村周辺にて
「お父様。九席様の使い魔からの伝言です」
「言ってくれ」
「明日、この村に彼らが来るそうです」
「そうか。ミーナから見て彼らはどうだった?」
「そうね。兄さんは確かに強かったです。けど――」
「けど?」
「剣帝としての力を十分に引き出せてない……と感じました」
白衣を着た男性と彼をお父様と呼んだ女性、そしてミーナの三人がそこにいた。
彼らは結社の一員であり、ミーナは彼の護衛としてここにいる。
「僕がラファエルと話しをしている間はよろしく頼むよ」
「私が兄さんの足止め」
「それで私とゴーレムが四人の実力を測る」
「そうだ。……ミーナ」
「はい?」
ミーナはきょとんとしながら男性に返事をする。
「雪月花の使い心地はどうだい?」
彼の目はミーナの腰にかけられている鞘の中に納められている刀を見つつ、彼女に聞く。
「とても良いです。この刀の力を引き出せないのが悔しいですが」
「ミーナなら近いうちに引き出せるようになりますよ」
「アインス……ありがとう」
「?いえ」
彼は彼女達の仲良さそうな姿に微笑んでいる。
「娘にちゃんと友達がいるというのは嬉しいね」
「アインスはいい子ですので」
「ミーナこそ」
二人してクスクスと笑いあう。
そんな二人を微笑ましそうに見ながら男性は考えていた。
(しかし、この村をこんな風にした原因が分からないな。最近はアレらも動いている。その手先の賢者か、それとも……)
そんな彼にミーナは声をかける。
「博士」
「何だい?」
「明日、敵が姿を見せると思いますか?」
「半々だね。見せないかもしれないし見せるかもしれない。断定は出来ないさ」
彼は青く光る目で夜空に輝く星々を見て薄く微笑み、静かに言った。
「明日は吉凶どっちが出るのか……楽しみだね」