友人と友愛と
朝食を食べていると、フェリスたちが山に一緒に行かないかと誘いに来てくれた。
「まぁ遊ぶと言っても、山菜取ったり、木の実拾ったりしに行くんだけどな。」
ハリスが照れたように言った。
まさか会って三日目で遊びに誘ってくれるなんて思わなかったから木の実拾いでも羊の毛切りでも十分に嬉しい。
今日は村を囲うようにそびえる山の一つを採取場所とすることにした。
今の季節はこの山が一番実りがいいそうだ。
山に入ると人が踏みしめて作ったような道を使って目的の場所まで行く。
フェリスが周りを見渡しながら言った。
「最近どうも魔物が多いわよね。結界が緩んできたのかしら?」
「確かにからモウヨウ最近よく生えてるの見るよな。」
何の話だろう?魔物って言ってたけど。
「あぁ悪いな、メアリーはよくわかんないよな。」
「うん。モウヨウって何?」
「それは...ほらこれこれ。」
ジョスターは小走りで歩き出すとまっすぐと生えた膝丈ほどの草を掴んだ。
何処かで見覚えがあるような...?
「よっと!」
「ひぃっ」
ジョスターが引っこ抜いた草の根は少し白く発光しており、うねうねと動いていた。つまりは昨日ジャックが見せてくれたあいつだ。
初めてジャックを恨んだかもしれない。どうせ教えてくれるなら名前も教えてくれれば見なくてすんだのに!
ジョスターがモウヨウを持ったままこちらへ近づいてくる。
「こ、来ないで!早く捨てて!」
手近にあった壁を掴み急いで後ろへ隠れた。
「もしかしてメアリーってモウヨウ苦手?」
「だってうねうねっとしてて、ぬるぬるって感じでなんだか気持ち悪いじゃない!」
「わかるわかる。なんだか夢に出てきそうな感じだよね。」
フィーが、若干フェリスのへ隠れながら同意してくれた。
「そっか苦手か。でもそんなこと言われるとなんだか近づきたくなるよね。」
ジョスターがモウヨウ片手にジリジリとにじり寄ってくる。
「こないで!」
この子なかなかに危ない子だ。なんと恐ろしい!
「はぁ何いじめてんのよまったくもう。」
フェリスがジョスターの頭をぺしっと叩いた。
「捨ててきなさい。」
「はぁい。」
さすがフェリスだ。いとも簡単に敵の行軍を止めてみせた。なんとかっこいい!
ジョスターは少し残念そうにモウヨウを捨てに行った。
「フェーリスゥー!」
私は、しがみついていた壁を離すとフェリスに駆け寄り抱きついた。すると軽く抱き返してくれた。なんだろう胸がキュンとする。
「はいはい怖かったわね。....で、ハリスはいつまで赤くなって固まってんの?」
「べつに赤くねーし!」
先程まで壁にされていたハリスはムキになったように叫んでいる。フェリスはそんな彼を冷めた目で見ている。
「はいはい。」
「なっなんだよその目は!」
「いーや別に。ただめんどくさいなぁーと思って。」
「なっ!」
「もう、フェリスはそんなこと言わないの。」
フィーがフェリスをたしなめた。
ハリスの手は震えており、涙目だ。
「ごめんね。」
「なんでメアリーが謝るんだよ。」
「だって涙目だし。」
「泣いてねぇーよっ!」
どうやらなかなかに難しいお歳どころらしい。
そこへ、少し遠くまで捨てに行っていたジョスターが帰ってきた。
「え、何この状況。俺なんか面白いこと見逃した?」
「面白くねぇーよ!」
叫ぶハリスに対してジョスターはすごく残念そうだ。
「そういえば!メアリーって魔物見えるんだね!」
フィーが空気を読んで話を変えた。
そう言えば魔物とは限られた人間にしか見えない存在だとかなんとか言ってた気がする。
「うん、見えるよ。でもそれを言ったらみんなだって見えてるじゃない。どうして?」
「あーそれは、ここが退魔師の隠れ里って言われてるからだよ。」
「何それ?」
ジョスターがいうにはこの里で生まれるものは何故かみな魔物が見えており、魔力操作が長けているものが多いと言われているらしい。だか、普通の人間には魔物が見えないため、どこか迷信とされているところが多く、この里も公には普通の里ということになっている。このことから退魔師の隠れ里なのだそうだ。更には、魔力操作に長けているものの周りには魔物が集まりやすく、群がってくる魔物を避けて外からやってくる退魔師も少なくないのだという。
「外から来るってそれは本末転倒ではないの?」
「いや、この里の周りには強い結界が貼ってあるから、魔物はこの中にいる人間が魔力操作に長けていることに気づけないんだよ。」
「完全に避けるのではだめなの?」
「魔物と人間は切っても切り離せないものだからね。魔物とは生命そのもの。この世界に流れる魔祖気を糧とし生きる命あるものたちの本来の姿とも言われているんだ。もちろんそれには人間も含まれる。これがなければどんな生命も朽ちてしまう。」
「また質問で悪いんだけど...魔祖気って?」
「世界中を風とともに流れる命の流れだよ」
「なんだか抽象的ね。」
「そうかな?でも命ってのはそういうものかもしれないね。」
「な~にカッコつけてんだよっ」
「かっこいいと思うなら使ったら?まぁ所詮二番煎じだけど。」
「なっ誰が使うか!」
どうやらかっこいいとは思っていたようだ。ハリスは一周回って素直な子なのだろう。
いつも静かなので、存在が薄れがちだがただ一人フィーが真面目に山菜取りをしていた。フィーはすごくいい子だ。見習わなければ。
ハリスとジョスターがじゃれて遊びだしたので二人をまとめるのはフェリスに任せて私はフィーにまじることにした。
それから黙々と作業して途中から三人も加わりつつ数時間が経過した。ここらへんの村の日は落ちるのが早いため今から村に帰るとちょうどいいくらいだろう。
「そろそろ帰るか。」
「そうね。かなり量も取れたし。」
皆、伸びをしたり肩を叩いたりとなかなか疲れているようだ。私も初めての作業に肩がこった。一回では伸びた気がしなくて、何度か伸びをしているとハリスが心配そうによってきた。
「メカリー大丈夫か?お前こういうの慣れてなさそうだったし、かなり疲れたろ?」
「大丈夫。水の中にとは言えど、かなりの高さから落ちたのに無傷だったくらいなんだから、このくらいどうってことないよ。」
「え、なになにハリスが女の子に優しい?大事件だわっお赤飯たかなくちゃ。」
ジョスターがニヤニヤしながらハリスをからかった。ジョスターはほんとハリス大好きだと思う。ハリスが怒るたびにすごく楽しそうだ。いや、ジョスターの場合は割と誰をいじっても楽しそうにしてるな。
「おいっジョスターお前っ!」
ハリスがジョスターに掴みかかろうとして逆にヘッドロックをかけられている。
「クソッはなせぇー!」
「はぁ、そういったじゃれ合いはあとにしてよね。ごめんねメアリー。こんな奴らで。それに、遊ぶというより仕事っぽいわよね。」
「ううん。私はまだまだ見たことがないものだらけだから、もっと色々なことが知りたいの。それに、みんなと一緒に山菜取りだなんてすごく友達っぽくて素敵!」
「友達.......」
「えっとあの、嫌だった?」
「ううん、嬉しいの。実はうちの村ってちっさくて子供って私達しかいないから、だから私、歳が近い女の子の友達っていなかったんだ。ありがとう。」
「こちらこそ、ありがとう。」
「えへへ」
友達。友達。いい響きだなぁ。でも旅に出たら会えないんだよね。
「あのね、旅に出たら絶対手紙書くから!」
「ありがとう。楽しみにしてるからね。」
「お前らいちゃつくなよっ」
ジョスターからからかうような声がとんできた。
「なっ誰がいちゃついてるのよっ!」
「フェリスは男っぽいから恋人同士にしか見えねー」
「あんたねぇぇぇ今日という今日は許さないわっ!」
「やれるもんならぁ?」
ジョスターは完全にフェリスをおちょくって遊んでいる。あれは好きな子をついいじめちゃう的な感じだろうか。
さっきまでジョスターとじゃれていたハリスは一緒になって囃し立てている。
フィーはそんな三人を見ながら楽しそうに笑っている。きっとこの四人はいつもこうなのだろう。少し羨ましい。
「そう言えば、メアリーはどのくらいここにいられるの?」
フィーが話しかけてきた。他の三人はほっとくことにしたようだ。
「ジャックとは食料調達や私の旅の道具を集めることも考えて、5日後の朝頃出ようって言ってるわ」
「そっかぁ意外と早いね。寂しくなるなぁ」
「私も寂しいわ。だから旅先では手紙を書こうと思うの。」
「それいいね。待ってるよ」
「ありがとう、フィー」
なんだか心がくすぐったい。フィーの笑顔がどこか儚くてちょっと魅入ってしまった。危ない。私はジャック一筋だというのに。
でも、会って数日というのにここまで言ってくれる人がいるというのは、ものすごく幸せなことなのだろう。
村の入り口についた。私たちはそこで別れ、私はジャックの元へ帰った。
そこにはジャックがご飯を作って待っていてくれて、それを食べながら今日あった楽しかったことをたくさん話した。
ジャックも笑いながら聞いてくれて、すごく幸せだった。
今日はいい夢が見られそうな気がする。