ジャックの仕事
そう言えば前の話で笑い方変えました。それほど変化ありませんがもしよかったら確認してみてください。
目が覚めると、あたりが暗くなっており、フェリスはもういなかった。
熱が下がったのか朝よりずっと体が軽い。
「のど、乾いた」
そう言えば、まだ水がどこにあるのか聞いていない。ジャックのところへ行かなければ。
テントから出ると、少し離れたところに焚火の火が見えた。ジャックはその横においてある丸太に座り地図を見ながらブツブツとつぶやいていた。
「なんでこの地図水に触れても濡れないんだ?ボロボロのくせして破れないしな。どうなっている?まぁメアリーが持ってた物だしな....こういう事があってもおかしくなのいか?」
「私がどうかしたの?」
「あぁ起きたのか。熱は下った?」
ジャックは言いながら私のおでこに手を当てた。
「大丈夫そうだな。でも、ぶり返さないよう安静にしとけよ。」
「ぶり返す?」
「あぁまたあの苦しい思いをするってことだ。嫌だろ?」
「うん。もう嫌。」
「いい子だ。」
そう言って頭をくしゃくしゃっとなでてくれた。
子供扱いされているような気がするがまぁいい。気持ちいいからもっとしてほしい感じだ。
ん?何か流された気がするぞ?
まいっか。
「晩飯そこの鍋の中にできてるからな。フェリスが、風邪のときは栄養を取ったほうがいいって鹿肉をくれたから、スープにしてみたんだ。食うか?」
「うん。食べるー」
スープは他にも一口大に切られた数種類の野菜が入っていた。
少し口に含むと、じわっと口の中で広がり、もう一口、今度は勢い良く汁を飲んだ。お腹の中に熱いものが溜まってゆくのがわかる。冷えた体が温まってゆく。
野菜も肉も噛めば噛むほどに旨味を感じる。
「ん〜おいしいっ!」
「よかった。」
ジャックは、私の食事風景を横目で見ながら、何やら道具の手入れを始めた。
「それなんの道具?」
「これか?これは俺の仕事道具の一つだよ。退魔師をやってるんだ。」
「たいまし?」
「そうだ。退魔師ってのはだな。あー....その前に魔物の説明をしたほうが良さそうだな。」
「私が記憶を失う原因になったかもしれないっていう?」
「そうだ。魔物ってのは多くの種類がいてな、本来様々な姿をしている。その姿はほとんどの人間が見えず、魔物が何かに取り付いたときだけ全ての人が見えるようになる。また、魔物は生き物の生命と深く関わっており、一部地域では生と死の象徴として崇められている。わかりやすく言えば、すべての生命の原点ってことだ。そして退魔師とはその魔物が見え、なおかつ魔力操作ができる力を持った人がなれる職業だ。その力を使って魔物を退治したり、追い払ったり、助けたりするんだ。」
「魔力操作ってなあに?」
「えっと、大気中には魔素ってのが流れててだな、魔物になる前の霧みたいなものなんだが、それがこの世界を巡ってるんだ。それを自分の体を媒介にして操るのが魔力操作。それを使って色々なことをするのが退魔師。」
とりあえず大変そうなことは分かった。
「その顔、あんまり良くわかってないだろ。」
「うぐっ....」
「図星か。まあ口で言われても分かりづらいわな。」
そう言うとジャックは、立ち上がり、懐からライターを取り出すと、その火を頼りに歩きだした。
「あった。ちょっとこっち来て見てみ。」
ジャックの足元には一本の草が生えており、それ以外特に目立ったものはない。ジャックはその草に火をかざした。
横に太い葉が火に照らされて赤く染まる。
「その草がどうかしたの?」
「これが魔物だ。」
「.......どう見てもただの草だけど。」
「まぁ見てろ。」
そう言うと懐からナイフを取り出し、草の葉を一枚切り落とした。
ジャックに話しかけようとすると、人差し指を口の前に立て、しー、とされた。
しばらく葉っぱを見ていると、さっき葉を切ったところから、白い触手がウネウネと数本生えだした。
「うわっ気色悪っ!」
その見た目の悪さに思わず私が叫んだ瞬間、葉はビクリと震えると白い触手が葉を支えるようにしてカサカサと何処かへ走り去った。
「今見たとおり、この植物も魔物の一種だから、普通の人には見えない。世の中にはこんな感じて何かに擬態して隠れている魔物も多くいるからできるだけ変なものには触らないよう気おつけたほうがいい。」
「......分かった。」
思い出したくなくても頭にこべりついて離れない気色悪さだった。夢に出てきそうだ。
「飯の途中だったな。冷めちまっただろうから、温め直すか?」
「いや、大丈夫。」
「そうか。」
その後の食事の味はいまいち覚えていない。自分の知らない世界を垣間見た興奮もあるが、それよりあの気持ち悪さが優先された。あのカサカサ感が思い出すと体が痒くなる。もちろんその夜はあまり寝付けなかった。
あ、水のある場所聞き損ねた。
まいっか。