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仲間が増えた

頭がくらくらする。目の焦点が合わない。

崖から落ちてからの記憶がない。息は苦しいし、喉も痛い。えーっと...私は誰なんだっけ?

あ、それはもともと知らないのか。


「ここは?」


なんだか目の前の人が色々言った気がする。正直言って頭が痛くて聞いてなかった。やっと焦点があってきた。目が見えるのと見えないのとでは大違いだ。気分もだいぶ楽になるし、頭痛はあるがもうクラクラしない。きっとこの人が助けてくれたのだと思う。お礼を言わなくては。


「あがっ....」

今私はものすごく間抜けズラをしている自信がある。今の声は聞こえなかっただろうか?ただでさえ不審者だろうに自分で悪化させる必要もない。

だが、大変なことがおきた。

好みだ。目の前にすごく好みの男がいる。

髪も目も黒色で、右目の目元にある泣きぼくろがセクシーだ。結構ガッシリとした体格をしているが、雰囲気はどことなく優しそうだ。

名前は何だろうか?

う~ん...オズ、いや違うな....ジェイスとか?

これも違う気がする。わからない。

ここはやはり本人に聞くしかないか。他のことを考えていた気がするが今はそんなこと問題ではない。


「あなた、名前は?」


男は驚いた顔をしている。やはり不審だろうか?それとも笑顔がおかしかったとか。自分の顔を知らないから判断ができない。


「ジャックだが。それがどうかしたのか?」

「そう、ジャックって言うのね。ふふっよろしくね、ジャック。」


ジャックか、どこか平凡な響きが彼にぴったりだと思う。断じてけなしているわけではない。言ってみれば、彼はすごくジャックっぽいのだ。ジャックジャックしてるのだ。自分でも何言っているのかわからないが、まぁそういうことで、私のあのあざとい反応も許してほしい。仕方ないことなんだ。

その後は彼と話をしながら彼が普段キャンプをしているところへ案内してくれた。どうやら彼は旅人らしい。どうりで簡易テントに焚き火といったところで暮らしているわけだ。ここは近くの村から少し離れた河原らしい。子どもたちの毎日の遊び場でもある。


「たまに遊び相手をしていたら、やけになつかれてな。」

「へぇー、子供は人の本性を見抜くっていうもの。きっとジャックが優しいことを見抜いたのね。」

「そんないいもんじゃないさ。」

「え?」


一瞬、ジャックの顔に影が刺した気がした。だか、そんな表情も子どもたちが呼ぶ声とともにすぐに消えた。


「ジャックー!火ぃーおこせたよー!」

「あぁ、ありがとな」


私がジャックに支えてもらってゆっくり歩いているうちに子どもたちが先回りをして火をおこしてくれていたのだ。


「おねぇちゃんはここに座って。寒いだろ。」

「ありがとう」

「おれは、ハリスで、こっちはジョスター、こっちのちっこいのはフィーで、この男みたいな女はフェリス、フィーとフェリスは双子なんだ。」

「ちっこいは余計だろっ」

「男みたいな女ってなによっ」


声が見事にシンクロした。顔も似てないし、ややこしい設定だと思っていたけど今のですごく納得した。たしかに双子だ。


「よろしくね、えっと私の名前は....」

「そういえばさっき名前はないって言ってなかったか?」


ずっと黙っていたジャックが話しに入ってきた。


「ええ、どうやら記憶がないみたいで、名前もわからないの。」

「そうなのか。たまにいるんだよ、そういう奴。」

「そうなの?」

「あぁ、魔物に住んでるところを襲われたやつに多いんだがな、強い魔力を体に受けたときに、衝撃で記憶を失うんじゃないかと、言われている。お前もそうなのかもしれないな。」

「たしかにそんな気がしてきたわ。」

「くくっ、軽いな。」

「気にしたって仕方がないもの。」


ジャックに少し笑われてしまった。子どもたちは、少しどころか躊躇なく笑っている。こいつら何がそんなに面白いんだ?


「とりあえず名前がないと不便だしな。何かつけるか。」

「はいっ!ポチ!」

「いやっここはタマだろ!」

「ちがうよっエドワード四世だよ!」


お前ら、悪意しか感じないぞ。怒るぞ、こらっ


「ねぇ、メアリーとかどう?おねぇちゃん声きれいだし、美人だしさ。ほら、あの有名な歌姫の。」


フェリスなんていい子なんだ。

私はフェリスに抱きついた。


「ありがとうっフェリスっ!」

「キャッ冷たっ、あんたまだ濡れてるじゃないっ抱きつかないで」


引き剥がされた。つらい。


「そう言えばずっと気になっていたんだが、その手に持っている紙はなんだ?」

「え?紙?」


左手を見てみれば、お爺さんにもらった地図を握りしめていた。


「いつから手に持ってた?」

「お前を川で拾ったときから。」


無意識とかちょっと自分が気持ち悪い。


「で、それ何なんだ?」

「私の目的地が書いてある地図よ。さっき人に貰ったの。」

「そんなもの信用して大丈夫か?」

「多分?」

「多分って、楽観的すぎだろ。」

「まぁとにかく、この森に行きたいのよ。」


私は地図を広げて見せた。


「なんかその地図、すげぇボロボロだな。」

「それにこんな森見たことねぇ。」

「これ、大陸全体の地図じゃない?」

「えっあのすげぇ高いやつ?」

「そう。それ。」


ハリスたちが騒いでいる。珍しいものなのか?


「確かに大陸全体の地図だな。年季も入ってるし、高いだろう。こんなもん簡単にくれるってどんなやつだよ。第一お前が行きたがってる森って魔の森じゃねぇか。」

「魔の森?」


なんだそのヤバそうな名前。


「あぁさっきも言った魔物が一番多く住んでるっいうか、むしろ魔物はそこから湧いてるんじゃないかって言われてる場所だよ。何度も燃やそうとしたが、火をつけようとすると、すぐ消えちまうって話だな。なんでそんなとこ行きたいんだよ?」

「お爺さんが昔住んでた家が森の中にあるらしくて。お爺さんがその家くれるって言うから。」 

「お前そいつに騙されてないか?」

「いや、何か隠してそうだったけど、嘘をつかれているようには見えなかったわ。」

「どうしても行くのか?」

「ええ、その家が私の居場所になってくれるって言ってたから。」

「そうか、仕方ない。その旅、俺も同行していいか?なんかお前すぐ死んじまいそうだしな。」

「ほんとっいいの!」

「ああ、本当だ。」


やった!旅の仲間ができた!


「じゃあジャックはもう行っちまうのか。」


ハリスが寂しそうにつぶやいた。


「まぁメアリーのためじゃ仕方ないわね。」


フェリスいいこ。うるっときた。


「ただその前に、お前に言っとかなきゃならないことがある。」


ジャックが真剣な顔をして口を開いた。

ゴクリと喉がなる。


「地図を見てみろ。ここが現在地だ。」


そう言ってジャックは地図の右下を指差した。


「そしてここが魔の森。つまりここは、魔の森の正反対の位置にあるんだよ。行こうとすると、半年やそこらじゃ着かない。早くても一年以上かかる。」

「反対から行けばいいんじゃないの?」


すると周りから、何言ってんだこいつ。という顔をされた。

 

「確かに、何ヶ所か島国はあるが、そんなことしたら余計に遠くなるだけだぞ。お前疲れてるんじゃないのか?」

「いや、そうじゃなくて。反対に行けば一周して魔の森に着かないかなって思ったんだけど.....。」

「ここから東に行くと何ヶ所かの島国と世界の終わりしかないぞ?記憶喪失の影響か?やっぱり疲れてるんだろ。今日はゆっくり休め。俺の寝床貸してやるから。」

「えっいやっそのっ」

「お前らも暗くなるからもう帰れよ。」

「「「「はーい!」」」」

「おやすみーメアリー」

「じゃあな〜」

「つかれてるんだから、ゆっくり休みなさいよ。」

「おやー」

「う、うんおやすみ。」


ジャックが心配そうな顔で覗き込んでくる。

「お前は休んどけよ。俺はその間に晩飯作っとくから。」

「あ、ありがとう。」


ジャックの心配か痛い。私、みんなにかわいそうな人扱いされてないか?さっきとは違う意味でうるっときた。もう寝よう。おやすみ。





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