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サファイアガラス  作者: 望月 明依子
第1章 「待ち合わせの教室」
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第1話 「片思い」



私には大学生の間に叶えたい目標があった。

「先生になる」

今思うと、それは自分の首をしめていた目標なのかもしれない。

でも、どこの学校の、なんの先生になるかは大学に入る前はほとんど決めていなかった。


私は、両親と姉と兄の5人家族。

両親とも教師で、姉もその姿を見て教師の道を選んだ。

兄も教師にこそならなかったが大学生のときに教員免許を取得している。

私も当たり前のように、大学に入学するときに教員免許を取得するものと思っていた。


私から見てであるが、兄はそんなに苦労せずに教員免許も企業への内定も取っているように思えた。

もちろん、私とは違う大学だったからかもしれないし、理系の学部と文系の学部では違うのかもしれない。

姉は最初から先生になることを目的にして教育学部に進学したので、教員免許を取得するのが前提だ。

自分が大学生になってみて初めて、姉も兄も実はものすごく苦労していたことに気がつく。


受験した他の大学には落ち、唯一合格したこの大学に進学した。第一志望だったので結果的には問題なかったのだが。

教育学部でなくても、家族はみんな「絵里がいいならそれでいい」という感じだった。

ただ、やはり取得できる資格や免許は取っておきなさいということは言われた。

私の今いる学部で取れる免許は中学と高校の先生。

私は、それを目指して突き進んでいた。



大学入学と同時に出来た彼氏に振られて約1年、20歳の冬。

私はひたすら授業とバイトに明け暮れていた。

私の学部で教員免許を目指す学生は毎年両方の指で数えるほどだそうだ。教育実習を経て、実際に取得するのはもっと少ないかもしれない。

そのため、必修単位の授業は教育学部の授業を受けさせてもらうことが多い。

友達と一緒に自分たちの学部の授業を受けたあと、教職科目の履修のために私はぽつんとひとり、教育学部の授業を受けていた。



そういう環境にもちょっとずつ慣れてきたころ、私はある男の子が教育学部の授業にいることに気がついた。

教職課程の授業にいるということは、たぶん教育学部の学生なのだろう。

いろいろな友達とワイワイ楽しそうにしていることもあれば、数人の友人と静かにしていることもある。

でも、私は見た。前期試験の時だ。

なかなか慣れない教職科目のたくさんある記述問題に苦戦していた。

とりあえず、時間いっぱいまで粘って、書けることを書いてみよう。それでダメなら仕方ない。

チャイムが鳴るまで粘りに粘って、教室に残っているのが自分ともう一人だけということもよくあった。

そして、その一人がいつもあの男の子だった。

答案回収の時に名前が見えて、彼の名前が「本郷 純哉」であることを知った。

ラッキーと思った。この時、本当に偶然だけど、最後まで粘ってよかったと思った。

この講義の単位は取れないかもしれないが、一番知りたいことが知れたから。



しかし、考えれば考えるほど、知れば知るほど、彼の存在が自分の中で大きくなっていくことに気がつく。

もやもやしたこの気持ちをどうしたらいいのだろう。私は悩んでしまった。

自分の中で思い悩めば悩むほど、思いは深まっていくばかりだ。片思いの切なさ、久しぶりに味わう辛さ。

そして、大学2年の冬、私は一つの行動を起こすことにした。



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