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サファイアガラス  作者: 望月 明依子
第3章「3月24日」
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第6話「冬の旅」

第六話「約束」


大学内にも冬の風が吹き始めた。

俺たちは相変わらず日々の授業やレポートに追われている。そろそろ来年の修士論文の概要を固めていかなくてはならない。



それぞれが来年の論文のことや、就職活動、採用試験の勉強、研究室でのことで忙しくなりだしている。

全員で集まって話をするという時間もなかなか取れなくなってきていた。

それでも、八重となっちゃん、絵里との4人でたまに会い、他愛もないことを話すのが楽しかった。

「そういえば、共同研究室にストーブ置いてあるけど、前からあったっけ?」

「ああ、あれ、先輩が持ち込んだとか聞いた。先輩、今あの部屋で泊まり込みで論文の最終仕上げしてるから、俺もなかなか入れないでいるんだけど」

「私らも来年はそうなるのかな」

「考えたくないわ」

そうだ、先輩たちの姿はもう遠くない未来だ。もちろん今が楽しければいいとは思わないが、とりあえず今できるのは大学生として最後に楽しんでおくことだろうか。

「でさ、どうよ、冬合宿?」

考えを読まれたかのように、八重が尋ねてくる。

「何それ!」なっちゃんが食いついてくる。

「この前の学会の帰りに、冬合宿やろうって話してたの。最後の思い出作りにさ」

「いいんじゃない? 楽しそう! でも、行くなら冬休みでしょ? 寒い中に、どこ行くのさ?」

「参加人数によるんじゃないかな。7人みんなで行くんだったらそれなりのところ、もしあたしたち4人とか、もっと少なくなるんだったらそれはそれで考えないと」

「じゃあ、まずはみんなの日程調整からか……」

「時期が時期だし、7人みんなでっていうのは難しいかもしれないけど」

「とりあえず、声だけかけてみる」

行動の早いなっちゃんが、みんなにメッセージを送っている。この行動力には感心してしまう。

「言い出しっぺの八重は参加でいいよね。あたしもぜひ参加したいな。純哉と絵里は?」

「俺もそんなに切羽詰まってる感じじゃないし、参加する」

「あたしも、ちょっと気晴らしに参加しようかな」

「じゃあ、あとは、みんなからの返事待ち、っと」

「場所、考えようよ」

「寒いし、温泉は?」

「あったまれるし、いいよね。みんなで行ったあの温泉、また行く?」

「予約したら行けるかも。まあ、人数が分からないと予約も何もないよね」

そういう話をしているうちに、なっちゃんの携帯に返事が返ってくる。

「あー、みんな参加だって」

「7人とも?」

「うん、すごい偶然に」

「じゃあ、総会で決めようか。場所も、日にちも」

久しぶりの総会を開くことにして、その日の八重会は解散になった。




帰り道、二人で大通りを歩きながら話をする。

「絵里、こんなところでなんだけど、この前の返事」

「この前って?」

ちょっととぼけてみる。もちろん、学会の時の話だということは自分でもわかっている。

「学会の時の……返事、聞かせてもらえるか?」

「じゃあ、もう一度、言ってくれる?」

「俺、絵里さえよければ、今すぐでも一緒になりたいと思うくらいだ。でも、さすがにそういうわけにはいかないのも分かってる。お互いに。今一番やらないといけないのは、ちゃんと院を修了して、自分の目標に少しでも近づけるようにすること。一緒になるのは、それからだとは考えてる。だから、俺らが修了して、自分の目標を叶えた時、俺は絵里を迎えに行く。それまで、待っていてくれるか?」

前回言われた言葉より甘みが増している気がするが、それはそれで、嬉しい。

「うん、純哉と一緒になれる日まで、私も、頑張る」

彼の顔がパッと明るくなった気がした。周りはすっかり暗くなっていたが。

「ありがとう、絵里。さっきの言葉は、OKっていう返事で……いいんだよな?」

「もちろん! 私からも、よろしくお願いします」


数日後、久しぶりの総会は、なかなか盛り上がりを見せて終わった。

「じゃあ、12月26日、集合はここで」

「おう!」

結局今年のゴールデンウィークにみんなで行った温泉に1泊2日となった。

「さすがに7人部屋なんてないよね」

「男子部屋、女子部屋でいいんじゃない? 4人、3人ならいけそうだよ」

宿の予約ページを見ながら、八重が言う。

予約を入れたのは本当に年末だが、何も考えずにただひたすら楽しむことにした。



寒さがさらに厳しくなってきた12月の終わり。私たちは、いつもの7人で、「合宿」へと向かった。


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