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サファイアガラス  作者: 望月 明依子
第3章「3月24日」
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第4話「朝日のキャンパス」



教育実習最終日の前の夜。

私たちは後輩たちと一緒に共同研究室にいた。

彼らが受け持ったクラスの子どもみんなにお礼のプレゼントを渡す手伝いをするためだ。

純哉は今年の実習生でないにもかかわらず、後輩たちの受け持ちのクラスの子ども達にものすごく懐かれていた。すごく羨ましかった。

時間はあっという間に過ぎていく。家に帰るのは早々に諦め、徹夜になることは覚悟していたため、少しでも手伝えることを手伝っていった。


気がついたら午前4時を回っていた。

「なんか買ってくるよ」純哉が席を立った。

「あ、私も行く」

「じゃあ、お願いします」

私たちは二人で近くのコンビニまで行くことにした。

そんなに眠くはなかった。友達と徹夜で遊んだ後の、ちょっとしたテンションの高さに似た感じだ。

「何買おうか? 今お腹いっぱいになって、もし実習最終日に居眠りっていうのもな」

「でも、みんなお腹減ってないかな? 何も食べてないはず」

「ある程度食べ物も買っていくか」

私たちはおにぎりやサンドイッチ、飲み物に栄養ドリンクを買っていくことにした。

「みんな、すごいね」

「俺らもやった気がする。自分たちでだけど」

「逆に、最終日に色紙もらった。本当に大した授業もホームルームもできなかったのに」

「そうだ、絵里、聞いたか?」

「何を?」

「ボスが、学会について来いって」

「ああ、そういえば言ってたような……」

「八重もついて来たいって」

「そうなの?」

「ああ、いい勉強の機会だからって。秋の終わり、冬ごろだったっけな」

「もう寒くなってるかな」

あの時の頬に当たるマフラーの感覚がふと蘇る。まだマフラーや手袋、コートといった防寒具の類には早い季節だが、もうあっという間にそういうものが必要な季節がやってくるだろう。

純哉が、ぽつりと話し出す。

「ボスじゃないけど、今の絵里、かなり頑張ってるんじゃないかって思う。いろいろな人から話聞いたけど、大学で学部を変わったりすると、いくら好きなことでもついていけなくなって休学したり、辞めちゃったりする人も多いって。絵里は他学部で教職課程を取ってたからその例にきっちり当てはまらないかもしれないけど、でもやっぱり大変だったんじゃないかなって思うし、辛かったんじゃないかとも思う。それでも、ここまでやって来れたってすごいなって、素直に感じるよ。授業とか、ゼミにもちゃんと来れてるし」

「毎日必死だったけどね、頑張ったよ」

「こうして絵里と一緒にいられて、嬉しい。ボスのゼミとか、いろんなこと抜きにして」

「私も」

夏の終わりのひんやりした朝の空気の中で、私たちは手をつなぐ。

普段は夕日の中にいるが、今日は逆に朝日の中にいる私たちに夏の終わりの風が吹き抜けた。



朝晩はすっかり涼しくなった。私たちの後期の講義が始まる。



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