第三話
生存者0というのは戦争において、そうそうないだろうね。
というか、ほぼ絶対に無いはずだ。
だって実際に戦っている一般兵士は「戦争」と言うだけあって参加人数も多いし、それを指揮する将官はそれぞれの自国では高位の役職なはず。
それが時間にして1分も経たずに僕の魔法や剣でみんな死んでしまっただなんて驚きだよね。いや、他人事みたいに行っといて僕自身がやったことだけど。
だからまぁ、僕がやったことは誰にも知られることはない訳で、とりあえず立てた、この世界での目標が「王」になることなんだから情報が欲しい。そして敵は要らない。
これから先、僕は自分の得た力を自重する気はないけど、大量殺人鬼として指名手配されるのはマズイよね。
証拠を残さないためにも、僕はこの戦場で殺した人たちの死体を装備品まで全てを焼却処分することにした。
神の魔法だからね。普通の魔法の炎の威力がどれ程かは知らないけど、金属すら塵も残さず焼失したんだから大丈夫でしょう。
武器や防具はそこそこ質の良いものもあったけど、どうも支給品らしいね。
売っても使っても足がつきそうだから残すのは問題だし、これもしたいと一緒に消しておいたんだ。
だけど、こっちの世界での通貨が手に入ったのは運が良かったね。
死体漁りなんて道徳的には問題があるのかもしれないけど、どうせこの場所で死んだ人たちは塵も残さずに焼却処分するんだし、資源の有効活用って感じで問題ないよね?
死体から盗む悪事と、死んだ人たちの遺品を役立てる善行。プラスマイナスで相殺ってことにしよう。うん、悪くない。
だから僕は手近な街にでも向かって情報を集めることから始めたんだよ。
この世界で何をするにしても、人との交流が得られなければ何も出来ないからね。
それに、そもそもこの戦争だって、この世界の全てを一つの国として傘下に治めていた大国が滅んだことで、後釜を狙った大きな領地同士が衝突しただけみたいなんだ。
本当に身勝手な権力者って困るよね。僕はそうならないようにしよう。
◆ ◆ ◆
「よく来たな、ここは冒険者の町『イジョーチ』だ」
ははっ、適当に走って来てみればいきなり冒険者の国だなんて運がいいや。
町に入る前に衛兵さんに簡単な説明を受け、町に入るのに必要なお金を渡して普通に入ってみた。
うん、僕が言うのもなんだけど、この警備って形だけなのかもね。
僕、これでも大量殺人をついさっきしてきたばかりなのに何も言われなかったし。
「見た感じ冒険者っぽくない小奇麗な格好をしてるが、貴族の二男三男ってところかい?」
「まぁ、そんなところです。
ちょっと自分の国を作れるだけの冒険者になろうと思いまして」
「言うねぇ~、もしもお前さんが本当に冒険者として出世して国を作ったら俺を雇ってくれよ。
って、俺はもう50過ぎだから一体何年後かって話だよな♪」
軽い挨拶に気安いジョーク。
うん、この衛兵さんは面白いし、僕が国を興すのは1年以内と決めているから雇ってあげるのもいいかもね。
そんなことを考えながら僕は衛兵さんに聞いた冒険者ギルドへと向い、問題なく登録。
へ~、てっきり水晶玉に手を当てて、犯罪歴とか調べるのかと思ったけど、よくよく考えたら僕って神様だったんだよね。
この世界の神様がどれくらいかは知らないけど、少なくとも人間が使う程度の魔法なら誤魔化せるのかもしれないなぁ~。
それから僕はギルドでこの世界の魔物などに関する知識を集めたんだけど、ギルドランクが低い内は高ランクの依頼を受けれないそうなんだ。
まぁ、考えてみればそうだよね。無駄に死んで魔物を刺激したら魔物被害なんかは増しそうだもの。
だけど僕は気にしない。だって僕は最強の力を持っているんだから、その力を人助けに使うことに何の抵抗もないからね。
さらに集めた情報で、依頼外でも討伐した魔物は討伐証明部位を持っていけば買い取ってくれると知って、簡単な採取形の依頼の「ついで」で東西南北のあちこちに生息する高ランクの魔物を倒しまくっちゃったよ。
帰ってきた時のギルドの人たちのポカンとした顔。本当に愉快だったなぁ~♪
でも何とか一日目でランクは最上位にまで上げてもらえたしから冒険者初日にしてはまずまずの成果だろうね。
ただ、このことで僕にイチャモン付けてくる人たちがいたんだけど、その人たちは魔法で死体も残さずに殺したんだ。
まったく、折角気分良くしていたのにチンピラ風情が絡んでくるだなんて最悪だよね。
僕が王様として自分の国を持ったら、あんなチンピラは毎日皆殺しにしよう。うん、それがいいよね♪
だって、悪人がみんな消えたら残るのは良い人ばかりになるはずだもの。