第一話
どうも、読者様。ヨイヤサです。
はじめましての方ははじめまして。お久しぶりの方はお久しぶりです。
今回は私の他の作品を知っている方には不思議に思われるかもしれませんが、ギャグではありません。
とりあえず独善的な主人公が独善的に行動する短い話です。
それではどうぞ。
歴史を学ぶと、その中では戦いを生業とする人たちが多くいる。
剣を手に生きていくと決めた人間だなんて、どれも共通して戦うことが好きな人種だと思う。
これは僕の持論だが、人の命を奪う道具が仕事道具だなんてまともな道徳教育を受けた人間なら恥ずかしくて声に出すことも出来ないだろう。
幾らその時々の時代の流れや風俗がそういうものだったとしても、別に武器を手にしなくても生きていく方法なんて幾らでもあるじゃないかと思うんだ。
勿論、綺麗事だってのは分かっている。
喰うに困って悪事に走り、歯止めが効かなかくなった善良「だった」人だっているんだろうさ。
だけど、自分はそんな人間にならないと思っていた。
平成の世に生まれ、平平凡凡とした家族の愛情を一身に受けて育った僕だからこそ、剣を手にすることはないと思っていた。
そう、思っていたんだ。
◆ ◆ ◆
「やぁ、君の名前は関 宗政くんだね?
僕は何だと思う?
そして僕がこれから何を言うか分かるかい?」
突然、僕の目の前に一人の男が現れたかと思うと意味の分からない質問をしってきた。
「君は今、自分は自宅のベッドで寝ているからこれは夢だと思ったろ?
だが残念なことにこれは夢であって夢じゃないんだ。
ん? 心が読めるのかって? そりゃ簡単だよ。僕は僕だからね」
目の前の男は狂ったように笑うがその目は全く光を反射しない闇のような暗さだった。
「では言葉を続けよう。
いい加減、君もこれがただの夢じゃないことは分かってきただろうから、単刀直入に言おう。
君、僕の宿主になってくれないか?」
質問の形をとってはいるが、こいつにとっては僕がどう答えようが関係ないのだろう。
決定事項を語るかのように問うてきた。
「なに、僕は君たち人間に分かり易く言えば神のような存在でね。
神の定義は人によって違うだろうが、大多数が納得する共通の定義として『人智の及ばない何か凄い事が出来る存在』ってことなら僕は神だ」
うん、そうだろうね。
何となく予想はしていたさ。
「そして僕は寿命という概念を知る前から生き続けてきた。
分かるかい? 僕はそんな大昔から生きてきて、何でも出来る僕が一度として為し得たことの無いことに挑戦するというのだ」
そこで僕はこいつの望みというものに予想をつけた。
「ビンゴ! その通り、いま君が考えたことが正解だ。
そう、僕は一度死んでみたいんだよ」
何でも出来るが死ぬことだけは出来ない。
理由も分からないが神としての力を持っているからだと、こいつは付け足した。
「だからね、宗政くん。
僕は死んでみたいんだよ。純粋な好奇心から」
まるで今日の夕飯はなんだろうとでもいうような自殺発言。
神と言うのは一周回って頭が悪いようだな。
「くっくっくっ、確かにそうかもしれないね。
僕は天才や秀才と呼ばれる存在がその才能で為し得ること全てが可能だが、死ぬことだけはできなかったんだよ。
もう分かっているとは思うが、僕はこれから死ぬ」
そして死ぬ方法というのが僕に神の力を全て渡すことで神を辞めて死ぬんだそうだ。
まったく、馬鹿みたいな話だがこれは夢でなく現実なんだろうな。
最初は質問の形を取っていたくせに、僕の答えを聞くこともなくこいつは自身の力を全てを押し付け、笑いながら消えた。
これが神にとっての死なのかはよく知らないけど、どうやら僕は神が自殺するための生贄に運悪く選ばれたんだろうね。
いや、別にそれ自体はいいんだ。むしろ運が良いのかもしれない。
別に神としての力を使わなければいいことだし、僕自身も死にたくなれば神としての力を誰かに渡せば死ねるって分かったんだから。
面倒だとは思ったけど、本当に面倒なのはこの先だ。
目が覚めた僕が居たのが、神の力を存分に使える世界に変わっていたってことなんだよ。