3.孤島
はじめに見つけたのは、クキだった。
「あ! アレがそうじゃない?」
弾むような声。彼女は少し興奮した様子でデッキの先端へと駆けて行く。
「え? どこどこ?」
シエルも席を立ち、すぐにそのあとを追いかけた。
「えっと……、じゃあ私も」
「なら、僕も」
僕と白夜は席を立ち、歩いて向かった。
デッキの先端から、船の進む先を眺める。
広大に広がる海の向こうに、小さな島が見えた。まだ野球ボールくらいの大きさだが、緑に染まった陸地がはっきりと見える。
それからまた一時間。
ようやく、島全体が見えるところまできた。
ざっと見たところ、直径一キロくらいの小さな島だ。
目についたのは、島の中心にある中世風のお城のような建造物。砂浜からその建造物までを、石畳の道が、緩やかなカーブを描きながら繋いでいる。
「あ、砂浜があるお! あそこで泳げるかなぁ?」
クキは指差して言った。
「クラゲがいなかったらね」
シエルはさらりと告げる。
「うぅ……。いいさ、いても泳いでやる!」
それは無茶だろ。僕は心の中で呟いた。
「あ、あそこ。あれって、洞窟ですよね?」
白夜が砂浜の右側――崖になっている部分を指差した。
ごつごつした岩肌に、ぽっかりと大きな空洞があった。中は真っ暗で、ここからでは何も見えない。
「あの洞窟も造ったのかな?」
僕は疑問をそのまま口にした。この島は『UoE』を模して造られたものだ。だとすると、あの洞窟も造られたものかもしれない。
「それは違うんでない? あれはあきらかに自然物って感じがするよ」
シエルは僕の考えをあっさりと否定した。
「そ、そうかな?」
「そうだよ」
「島に着いたら、メノウさんに訊いてみたらいいんじゃないですか?」
僕とシエルの会話に、白夜のフォローが入る。おお、もしかすると、この子はいい子かもしれない。
「ま、意味ないだろうけど」
シエルは肩をすくめ、小馬鹿にしたように鼻で笑う。それに比べこの人ときたら……
「で、でも、もしかすると、もしかするじゃないかっ!」
声を荒らげる僕の肩を、ぽんっと叩く手。振り返ると、そこにはクキの笑顔があった。
「大丈夫、もしかしないから」
「なっ……!」
絶句する僕。ケラケラと笑うシエルとクキ。クスクスと控えめに笑う白夜。
島は――すぐそこまで迫っていた。