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MMORPG―オフ会殺人事件―  作者: tillé.o.fish
第二章 惨劇
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22.情報交換

 午後 九時十五分。


 食事を済ませたメンバーは、互いに情報交換をはじめる。

 まず、僕とナゾシンが島で集めた情報をメンバーに話した。

 島で見つけたメッセージと、殺人現場に落ちていたプレート。その二つから連想される、殺人予告の可能性。そして残るプレートは四つ。

「つまり……、あと四人、殺されるってことかい?」 

 紅蓮が真っ直ぐに僕を見据えて、言った。

「この仮説が正しければ、そういうことになりますね」

 僕は息を飲んで、彼の目を見返した。

「ふーん。つまり宝探しは殺人ゲームってだったってワケ? だけど、そんなふざけた理由でクキたんを殺したってんなら、あたしゃ絶対許さないよ」

 シエルが奥歯をぎりりと噛み締める。僕だって同じ気持ちだ。

「けど、まあ。そんだけわかりゃ十分だよ。よーするに、船が迎えに来てくれるまで皆で固まってればいいってことでしょ?」

「それはそうなんだけど……。回線が繋がらないって紅蓮さんから聞いたよ?」

「ああ、その件なんだけどね」

 紅蓮が言った。

「確かに、電話もネットも使えなくなっている。おそらく彼の仕業だろうね。……けれど、明後日にはちゃんと船が迎えにきてくれるさ。もとから、そういうプランだと船には伝えているからね。……そうですよね? メノウさん」

 彼に話を振られて、メノウはこくりと頷く。

「迎えは問題ないでつ。ただ、連絡できないとなると、早くきてもらうこともできないけれど……」

「いや、救いがあるだけマシさ」

 紅蓮の言う通りだ。希望が残されているだけ、まだいい。

「ふむ。ところで、どうして回線が繋がらないのだ? 夕方、出会った時に何か言っていた気がするが」

 と、ナゾシン。彼の疑問にもまた、紅蓮が答えた。

「ああそうだった。結局、話しそびれちゃったね。実は、君達が外に出ている間にメノウさんが電話したんだが。その時、電話が繋がらなくてね。それで原因をシエルさんに調べてもらったんだ」

 そこまで話して、紅蓮はシエルを見やった。

「シエルさん、悪いけど……」

「あー、わかったよ。ったく」

「すまない。こういうことは、あまり詳しくなくてね」

 紅蓮が悪気ない笑みを浮かべると、シエルは面倒くさそうにしながらも、彼のあとを引き継いだ。

「結論から言うと、原因はわかんない。姉さんから電話の話を聞いたあと、電話回線を調べてみたんだけどさ。回線が切られてたとか、特に異常はなかったからね。……ま、考えてみりゃ、電話回線一本切ったところで、予備のケーブルが倉庫にごろごろ転がってるわけだから、それくらいのことはあっちも見通してるはずさ」

「しかし、ネットも繋がらないとなれば、おおもとの回線が切断されているという可能性が高い。見落としているだけでは?」

 ナゾシンが言っているのは、電話機から直接壁に差し込んであるケーブルのことではなく、この『ディグルスの地下砦』全体の通信回線をまとめている、おおもととなる一本ケーブルのことだ。

 しかし彼の言葉に、シエルは首を横に振った。

「そんなことならとっくに解決してるっての。そう思って配電盤も調べてみたけど、異常がないから原因がわからないのさ。まー通信回線の契約自体が解除されたって可能性もあるけど……。そんなこと確認できる状況じゃないかんね。よーは原因不明ってことだわ」

「たぶん、フェイスが何かしらの手段を使って回線を遮断してるんだと思いまつ。なにせ、島を設計した張本人でつからね」

 メノウがそう言うのだから、そうなのだろう。計画的に殺人を犯そうと考えていたのなら、それくらいの準備はしていたはずだ。

 他に思い当たる理由もなかったので、メンバーはひとまずそれで納得した。

「それじゃあ、これからどうするかって話しなんだけど」

 僕は改めてメンバーに呼びかける。

「どうするかって、もう決まってんでしょ」

 するとシエルが即座に話の腰を折ってくる。

「それはそうなんだけど、話し合わなきゃ駄目なことがあるでしょ。生理現象だってあるし、睡眠も取らなきゃいけない。それに、いつフェイスさんが現れるか……」

「あー、なるほどね。アンタにしちゃ、よく考えてるわ」

「ひとことおおいよっ!」

 僕はツッコミを入れると、軽く咳払いをして、続けた。

「とりあえず、危険な状況なのはかわりないし、見張りをつけたほうがいいと思うんだ」

「そっか……。そうなんですよね……。いまもどこかで、フェイスさんは私たちのこと見てるかもしれないんですよね?」

 白夜が怯えきった表情で僕を見つめる。

 僕はそれにうんとも言えず、言葉に詰まってしまう。

「大丈夫。こっちには男が三人もいるからね。出てきた途端に大声で叫べば、すぐに駆けつけるさ」

 紅蓮が力強く言って、白夜に頷いてみせた。

「でもやっぱり……すこし怖いです」

 白夜の表情は少し和らいだものの、まだ不安が残っている様子だった。それもそうだ。こんな状況で怖がらない女性のほうがおかしい。メノウとシエルがどっしり構えすぎなのだ。

「とにかく、一人で行動しないことかな」

 僕は仕切り直すように言って、続けた。

「フェイスさんがいつ現れるかわからない以上、一人で行動するのは危険だ。それと、睡眠も取らなきゃいけないから、その間の見張りも必要だと思う」

「ふむ。そうだな……。できればこの大食堂で朝までやり過ごしたいが、そうもいくまい」

「うん。ナゾくんの言う通り。床で寝るなんて、女の子には酷でつからね」

 と、メノウが言ったその時。

「お、そんじゃ、いっそのこと全員でオールでもする?」

 突如シエルがノリノリでそんなことを言う。まったく、馬鹿げた提案だ。

「何言ってるんだよ、それで昼間全員寝てちゃ意味ないじゃないか」

 僕はあっさりと切り捨てた。

「ちぇっ、つまんねーの」

 シエルは両腕を頭の後ろに回してそっぽを向いた。しかしいまは彼女の冗談に付き合っている暇などない。

「それじゃ、見張りの順番とペアを決めたいんだけど……」

 僕はシエルを無視して、他のメンバーに声をかけた。

 それから。

 見張りの順番と、ペアの割り当てを決めたあと、メンバーは解散。

 大食堂に残って、談話を続けるメンバーもいたが、僕は夜中の見張りに供えるため、自室に戻り、ひとまず仮眠をとったのだった。

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