9.違和感
僕とナゾシンは砂浜を出た石畳の道で、紅蓮と、ボストンバッグを背負っているフェイスに出会った。
「おや、誰かと思えばチーム『アサシン』じゃないか。こんなところで会うとは奇遇だね」
わざとらしい仕草で驚いてみせる、紅蓮。
「ああ、そうですね……って、なに勝手に人のチーム名決めてるんですかっ!」
僕はまんまとそれに乗っかってしまう。
「ふむ。チーム『アサシン』……悪くない」
「悪くないんかーいっ!」
ナゾシンにテンポ良くツッコミを入れる僕。
「いやはや、これが本場大阪のツッコミというやつですか。はははっ! やっぱりキレが違うね。恐れ入ったよ」
ゲラゲラと笑いながら、フェイスが僕に言った。
ただの条件反射だ。そんなこと褒められても全然嬉しくない。
ひとりしり笑い終えると、紅蓮が、僕らに尋ねた。
「ああ、そうだ。ところで君達はどこへ行ってたんだい?」
「えぇ、まあ……。それより、紅蓮さんたちのほうこそなにか見つけませんでしたか?」
僕は意地悪く、質問に質問で返した。人をからかうのが悪いのだ。
まあ本当は、洞窟のことを知られたくなかっただけなんだけど。
「いやいや、こちらはさっぱりですよ」
フェイスはそう言って、Tシャツの胸元を掴んで暑そうにバタバタと煽った。
彼は僕の嫌味などまったく気にしていないようだ。
「では、さっきまではどこに?」
ナゾシンはフェイスと違って、涼しい顔をしている。
「オレ達は島の西側にある、林に行ってきたところだ」
「そうそう、面白い物が置いてあったよ。君達も行ってみたら?」
紅蓮とフェイスはそのまま続けて、
「それじゃ、オレ達はこれから砂浜に行くから」
「面白い物を見つけたら、また感想を聞かせてよ」
と、僕らの返事も待たずに、砂浜へと去って行った。
僕はぽかんとした顔で見送ったあと――
「面白い物ってなんだろ……」
小さな声で呟いた。
「ふむ。では次は林に行ってみるか」
「そうですね」
僕とナゾシンは目を合わせ、林に向かって歩きはじめる。
――と。
突然、僕は立ち止まった。……なんだろう?
胸の内に何かが引っかかるような、奇妙な感覚がしたのだ。
「どうした?」
「あ、いや、なんでもないです」
どうしてそんな感覚がしたのか、自分でもわからない。
……まあ、いいか……
僕らは林を目指して歩き出した。