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サイコキラーは極悪異世界に転生する  作者: 結城 からく


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2/2

後編

 そこは薄暗い廃墟だった。

 数人の男がテーブルを囲んで酒を飲んでいる。

 濃密な血の香りを漂わせるのは、床に転がる四肢のない死体や人体の一部だった。

 生きている者も混ざっているが、ほぼ全員が生気のない表情で虚空を見つめている。


(なるほど……)


 僕は足元の魔法陣を一瞥する。

 どうやらここが修羅らしい。

 事前情報に違わぬ治安の悪さである。

 この部屋だけで弱肉強食ぶりがしっかりと伝わってきた。


 酒を飲んでいた男達が手を止めて僕を見る。

 彼らは半笑いでこちらを眺めていた。


「来たぞ」


「チッ、男かよ」


「顔が良けりゃ、俺はどっちでも構わんがね」


「とにかく面接からだな」


 男達は様々な言語で会話している。

 いずれも知らない言語だが、不思議と意味は理解できた。

 修羅で転生するにあたり、自動翻訳のようなものが働いているようだ。

 便利な機能に感心していると、男の一人が立ち上がって近付いてくる。


「よう、何度目の転生だ?」


「何度目? さっき女神から話を聞いたばかりだけど」


「新人か! 修羅世界へようこそ! そして死ね!」


 男がいきなりナイフを突き出してくる。

 動きを予想していた僕は紙一重で躱しつつ、相手の後頭部と顎を掴んで首を捻り折った。


「ぐおぇっ」


 頭だけ真後ろを向いた男は、血を吐いて崩れ落ちた。

 ニヤニヤしていた他の者達は酒を置いてどよめく。


「カーイ!?」


「おいおい、新人に負けんなよ!」


「でも今の動きはヤバかったよな……」


 僕は悠々とナイフを拾い、慌てる男達に告げる。


「何を騒いでいるんだい。ここは悪人の世界なんだろう。人殺しくらい日常の一つじゃないのか」


 僕は返答を待たずに襲いかかった。

 ナイフで男達の首を掻き切り、心臓を抉り、眼球を引き裂き、股間を刺し貫く。

 彼らは銃や魔法で反撃を試みてきたが、大した脅威にはならなかった。

 徒党を組んで愉悦に浸る者など所詮は三流未満であり、殺し合いを楽しむ相手としてはあまりにも脆弱だった。


 ものの三十秒で男達を殲滅した僕は、部屋の端に置かれた大きな檻に注目する。

 そこには傷だらけの少女が閉じ込められていた。

 僕が近寄ると、獣のように唸って威嚇してくる。

 僕はナイフを捨てて両手を上げた。


「別に攻撃するつもりはないよ。すぐに出ていくから安心してほしい」


「……私に手を出さないのか」


「ああ、別に興味がない」


「助けるつもりもないのか」


「頼まれていないからね」


「じゃあ助けてくれ。鍵はそいつが持っている」


 少女が指し示した死体から鍵を奪い、それを使って檻を開ける。

 僕は一礼して彼女を促した。


「どうぞ」


「……馬鹿だね。助けた瞬間、私が襲いかかるとは思わなかったのかよ」


「殺し合いはいつでも大歓迎さ。ほら、遠慮せず来るといい」


 僕が笑顔で答えると、少女は渋い顔になった。

 僕は小声で「冗談だよ」と付け足しておく。

 檻から出た少女は僕に尋ねた。


「これからどうするんだ」


「特に決めていないな。今のじゃ物足りないから、獲物を探そうと思っているよ」


「じゃあ、私が案内役をするよ。土地勘がある人間がいれば便利だろう?」


「確かにそうだ。よろしく頼むよ」


 僕は静かに握手を求める。

 少女はしばらく悩んだ後、そっと手を握る。

 彼女が破滅の魔王と呼ばれる災厄だと知ったのは、それから半日後のことであった。

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