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恋する幼馴染と魔法のような時間  作者: 菜乃音


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18 電気の魔法その一

 休日が明けても、俺は変わらない。

 咲月に傷つけない魔法を試し、魔法のある日常と向き合う、そんな日々は。


 数日がたった頃、校舎裏に半ば強引に俺は連れられていた。


「おいおい、魔法陣の使い方もわからないのかよ」

「いいかげん、やめちまえよ」


 蔑んだ言葉、久しぶりだ。

 いくら魔法で傷つけられても、俺はこいつらに手を出すことはない。

 魔法で魔法を制したところで、心の傷が深まるだけだから。


 俺は視線を外したまま、言わせたいがままに好きにさせた。


 吐き捨てられた唾。ただただ汚くて、俯くままに意識をそらす。

 刹那、蹴られた小石が、俺の額で弾けた。


「じゅん、バイト先までこの子が来て、手当をするとかいい加減にしろよ?」


 創一さんのお説教に俺は何も言えなかった。

 学校が終わり、俺はバイトに来ている。

 また、咲月も同じく来ており、咲月は俺の傷の手当をしてくれていた。


 校舎裏に咲月は姿を見せなかったが、傷跡は見過ごせなかったらしい。


 傷は隠したつもりだが、咲月はエスパーか何かなのか?


「これでも、伊達に回復魔法を使ってないからね」

「人の心をさりげなく読むなよ」

「回復魔法だけじゃない。咲月ちゃんの才覚だ」

「才能じゃなくて、才覚?」


 才能、なら俺でもまだわかる。

 だけど、才覚だと意味が変わってしまうから首を傾げるしかなかった。


 咲月は黙って、俺の痺れ焼けした指先に薬を塗り、絆創膏を丁寧に巻いている。


 才覚。いわば、その場に適した柔軟な発想や起点を、知恵を活かして行動に表すような人のことを言う。


 才能とはまた別の言い方をする。今思えば、咲月は才能よりも才覚に近いだろう。


「咲月ちゃん……帝国の人や、不治の病にかかった者によく付き纏われていたんじゃないか?」

「……関係ありません」


 俺は息を呑み込んだ。

 咲月の声はすごく冷えていた。

 冷えていた所ではない。


 暗器や殺気、そんな見えない恐怖とも取れる声色……咲月から聞くとは思っていなかった。


 咲月のことを、俺はどこまで知っているんだ。

 俺の不甲斐なさに、拳を握りしめたかった。でも、咲月が手当をしてくれているから、俺は力を込められなかったんだ。


 カウンターに置いていた医療箱が、音を立てて閉じられる。


「純星。純星が気にすることじゃないよ。だって、これは私の話だから」

「……」

「じゅん、本当に良い彼女を持ったもんだな」


 すいません、咲月は彼女じゃないです。

 どちらかといえば、おせっかいを焼いてくる、深い考え方をする幼馴染だ。


 創一さんと会わせたくない、それほどまでに似たり寄ったりな考え方を持った彼女を。


 ふと気づけば、咲月は俺の手を包み込んできていた。

 指の隙間から、巻かれた絆創膏が見える。


「もしかして、私を彼女にしたいとか思っちゃったり?」

「なんでそこだけは心を読まないんだよ?」

「痺れる漫才は他所でやってくれや」


 と言って、カールパーマで白髪混じりの黒髪を手でかきあげる創一さんは、己のルールを守る人なんだろう。


「はい、純星の愛人です!」

「何を言ってんだおまえは」

「そうか。じゅん、本当に別嬪さんをもらったもんだな。魔法がない日常に戻りゃ、子どものおまえたちには苦労をかけさせないのによ」


 すいません、この人たちは一体何を企んでいるのでしょうか?


 咲月と創一さんの会話についていけず、俺は苦笑するしかなかった。


「まあ、じゅん。お前は自分を守れ。魔法は魔法で、しか反撃できないし、守れないんだからな」

「……わかってます、師匠」

「師匠じゃない。創一か、そうさんだ」

「純星、私は幼馴染だけど、これ以上下手に怪我をしたら、さすがに怒るからね……」

「はっはっ、愉快な嬢ちゃんなこった。じゅん、咲月ちゃんの雷が落ちないように、注意するんだな」

「私は純星を傷つけないけど、お怒りの魔法は落としちゃうからね」


 この人たちは、魔法の解釈がどうなっているのだろうか。

 拡大解釈は咲月の専売特許といえ、ルールブレイカーの創一さんも考え方がおかしすぎる。


 周りに変な奴しかいない気もするが、これも時の定めというものだろうか。


「純星、私とそうさんは変わり者じゃないよ?」

「言えてんねぇ」

「なんでこの時だけは心を読むんだよ?」

「純星、顔に出るから」


 咲月の洞察力には、心底驚かされるもんだ。

 その洞察力がいずれ、俺の心の裏の裏まで辿り着きそうで、隠せなくなるのかもな。


「ふふ、純星の傷つけない魔法、私で試すの楽しみだね」

「じゅん、最近魔然の込め方が変わったと思ったらそういうことかよ。二人の話、小一時間聞かせてもらいたいもんだ」

「じゃあ、聞かせちゃいます」

「俺が良い、って言ってないんだが?」


 バイト先なのに、楽しそうに話す咲月がいるから、どこか笑顔が伝播しているようだった。

 ちゃっかりとメガネをかけて話す咲月を見て、可愛いと思った俺をぶん殴りたくなったのは別の話。

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