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あーかい部! 59話 おお神よ

ここは県内でも有名な部活動強豪校、私立池図女学院。


そんな学院の会議室、現場……いや、部室棟の片隅で日々事件は起こる。



3度の飯より官能小説!池図女学院1年、赤井ひいろ!


趣味はケータイ小説、特筆事項特になし!

同じく1年、青野あさぎ!


面白そうだからなんとなく加入!同じく1年、黄山きはだ!


独り身万歳!自由を謳歌!養護教諭2年生(?)、白久澄河(しろひさすみか)



そんなうら若き乙女の干物4人は、今日も活動実績(アーカイブ)を作るべく、部室に集い小説投稿サイトという名の電子の海へ日常を垂れ流すのであった……。

池図女学院部室棟、あーかい部部室。




「う〜ん……どうしたものか。捨てるのもなぁ……。」


「持っておけばぁ?」




あさぎ、きはだ、白ちゃんは机の真ん中に鎮座する1つのお守りを囲み額を突き合わせていた。




「でも『安産祈願』なのよねぇ……。」




お守りには、デカデカと刺繍された金色の『安産祈願』の4文字が神々しさに近い存在感を放っていた。




「白ちゃん使う〜?」


「使うと思う?」


「「すみませんでした。」」


「謝るのやめて哀しくなるから。」


「やっぱりあさぎちゃんが貰ったんだしあさぎちゃんが持ってればぁ?」




因みにこのありがた〜いお守りはあさぎが隣人、モーラから譲り受けたものである。




「しっかしモーラも迷惑なもん渡してくるわねえ。私から文句言っておこうか?」


「そいつぁモーラさんの思う壺ですぜ白ちゃんよ。」


「そういえば、くれたとき『見せびらかしてもいいんだよwww』って言ってたなぁ。」


「確信犯じゃない……。」


「とりあえず部室にでも飾っておきます?」


「やめとけやめとけ。」


「神様大困惑www」


「あれ?きはだって神様とか信じるんだ?」


「ちょっと意外かも。」


「はぁ?信じるわけないじゃん。」


「あ、そうなんだ……。」


「信じられるのは手前(てめえ)(ぜに)だけよ。」




きはだは両手の親指と人差し指で丸を作り、やれやれとでも言うように首を左右に振った。




(すさ)んでるなぁ。」


「どんな人生送ってきたらそうなるのよ……。」


「こんな人生。」


「そっかぁ。じゃあモンスターに食べられそうになった時、きはだは『おお、神よ……!』って叫んだり十字架握ったりしないわけ?」


「大丈夫あさぎちゃん?最近B級映画に頭侵食され過ぎじゃないかしら……。」


「しないねぇ。縮こまって命乞いするくらいなら、関節から苦い汁でも出した方が生存率上がるんじゃない?」




きはだの声色は、嘲笑混じりの(すさ)んだものになっていた。




「テントウムシかっ!」


「テントウムシって漢字で書くとお天道(てんと)様の虫だものねえ。」


「お〜、白ちゃん詳しいねぇ。」


「流石です、レディーバグ……!」


「テントウムシやないかいっ!?」


「ま〜、神様ってなると宗教が絡んでくるものね。信じるか信じないかは


「「あなた次第です……ッ!」」




あさぎときはだはピッタリと息を合わせて白ちゃんの方を力強く指差した。




「そこまでオーバーにやると都市伝説みたいな胡散臭さが出てくるわね……。」


「白ちゃん先生は信じてるんですか?」


「そうね。モーラのこと、死んだと思って神を恨んだ日もあったけど……。」




俯く白ちゃんは、どこか憂いを感じさせる表情(かお)をしていたが、それは同時に優しさのある表情でもあった。




「今はこうして迷惑な贈り物押し付けるくらい……元気なあの子とまた会えたんだもの。お礼くらいはしてもいいかも知れないわね♪」


「…………ケッ。」




白ちゃんの言葉を聞いて、きはだの声色はいっそう(すさ)んだ。




手前(てめえ)の都合が悪くなったら恨まれんのに、手心加えてもお礼の一言で済まされてご満悦たぁ、随分と都合の良い存在ですこと。」


「ちょっときはだ、今いい話な雰囲気出してたのに……。」


「いいのよ、人それぞれなんだから。」


「でも白ちゃん先生、今のは流石に言い過ぎじゃ


「ケッ、信じたって救われるたぁ限らないのに……。」


「きはだ!」


「まあまあ……。」


「……よし!これ、きはだが持ってて!」




あさぎは机の上のお守りをふんだくってきはだの手に握らせた。




「……いらないんだけど。」


「じゃあ捨ててもいいから。今日のところは持って帰ってよ。」


「……クソの役にも立たないゴミをいつまでもとっておくほど、いい子じゃないんだけど。」


「『いつまでも』ってことは、それなりに取っておいてくれるんだ?」


「……。」




牽制したつもりのあさぎから思わぬ応えが返ってきて、きはだは言葉を失った。




「じゃあついでに約束!きはだに子どもが生まれたら、それ一緒にお焚き上げしよ!そうすればいつまでも取っておく必要はないよね?」


「あさぎちゃん……。」




2人の会話を邪魔しないように静観していた白ちゃんの口から言葉が漏れた。




「……その前にわたしが死んだら、あさぎちゃんも神様を恨むことになるよ?」


「私が信じてるのは神様じゃなくてきはだだよ?人間だったら約束くらい全然破るよね?」


「…………。」




きはだは言いたいことがうまく言えず再び黙ってしまったが、やがて腹の奥から言葉を搾り出すように口を開いた。




「……………………こりゃ神様も取りこぼすわけだ。」




あさぎと白ちゃんが黙って見守っていたきはだの表情はさっきよりも優しいものになっていた。




「1人との約束でも、わたしには手に余る。」


「きはだちゃん、今日初めてちゃんと笑ったわね♪」


「うるさい、帰る……!///」




安産祈願のお守りはきはだの手に渡った。






あーかい部!(4)




きはだ:投稿完了


あさぎ:お疲れ


きはだ:まったく迷惑なもの押し付けてくれちゃって……


ひいろ:捨て猫でも拾ったか?


きはだ:それよりよっぽどタチの悪いもの


白ちゃん:随分な言いようね


ひいろ:気になるから読んでくる




ひいろ:なんか今回重くないか?


きはだ:守れない約束ほど重くのしかかるものはないよ


あさぎ:守るよ、きはだは


ひいろ:子作りするあてでもあるのか?


きはだ:ないわっ!?


白ちゃん:あったらびっくりよ


きはだ:ひいろちゃんと違ってねぇ!


ひいろ:なんでワタシにあたるんだよ


あさぎ:ひいろは神様とか信じてる?


ひいろ:秘密だ


あさぎ:つれないなぁ


白ちゃん:そりゃお守りの一件読んだら秘密にもしたくなるわよ


きはだ:信じてないとは言わないんだ


白ちゃん:こら、あんまり詮索しないの!今の時代デリケートなんだから


あさぎ:国によっちゃ戦争の火種にもなりますからね


きはだ:モーラさん自分で聞いておいて(たしな)めるんだ


白ちゃん:え?

ひいろ:え?


あさぎ:おっとバレてたか。いつから?


きはだ: 知ってるモーラさん?人間って約束くらい全然破るんだって〜


あさぎ:アッハッハ完全に私の墓穴ってわけだ

あさぎ:そんじゃ、元気な子を産むんだぞ?じゃねっ!


白ちゃん:その発言はアウトなのよ

白ちゃん:ってもういないか……

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