表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

仕返しのつもりが

作者: こうじ

 そんなつもりはなかったんです。


 私は目の前の大惨事に呆然と立ち尽くしていた。


 目の前にあるのはついさっきまで多くの人達が暮らしていた王都の街。


 それが一瞬にして瓦礫の山になってしまった。


 自分がやらかした事に冷や汗が止まらなかった。


 あぁ~、これ捕まったら間違いなく死刑だろうな、でも私を捕まえる騎士団も全滅してるし、しかも王族とか貴族とか身体ごと消滅しちゃってるし良くて身体の一部は残ってる状態だし国として機能してるかどうかもわからないし。


 何故、こんな大惨事になってしまったのか。


 私はこの国の公爵令嬢であり王太子の婚約者だった、と言っても望んでなった訳では無い。


 親同士が勝手に決めた事であり、そこに私の意思は無かった。


 気がついたら王妃教育は始まっていた状態だ。


 これで王太子と関係が良好であれば私も王妃教育を頑張れたのだが残念ながらそうではなかった。


 王太子は周囲から甘やかされて育った結果、自己中心的な性格になってしまい私の事も召使いか奴隷かなんかの扱い、そこに愛なんて物は無かった。


 おまけに女好きでタイプの令嬢に手を出す、しかも私の目の前でイチャイチャする。


 許可があれば全力のグーでぶん殴っている、もしくは首チョンパ。


 段々と私だけ損をしているみたいでストレスは溜まる一方。


 愚痴を零そうにも聞く人は誰もいない、友達なんて1人もいない。


 なんせ王太子の婚約者なんて嫉妬妬みの対象だ。


 日々小声でチクチク言われる悪口陰口に胃がキリキリと痛む。


 両親に言っても聞く耳持たず、国王夫妻なんて論外だ。


 つまり見渡す限り敵だらけの状態。


 そんなストレスMAXの私の唯一の癒しは人形作りだ。


 人形と言ってもぬいぐるみとかではなく等身大の人形、『魔導人形』という物だ。


 魔導人形は魔力を与える事で意思を持ってるが如く動く事が出来る。


 えぇ、日々のストレスを王太子の魔導人形にぶつけてましたよ、何体作ったか覚えてもいない。


 そんな日々を過ごし私は貴族学院に入学、卒業まで後1年という時に私の我慢の限界を超える出来事が起きた。


 王太子が男爵令嬢に手を出したのだ。


 普通は身分の差があり男爵令嬢が王太子と話す事なんて言語道断、なんだったら近づいた時点で捕縛され退学になってしまう。


 でも男爵令嬢はなんなく近づく事に成功し王太子と良い仲となった。


 しかも周囲は『お似合いのカップル』とか言いだすし、いやいやただの浮気ですよ、屑のやる事ですよ。


 更に私が男爵令嬢を虐めている、という噂も出てきて私の立場は悪くなる一方。


 そして、私の耳に王太子が卒業式の日に婚約破棄を宣言する、なんて話が入って来た。


 うん、もうどうでもよくなりました。


 どんなに頑張っても褒められもせずに貶される日々、馬鹿馬鹿しくなりました。


 もうどっか遠くに行って1から人生やり直そう、そう決断しました。


 ただこのままやられたままでは終わりたくなかったのでちょっとした仕返しをしてやろう、と思いました。


 それが魔導人形です。


 私は自分そっくりの魔導人形を作り上げ私の魔力を込めた水晶を入れました。


 そして私の代わりに卒業式に出席してもらう事にしました。


 王太子が婚約破棄を宣言したと同時に水晶は破裂、人形もボンッという音と共に爆発する仕組みになっています、なる筈だったんです。


 私はそれを遠くの場所から眺めて笑ってやろうと思っていたんです。


 私は卒業式当日、王都から離れた小高い丘にいました。


 会場となる貴族学院が見える場所です。


 夜になり卒業式が始まる時間になりました。


 今か今かとワクワクしていると卒業式が行われているであろう貴族学院がピカッと光りました。


 それと同時に激しい地響きが私を襲いました。


 私は思わず地面に這いつくばりました。


 這いつくばりながらも学院の方を見ると建物がグラグラと音を建てて崩れていくのを見ました。


 貴族学院だけではなくお城も家もお店も城壁も一瞬にして崩れ去っていったのです。


 そして漸く地響きが収まると王都の一部が瓦礫の山になっていました……。


 私は恐る恐る王都に来ました。


 平民達が住んでいた地域は被害が無く、城、貴族街、貴族学院は完全に崩壊していました。


 爆発の中心地であろう貴族学院なんて焼け野原状態になっていました。


 もしかして私のストレスも水晶に込めてしまったのか、その結果がこの大惨事に繋がってしまったのか。


 ざわつく平民達の陰でコソコソと私は王都を逃げ出しました。


 そして、私は近くの森に小屋を建てて隠れ住む事にしました。


 無関係の平民達を巻き込まなかった事だけが唯一の救いです。


 その後、他国から調査団が派遣されましたが原因は分からなかったみたいです。


 わが国は王族貴族がいなくなった事で他国に吸収され消滅しましたが平民達の暮らしは元母国よりも生活が安定する様になったそうです。


 まぁ王族貴族優先で平民達は泣きを見ていたのでそこは良かったかもしれません。


 平民達の間では『あれは神罰だったのでは?』と噂が出ている様です。


 違うんです、あれは私のストレスが爆発した結果なんです。


 私は相変わらず人形を作りたまに街に行き売って生計を立てています。


 勿論、普通の人形です、爆発なんてしません。


 私はこれからもひっそりと暮らしていくつもりです。


 


  

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ