表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結済】平凡令嬢はぼんやり令息の世話をしたくない  作者: 命知叶


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

1/25

リオーチェの日常

「ぼんやり令息」という言葉を思いついてそれだけで書いてみてます。

よろしくお願いします。

ぱたぱたと軽い令嬢たちの足音が駆け過ぎるのを、リオーチェは息をひそめて待った。少し離れた場所で「いました?」「いえ」「全く苛々するわね」等と話している声が聞こえてくる。これ以上身体を縮こませることはできないのに、リオーチェは目をつぶってぎゅっと身体をかき抱いた。

そうして、どのくらい時間が経ったのだろうか。ふと気づけば、他人の気配を感じなくなっていた。ようやく息をついて、身体を起こす。すると繁みの葉が髪にひっかかっていて痛みを感じた。

「もう」

小さくこぼして木の枝と格闘する。何とか外れたが、くすんだ赤毛が何本か切れてしまった。枝に絡んだ艶のない髪を見る。

艶のない赤毛に、灰色がかった紺の瞳。顔には薄くそばかすが散っている。目も小さいし鼻筋も低く、唇は薄くて色すらも薄い。リオーチェ=クランは全く「美しくもかわいらしくもない」令嬢だった。

家はこれと言って特徴のない伯爵家で、リオーチェはそこの一人娘である。とはいえ弟もいるので後継のために婿を迎えねばならぬという訳でもない。リオーチェは自分が結婚できるとは全く思っていなかったので、弟がいることにはいつも感謝していた。

リオーチェは見た目に特長がないだけでなく、その中身にもこれといったものを備えてはいなかった。勉学も人並み、マナーや音楽、刺繍の腕前にも特段取り立てて優れたところがある訳でもなかった。実家の伯爵家は、中央政治などには無縁の無役貴族で小さな領地が安寧であればいい、というような家である。つまり政治的に必要とされている令嬢でもなかった。だからこの年まで婚約の申し込みがあったことなど一度もない。


リオーチェは今十六歳で学院に通っている。そこでも安定の平凡ぶりを発揮していた。仲がいいのはどちらかと言えば裕福な平民の子女が多く、その事もリオーチェが馬鹿にされる一因だった。

だがただ一つ、リオーチェを「普通」ではなからしめることがある。

それが、ロレアント=イスラ=ヘイデンの存在だった。


ロレアントは歴史の古いヘイデン侯爵家嫡男である。その上美しい紫黒の艶髪に紫色の輝く瞳を持った容姿端麗な若者だ。リオーチェより一つ年下ではあるが、頭脳があまりに優秀なので今学期から飛び級をして最終学年に移籍をした。つまりリオーチェより一つ年下であるにもかかわらず一年先輩になってしまった。そのぐらい賢いらしい。また魔法力も抜群に多く、魔法導体関連の研究にも携わっているようだった。しかもヘイデン侯爵家は辺境に近い地域も治めている関係で、昔から尚武の機運が高く家系的にも武が重んじられている。ロレアントは剣術でもかなり優れた腕前を持っているということだった。

そのような文武両道容姿端麗な侯爵令息と、平々凡々なリオーチェに何の接点があるか、と言えば話は単純で、国都にあるタウンハウスがたまたまクラン伯爵家とヘイデン侯爵家が隣り合っていただけのことだった。

無論、屋敷の規模は比べるべくもなかったが。

そういった縁で、小さい頃は子ども同士よく遊んでいたのだった。ロレアントは優秀ではあったが、どこかいつもぼんやりとした子どもであまり自分の感情を表したりわがままを言ったりすることはなかった。リオーチェは、いつもそんなロレアントの面倒を弟とまとめて見てやっていた。


だが五年前にロレアントの母が病によって亡くなった。ロレアントの母は、娘がいなかったせいかなぜかリオーチェをかわいがっており、亡くなる少し前にもリオーチェを呼んで話をしたがった。その時、リオーチェは言われたのだ。

「リオ、あなたに迷惑をかけるかもしれないけど、ロレンの事を頼むわね。あの子はいつもどこかぼんやりしているから‥心配なの」

病床からそう言って手を握られたリオーチェは涙をこらえながら任せてくださいと返事をしたのだった。


それから五年。今年から同じ学院に通うようになった。相変わらず優秀ではあるがいつもぼんやりとしているロレアントは、授業開始時間が迫っているのにもかかわらずぼんやりと空を見上げていたり、休み時間に庭の花を見つめて動かなくなったりする時があった。リオーチェはロレアントの時間割を把握して、いつも授業に間に合うように急かしたり引っ張って連れて行ったりしていた。

それが、優良物件を狙う貴族令嬢たちのカンに障ったらしい。全学年の令嬢たちから、絶え間ない嫌がらせを受けるようになってしまったのだ。

今日もなかなか導体車から降りようとしないロレアントを、無理にも引っ張って教室に連行しようとしていたら上級生に見つかった。何とかロレアントを教室に入れて離れようとするや否や、上級生の令嬢にぐいと腕を掴まれたのだ。

そのまま人のいないところに連行され、悪口雑言を浴びせられた。リオーチェは別にその事を特別辛いとは思っていなかった。どちらかと言えば「そうでしょうね」と納得する部分が多かったのだ。自分のような、特に特長もないぱっとしない令嬢がロレアントのような令息にまとわりついているのはさぞかし気に入らないだろう。

一度「ですよね、わかります」と言ってしまって、相手の神経を逆撫でしてしまったことがある。その時は激高した令嬢二人に階段から突き落とされ、かなりひどい怪我をしてしまった。

その時の怪我は、ロレアントが新しい治癒魔理法を使って治してくれたので、翌日には学院に戻ることができてしまったのだが。

それを教訓に悪口雑言を浴びせられている時は黙ってその嵐が通り過ぎるのを待つようにしている。だが先ほどは、嫌味を言われたあげくに一人の令嬢がハサミを持ち出してきて髪を切ろうとしてきたのだ。いくら嫁入りの当てがないとはいえ、リオーチェも貴族令嬢の端くれである。髪を切られては外にも出られないので必死に逃げていたのだった。


お読みいただきありがとうございます。

よろしかったら、下の☆評価、いいね、ブックマークや感想などいただけたら嬉しいです!

是非よろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ