【普通】に生きたかった少年
僕は昔から「変な子」と言われてきた。
僕からしてみれば僕にとっては当たり前で普通なのに。みんなの普通とは違ったみたいだった。
親には「もっと普通にして」ってよく言われる。でも僕には普通がわからない。
学校で「変」って言われる度に僕の心は傷ついた。他人と少し違うことをしたら変呼ばわり。
楽しくなって声を出せば周りは静まり返り、逃げ惑う鼠を追いかけ回したりすれば悲鳴が聞こえ、虫を掴んだだけであっちへ行けと。
いくつになっても「あいつは変だ」なんて言われてきてだんだん僕は自分が【変な子】なんだって思うようになった。
普通になればみんな仲良くしてくれるのかな?
そう思った僕は自分の色を隠した。
「明日のお祭り行こうよ」
「ごめん明日用事あるんだよねぇ」
迷惑かけるから行けない。
「リスだ、かわいい〜」
「・・・そうだねぇ」
追いかけたらだめ。
「うわっ虫だ!きも!」
「ほんとだね」
本当はかわいいって思ってる。
普通の人になれてるかな?
僕は以前より人と関われるようになった気がする。なのに、心は満たされない。
ずっと穴が空いてるみたいだった。
そんな僕にある日大切な親友ができた。
「君にだけならなんでも言える気がするよ」
僕は彼の前だけなら昔の僕に少しだけ戻れた気がした。
楽しくなれば騒いでもいい。
君を見つけたら走っていっていい。
虫を見かけたら名称を答えたっていい。
彼は全部笑って一緒に居てくれた。
【普通】の彼は【変な子】の僕を見捨てなかった。
僕は誰かに自分を認めてほしかったんだって自覚した。彼と一緒にいるときだけは穴が塞がった。辛くなかった。
今日も学校で彼を見つける。
あ、あんなところにいる。
僕は走って追いかけて名前を呼ぼうとしたときだった。
「いやーまじであいつ無理だわ笑」
「えー?でもいつも一緒じゃん」
「いや勝手にあいつが俺に懐いてるだけだから笑 正直迷惑なんだよね、急に騒ぐし俺を見かけたら走ってくるし虫の名前答えるし笑」
僕の足が震えるのがわかる。
今までの君は全部嘘だったんだ。
僕に合わせてくれていただけだったんだ。
呼びたかった名前を喉に閉まって僕は静かにその場を去った。
僕は学校の屋上に立っていた。
手には白いゼラリウム。
僕はぼうっとそれを眺めてからそれを捨てた。
「〜♪」
鼻歌を歌いながらフェンスを乗り越えて、地面にピースしながら飛び降りた。
下にはガマズミが生えていた。