表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/4

1-4

1-4



次の朝。


昨日のショックで寝過ごしたリーリエは、興奮したアリナとサンにゆさぶられて眼をさました。


「起きて、起きて!

凄いことよ、リーリエ!都の皇太子殿下、日の皇子様がお忍びで見えたの!」

「すっごい美男子、立派な方だって」

「お顔を見に行きましようよ、リーリエ!」


 いやな予感がして、リーリエは首を振った。胸にどん!と鉛の塊が乗ったような気がしている。


 いやいやながら出ていくと、肥った舎監が皆を広場に追いたてて、そわそわしている校長の前に並ばせようとする。


「皆さん、落ち着いて!

 私達は踊り手。水の大神殿に属する者。第二皇子、月の皇子様にお仕えする者ですよ!」


 格式の高い水の大神殿は、国王の第二子、月の皇子を最高位の神官長に頂いている。

 皇太子日の皇子とは、あまり仲が良くないと噂されていた。


「騒いだり愚かしい真似をしないように!月の皇子様のお顔を潰すような真似は許しませんよ!水の大祭も近いのです。絶対に粗相の無いように・・・」


 激しい注意も聞かばこそ。若く美しい貴公子の訪れに、少女達は小鳥の群れのように囀りまくっていた。


 華やかな色合いの一団が近づいてくる。

 リーリエの耳に校長の諂い気味の声が届いた。

「ご命令どおり、最上級生「花の蕾」全員を揃えました。『龍王の舞踏』を踊れるのは、この娘達でございます」


 一団が並んだ少女達の前を通って来る。少女達が順に両手を胸で組み、頭を下げる。

 眼を伏せたリーリエの前に、来る。


(気づきませんように、どうか気づきませんように・・・)

 二本の足が目の前で止まった。

 必死の願いもむなしく、ぐいと腕をつかまれ、引き出される。


「顔を上げろ」


 冷たく燃える男の眼がリーリエを見下ろしていた。眼の片方が、あうー・・・見事な青あざに・・・。

 その手がチリ・・・と鳴る小さな鈴を突き出し、リーリエの手首の腕輪に合わせる。

 二つに割れた金具がぴたりと合った。


「こいつだ」


 副校長が進み出た

「恐れながら皇子、この踊り部の里は水の大神殿直属の自治領。踊り手達はみな、弟君月の皇子様の所有になる者でございます。

 ご無礼をはたらきました事は重々お詫び申し上げます、厳しく詮議いたしますゆえ、今日のところは・・・

!」


 皆まで言わせず、皇子が副校長を蹴り倒し、リーリエを担ぎ上げた。

「俺が直々に処罰する。文句があるなら王宮へ来い!」


 ずかずかと繋がれた馬の所まで戻ると、リーリエを鞍に放り上げ、皇子は身軽に後ろに飛び乗った。


(日の皇子様だったなんて・・・大変な方に怪我をさせてしまった・・・)

 どうなるんだろう、どうなるんだろう、どうなるんだろう。

 ショックで硬直した頭に響くのはその言葉ばかり。


 お付き二人を引き連れ、皇子はそのまま里を出て街道のほうへと馬を進める。


「誰かに話したか?」


「え?」

「俺が一瞬でも意識を失った事をだ」

(一瞬じゃなくしばらく気絶してましたけど・・・)


 それに落馬したし、顔を枝でぶたれたし、とは言わず、「いいえ」と答えるリーリエに、「そうか」とほっとしたような響き。

(ひょっとしてこの人、それを言いふらされるのが嫌で、私を?)


 リーリエはじたばたした。


「誰にも言いません!言いませんから私を帰して下さい!」

「お前、自分の立場がわかっておらんな。民が皇子に手を上げたのだ。どんな極刑を言い渡してやろうか」


 極刑!極刑っ・・・。どうなるんだろう・・・。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ