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ぼんやり令嬢とお見舞いそして再会

「あぁーこの波長は絶対彼だねぇ」


 シャルルは、マリアンが授業で使ってる、淡いラベンダー色のリボンが巻かれた杖を、くるくる回しながら呟くと、マオはそれを疑うことも無く頷いた。


 「……そうか、この間のゼダの華の件も、きっちりと調べたほうがよさそうだ」


 「いやぁ、ここまでするかねぇ普通」


 猫のように愛らしい表情を浮かべつつ、その瞳の奥はとても冷えていた。

 「全く、ガキは困るねぇ」


 「……そうだな」


 「マオちゃんも怒ってる?」


 マオは、シャルルの問いに一度ため息をついてから、頷いた。


 「竜のこともあるがな、同じ男として、許せないところが多すぎる。俺の、育ちの問題もあるかもしれないが」


 「マオちゃんは紳士だもんねぇ~。そういう所すきだよぉ」


 「ありがとうな……と」


 マオは、抱き着くシャルルをひとしきり撫でてから、証拠をさらに、突き詰めていくのであった。


 「ノーデン様、お伺いもせず突然すみません」


 「ベルバニア伯爵令嬢、いえおきになさらずどうされましたか?」


 マリアン様が心配で、オルドリン子爵家に、なんの知らせもなく来てしまったが、ノーデン様は、嫌な顔一つせずに出迎えてくれた。


 「マリアン様が、怪我をされたと聞いて……。その、すみません」


 あまりにも稚拙すぎる言葉だったが、ノーデン様は、それを気にすることもなく笑って答えた。


 「あぁ、おおよそ張り切りすぎたのでしょう ご心配かけて申し訳ありません。ちょっと気絶しただけで、擦り傷くらいですよ。」


 「よかったぁ……」


 学院で答えてくれた先輩が、嘘をついているとは微塵も思っていないが、ノーデン様からも、同じような返答がもらえて安心していたら、ノーデン様が笑顔で言う。


 「よければ上がっていってください。マリアンも、もう目が覚めてますし」


 「いやいや、安否が分かれば大丈夫です。突然だったし、申し訳ないですよ……」


 あまりにも私に対して好意的すぎるノーデン様に、必死で首を振っていると、聞き覚えのある、甘くもどこか気の強そうな声が聞こえた。


 「上がってけばいいじゃない」


 そこにいたのは、まごうことなくマリアン様で、見たところ、大きなけがもしてなさそうで、安心のあまり、だきついてしまった。


 「……マリアン様ぁ~」


 「はいはいはい、もう何でもいいわよぉ」


 結局、マリアン様にひきずられるように、オルドリン子爵家に入ったのだった。


 「よかったぁ……本当になんもなくてぇ」


 おーいおいおい、とばかりにマリアン様に泣きつくと、マリアン様は、嫌な顔一つせずに頭をぽんぽんとなでながら


 「あんた意外と表情豊かね……」


 と呆れつつ嫌な顔はしていなかった。

 そうしてしばらくたった後、ようやく。気持ちが落ち着いたおかげで、マリアン様に、いろいろと聞くことができた。

 

 「杖が、急に魔力も込めてないのに熱くなってね、先生にいって交換しようとしたら持てないくらい熱くなってさ……投げたのよ杖」


 「投げたんですね……」


 「で爆発して、爆風にあてられて、転んだのよ」


 何というか、とっさの判断が的確過ぎると確信したものの、落ち着いたからか、頭を深く下げた。


 「すいません。マリアン様私のせいで……」


 「あーどうせレヴィエ様でしょう?」


 マリアン様は、大してショックを受けて無さそうな表情、むしろ、落胆しきった表情で言うと、私は、申し訳ない気持ちになり、うつむいてしまった。


 「う……多分ですけど、でも私が課題のこと頼んだから……」


 「あんたは悪くないでしょう、何一つ」


 マリアン様はさばさば言い切るけれど、罪悪感がぬぐい切れなかった。

 

 「……でもぉ」


 「くどい」


 「うぅ……」


 ぴしゃりと、マリアン様は言い切ると、私の頭をぽんぽん触り堂々と答えた。


 「本当気にしなくていいから。報いといえば報いだし」


 「報い?」


 突然出てきたやや物騒なワードに、首を傾げると、マリアン様は、深くため息を吐いたあと、真剣な目で、こちらを見つめた。


 「……私、前にあんたを殴ろうとしたでしょ、それの」


 「もう時効ですよぉ」


 「一年もたってないのよ」


 いくらなんでもあっさり許しすぎ、と以前シャロにも言われたけれど、実際殴られてないし、それはまぁびっくりしたけれど、別に謝ってもらえたし、もういいんだけれど、でも彼女のなかで、ようやく折り合いがついたのだったら、ここで深く追求するのも変だよな、それ以上言及するのはやめた。


 「……でも、私も犯人はレヴィエ様だと思うのよ」


 「え?」


 「私が使ってる杖に、巻いてあるリボンの色を知っているのは、ルル先生か、クラスメイトか……、いやそのなかでも数少ない友人とあとはレヴィエ様だけなのよ」


 「……でも」


 「言いたいことはわかるけど、私、結構レヴィエ様に魔法を教わったりしてたのよ。だから、魔力の波長も分かってると思う」


 「……確かに」

 

 あの人、魔力操作昔から上手だったからなぁ、成長してからは分からないけれど。

 でも、あの学科で上の方の成績を維持していたとなると、割と簡単なのかもしれない。

 そこまでしてどうして私と、他人を危険な目に遭わせてまで、関わろうとするのだろうか。

 こんなことをするのだったら、ただ昔のように、たまに領地に来ていたあの頃のように、ただ、ただ普通にしてくれてればよかったのに、侯爵家だなんだなんて気にしないで、ただあの頃のように気楽に接してくれればよかったのに、自分でいろんなものを壊してから、当然のように、私の周りのものまで壊そうとしているその態度に、純粋に、怒りを感じずにはいられなかった。

 幸いその感情が表情に出てくることは無く、マリアン様は、少し黙っているだけの私を、心配してくれていた。

 

 「大丈夫?」


 「あ、すいません。大丈夫です」


 「とりあえず、今日は、急にいなくてびっくりしたでしょう?課題みてあげれなくてごめんね」


 「いえ、そんなことより、マリアン様の怪我のが大事ですから」


 「そう、ならよかった。」


 そうしてマリアン様と別れた後、オルドリン子爵家を後にするも、心のなかは怒りと、申し訳なさと、少しの恐怖が混ざり合って、自分で言葉にできない感情が混ざり合っていた。

 

 「……ふぅ」


 今後、どうしようか、これ以上被害が出ないようにするには、誰に頼って、自分は、何をすればいいのだろうと、足りない頭とぐちゃぐちゃの気持ちで考えるも、まとまるはずがなかった。

 最終的には私が学院をやめた方がいいのか、ないしは、領地に引きこもるほうがいいのかまで考えてしまったが、それはここまで高いお金を払ってくれた両親と、領民のみんなに申し訳ないし、それで解決するとは到底思えない。

 

 情けない話だけれど、また両親に相談しようと思っていると、見覚えのある、褐色の男性が声をかけてきた。


 「おぉ、アイオライトの」


 私をそんな高尚な二つ名でよぶのは、クティノス共和国の第二王子である、ファジィル王子だった。


 「ファジィル王子……ごきげんよう」


 「あぁ 元気そうでなによりだ最近課題で忙しいみたいだけれど進捗はどうだ?」


 ファジィル王子はにこやかに笑う。多分、私が魔術系の科目が苦手なのは知っているのだろう、けれどここで、アイン様たちの前で、全く終わる兆しもありませんと、言えるわけなく曖昧にほほ笑んだ。

 

 「うぅん ぼちぼちです……」


 「そうかそうか、ってことは終わってないのかぁ」


 「はい」


 「それで落ち込んでたのか」


 「あはは……まぁ」

 

 まさか、元婚約者が、他人に迷惑をかけてへこんでいるなんて、口が裂けても言えず、またまた曖昧にほほ笑むと、ファジィル王子は快活そうに答えた。


 「俺でよければ教えようか?」


 「え?あぁでも……」


 友好国の王族に課題を教わるのってどうなんだろう。

しかも、男性にって私仮とはいえ婚約者いるしなぁ。

でも断るのも失礼なのでは?と首を傾げていると、ファジィル王子が急に手を翳した。

 ガシャン、と私の後ろで物音がしたと思ったら、嫌でも聞き覚えがありすぎる声が聞こえた。


 「フルストゥル……」


 「ひっ……」


 そこにいたのは、かつての堂々とした美貌を失った、レヴィエ・ブランデンブルグだった。

いつも読んでくれてる皆様、初見の方閲覧ありがとうございます。

いいね、評価してくれる方本当にありがとうございますとてもモチベーション向上につながっております。


お暇なとき気軽な気持ちで評価、ブクマ等していただけたら幸いです。

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