ぼんやり令嬢と奇行の真相(あくまで予想)
「とりあえず、時系列にそって話しますね」
いつもより緊張しているのか、がちがちなマリアン様に、私は、アイン様のカリスマにあてられなれてるため、普通に話しかける。
「あっマリアン様、いつもどうりの口調でいいですよ。ここでそんなこと気にする人いませんし」
私のその言葉に、戸惑っていたが、アイン様はそうねぇと呟いた後、笑顔で
「私も、フルルちゃんがいいならいいわよ?」
と快く言ってくれたことで、マリアン様は少し考え、アイン様に頭を下げた後に私に笑顔を見せた。
「そうね、あまりにも、意味が分からなさ過ぎて、どうせ崩れちゃうものね」
肩を落とし、マリアン様は、一口紅茶を飲んだ後に話し始めた。
婚約破棄の前、シャルロットの提案で、公衆の面前で謝罪したあとに、ブランデンブルク侯爵家に謝罪にいった時、当主であるダイアン様は
「……いや、君の気持ちは分かった。フルストゥル嬢が許しているのなら、こちらからは何もない」
「え?でも……」
私のせいで、という気持ちもあったからそう呟くも、ダイアン様気づかわしそうに首を振った後に優しく微笑んだ。
「君だけだ。レヴィエと関係を持ったことで、わざわざ謝罪しに来てくれたのは」
「え?」
私だけなの?
あれ?記憶が正しければレヴィエ様、私と関係を持つ前にも沢山の女といたよね?てか、私と離れた後もいたよね?
私も人のこと言えないけれど、それってどうなんだろう。
けれど、それが普通なのかと思っていると、ダイアン様は答えた。
「君もある意味被害者だ。おおよそ、あれにいいよう言いくるめられたんだろう?」
「……私、本当に全部知らなくて……全部、レヴィエ様のことを信じてしまって」
その言葉を聞いたダイアン様は、申し訳なさそうな表情で、けれどその後遠い目をして、誰に答えるわけでもなく続けた。
「きっと、もっと我々が二人の関係を注視していれば、いや、私がジョエルたちの言葉を聞いていれば」
そういうダイアン様の、表情と声色は、深い深い後悔が滲んでいた。
私は、その言葉をどう返したらいいか分からず、促されるまま帰った。
そこまでマリアン様が言うと、アイン様とニーチェさんは笑顔で口を開いた。
「へー侯爵って愚かねぇ」
と美しい毒を投下した後に、ニーチェさんも頷いた。
「ほんとですねぇ普通は気にかけるし、使用人の言葉も聞くんだけどなぁ、愚かだなぁ……フルル、スコーン食べるか?」
「もらいます」
と、軽蔑、ときどき優しさの温度差に翻弄されつつも、マリアンさんの話はまだまだ続いた。
その後、すぐにおそらく婚約破棄があったのだろう。
レヴィエ様はしばらく学院に来なくなった。
それだけでなく、レヴィエ様が婚約者がいるにもかかわらず言い寄って、あまつさえ、フルストゥル嬢のことを、悪意を持って侮蔑した令嬢らも、謹慎になったらしく、学年全体がすこし、異様な空気に包まれた。
そうして、しばらくしてレヴィエ様が復学したが、彼の周りにいた令嬢らはほぼ寄り付かなくなったが、事情を知らない……以前の私のような、下位貴族の令嬢がすり寄ったとき異変は起きた。
「触るな、売女」
あまりの暴言に驚くのもつかの間、レヴィエ様は言葉を吐き続けた。
「……お前らみたいな娼婦のせいで、俺は、俺は」
言いよどんだ後に、レヴィエ様は、筆箱を投げつけ失せろと叫んで暴れまわった。
その様子はあまりにも異常で、人は心から怒ると、ここまで目が血走るのかと驚くも、すぐさま通りがかった教師に押さえつけられて、どこかへ連れていかれた。
それを見てると本当、私は何であんな男に夢中になっていたんだろうと、もう失望しかなかった。
その後も異常な行動は続いた。
それこそ、フルストゥル嬢の動向を、窓からずっと見ていたり、追いかけまわそうとしたり、一人でぶつぶつ何か言っていたり、もうそこには、炎の薔薇と謳われた美貌やカリスマが……、たとえ張りぼてだとしてもあったそれらは、全部崩れ落ちていた。
女生徒を突き放したと思えば、沢山囲っていたり、いろごとにおぼれていたり、と思えば何か思い出したかのように、ぶつぶつ呟いてみたり
おそらく、フルストゥル嬢と偶然会った後は、変に興奮していて気持ちが悪かった。
などなどその様子は、隣のクラスの私のところにも届いていた。
さらには、ダンスの授業でフルストゥル嬢が男子と組むことが気に食わず、チェルシー先生に殴りかかろうとしたとかなんとか、マリアン様的には、殴ってはないにしろ、なにかしらトラブルがあったらしいことは確かそうだ……。
……その後も、元婚約者の醜聞をそこまで聞くと思わず、何にも包むことなく、言葉がそのまま出てきてしまった。
「いや、あの人学院でも何してんの?意味が全く分からないんですけど?」
「そうだな、気持ち悪いよなぁ」
「度し難いわねぇ」
ニーチェさんと、アイン様も同意したところで、シャロもうんうんと頷いた。
「で、この話はまだ続くのだけれどぉ……」
頭を抱え、ふらふらとしながも話を続けるマリアン様に、私は思わず小声で問いかけてしまった。
「大丈夫ですか?一発吐きます?」
「吐かないわよ。そんなポップに言わないでよ」
「安心してください。私は割と限界きたら、気軽に吐きます」
そう親指をぐっと立てると、それを聞いていたらしいニーチェさんは心配そうに
「自信満々に言うことじゃなくないか?」
と、肩を下した後に、労わるかのように頭を撫でてきた。
シャロはその様子を見た後、可愛らしくため息をつき、マリアン様に向き直った。
「……とりあえず、ここは放っておいて、続けてもらっていいです?」
「え、あぁ……いいけれど」
ごほん、と一度マリアン様は咳ばらいをした後、続けた。
「最近だとね。事情を知らない下級生から、あんたのクラスの時間割りを、お金だして聞き出したりとかしてるみたい」
「はぁ?」
そんなことして、今度は何をするつもりなんだ?というか、そんなの知ったところでという思いと、ただただ嫌悪感が、心の中のフィルターを通すことなく、表情にでていたらしい、マリアン様は同意するようにため息を吐くも、私に告げた。
「あっでも安心して、あんたのとこの担任が、色々止めてくれてるみたいよ」
「マオ先生流石すぎる……」
「流石先輩だなぁ」
ニーチェさんもそう呟くほど、あまりの担任の対応が早いのと、きっと、毅然と追い返してくれたのであろうことを確信し、感謝しかないが、同時に、仕事増やしてごめんなさい、という気持ちが溢れた。
「他は?」
「あと今回の課題のこと、自分が教えるって、急にいってきてね」
その言葉に、一瞬固まるも、マリアン様は仕方がなさそうに答えた。
「そりゃ、あっちのがこういうの得意だろうけどさ、なぁんか異様な雰囲気だったから断っといた。以前、迷惑をかけてしまった分を、かえせてないのでって」
あまりにも、というか、元々好きだった相手にそこまで毅然と返せるところに感動し、思わず抱きつくと少しあつくるしそうに
「あーこらこら抱きつかないの」
「いやです~」
と、引きはがそうとするマリアン様にくっついていると、しばらく口を閉ざしていたシャロが、ぽつりとつぶやいた。
「……もしかして」
「シャロ?」
「ねぇ、もしかしてさぁ、前の授業で、竜がゼダの華にあてられたのってあのバカのせいじゃない?」
「えぇ?」
シャロのその言葉に、私は、驚くことしかできなかった。
確かに、時間割とか授業の進行が分かっていれば、出来なくもないけれど、竜を良き友人として、大切にし歩んできたキャシャラトにおいて、そんなことをしたら、以前ウォーレンさんが言っていた通り、法の下に裁かれるし、そもそもリスクが高すぎる。
「そんなことして、何の得があるのかな?」
首を傾げる私に、シャロは、私が今までそれはないだろうと、今まで捨ててきた可能性を口に出した。
「……どんな手を使ってでも、フルルと復縁したいほど好きとか?」
「いやいやいやいや、ないないない」
「でも、そうじゃないとここまでしなくない?」
逆恨みしてるならまだしも、それは無いでしょうと笑っていると、どうやら、そう思っているのは私だけらしく、みんな何とも言えない表情と疑問を浮かべ、ただならぬ雰囲気が漂い、現実逃避をするため、紅茶を震える手で飲むのことが唯一の抵抗だった。
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