ぼんやり令嬢の不安を周囲は受け止めてくれるそうです。
すいません今回、体調不良のため文章少な目でお送りしております。
「薬草園からゼダの華だけ減ってた?うーん、それってそんなに気になることっすか?」
帰ってきてからも、浮かない顔をしている私が気になったらしい、オルハの問いに答えると、いかにもオルハらしい、のんびりとした答えが返ってきた。
「考えすぎかとは思うんだけどね、ほら、黒魔術とかに使ってるって聞いたら不安になっちゃったのかも?」
「あぁ、そりゃ不安になりますって」
オルハの軽い返答にそこまで深く考えなくてもいいか、と楽観的になろうとしたその時、ウォーレンさんが軽くサングラスをあげつつ口を開いた。
「……ゼダの華は、少量ならただの触媒にしかなりませんけど、少量とはいえ毒があります。その毒は、人間には無毒ですけど、竜種には催眠効果があって、怪我をした竜が、暴れないように使用していた……という過去の経緯がありますね。」
「お、流石ウォーレンさん 物知りですわぁ」
「どうも」
感心したままのオルハに、ウォーレンさんは淡々答えた後、私の方へ向き直り、それはそれは優しい声色で答えた。
「初めて竜を間近で見る機会も控えて、偶然とはいえ、竜とは無関係ではない華に、何か感じ取るのは、感受性の高いお嬢様なら無理もないかと、気を付けることは大切ですけど、あまりにも考え込みすぎないほうがいいかと」
「ん、ありがとうウォーレン」
ウォーレンさんは、私の言葉を聞いて一度頷くと、最後に一言だけ付け加えた。
「いえ、もしどうしても心配なら、明日にでも教師に聞く方がよいかと」
「そうだね、そうするよ。」
そうしてウォーレンさんが去った後、オルハと二人で
「「いやいや、紳士過ぎない?」」
と、同時に話して、ようやく聞き取れるほどの声が談話室に聞こえたのだった。
その夜、昨日に引き続き、今日はエマ特性のミルクティーを飲みつつ、ゆっくり過ごしているといつも鳴らないはずの部屋のドアが控えめなノックを響かせた。
「はい?」
「フルストゥルお嬢様、エフレムです。」
こんな時間に珍しいな、と思いつつ入るように促すと、エフレムさんは、小さな小箱をもって恭しく、私の前で、それは王の前で何かを献上するかの如く、それを差し出した。
「あの、楽にしてくれていいのだけれど……」
「いえ、お嬢様は私の夢をかなえて下さった恩人ですから。」
エフレムさんはそういって、一向に頭を上げる様子は見せない。私はもう、その騎士のような対応をどうしていいか分からずも普段通りに対応した。
「えぇと、開けていいかな?」
「もちろんです」
そうして、エフレムさんの目の前で小箱を開けると、そこに入っていたのは、一見シンプルな銀のバングルだが、よくみてみると、花の模様が刻まれているのと、小さくアクアマリンが嵌め込まれていた。
「わぁ……綺麗、これエフレムさんが作ったの?」
「はい」
淡々と答えるエフレムさんに、私は驚きすぎて気の抜けた声で返事をした。
「すごぉい……えっと、感想をいうかんじで?」
「いいえ、それはお嬢様に持っていただきたく」
「えっと……嬉しいけどいいの?」
「はい」
私が首をかしげたまま聞くと、エフレムさんは一瞬、微かに笑みを浮かべたあと、すぐさま普段のような、凛とした表情で続けた。
「なにか、不安なことがあるのだとお聞きしました…。これに嵌め込まれているのは、一見ただのアクアマリンですが、私が魔力を込めてあります。」
「え?エフレムさんそんなこともできるの?」
「宝石魔術の一種です、黒魔術のような、悪意のあるまじないを、三回だけ無効化できる魔術を付与できました。三回使ってしまっても、ある程度相手の攻撃の威力を削ぐことができます。」
あまりの高度な付与魔術に、もう一度バングルをまじまじみながら、思わず、子供のように声を上げてしまった。
「え?すごいすごい、魔道具師さんみたい。」
エフレムさんは私のその言葉に驚きつつ、はにかみながら答える。
「……ありがとうございます。」
「でもいいの?そんな、高度な技術のこもったものをもらってしまって」
首をかしげる私に、エフレムさんは優しい表情と声で答えた。
「いいんです、むしろ、お嬢様にこそ持っていてほしいのです。」
「ありがとう、エフレムさん、大事に付けますね。」
「いえ、よろこんでいただき光栄です」
そうして、その夜は、謎の安心感に包まれて、ゆっくり眠れたのだった。
「へぇ…物知りなのね、アーレンスマイヤの執事さんって」
「ねぇすごいよね」
学院で、シャロとそんな話をした後に、マオ先生に薬草園の話をしたら、杞憂だと笑うことも無く
「なるほど……それは気になるな確認しておこう」
と真摯に話を聞いてくれ、なにやらその日は少し忙しそうで、余計なことをしてしまったかと心配になったが、先生は気にしたそぶりもなく寧ろ深く頷いた。
「いや、何かあってからでは遅いし、生徒の不安を払しょくするのが教師の仕事だから、気にしなくていい」
そう静かに答える担任が、あまりにも教師のかがみすぎて、思わずしばらく固まってしまったが、どうにかして言葉を紡いだ。
「……ありがとうございます」
「ん、気にするな」
その日はもう、ただの私の杞憂や不安を、鼻で笑うことなく、受け止めてくれる周囲の環境にただただ感謝することしかできなかった。
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