ぼんやり令嬢の疑問が多い一日。
「お嬢様、多分それ、今までの心理的負担とか、不安のあまりにそう見えただけでは?」
「うーん、そうかも?」
タウンハウスに戻った私の顔色をみて、リノンはすぐさま私の異変に気づいたらしく、私を落ち着かせるべく、髪を梳かしながら、リノンは優しく問いかける。
「今日の夕食は軽めにしましょうか?」
「そうしてくれるとありがたいかなぁ。」
そうして、いつもより軽めの夕食を取ったあと、ゆっくりと入浴を済ませ、リノンによる癒しのフルコースを施され、まるで、そんな不安なんてなかったかのようにぐっすりと眠れた。
そして翌日から、ニーチェさんはいつも気遣ってくれるのだが、普段よりも、さらに私の体調や精神をより気遣ってくれるようになり、もう申し訳ない気持ちでいっぱいだった。
「本当に大丈夫ですよ?」
と投げかけてもニーチェさんは優しく笑いかける。
「いや、俺が勝手に心配してるだけだから フルルは気にしなくていいんだよ」
と返されてしまい、私はなにも言えず、ぺこぺこ頭を下げることくらいしか出来なかった。
ちなみに横でみてたアイン様は
「フルルちゃん 鬱陶しかったらいっていいのよ?」
とさも当然のようにいい放ったので、私は慌てて首を横に振った。
「いやいやいや、そんなことないです絶対」
「よかったよ。うざがられてたら俺、泣いてたよ」
安心するニーチェさんを横目に、アイン様はまたまた容赦なく続けた。
「フルルちゃんは優しいわねぇ、私だったら鬱陶しいって思っちゃうかも?」
「酷くない?」
「大丈夫です?ハンカチいります?」
「ありがとうな。フルルは優しいなぁ」
ニーチェさんは、私からハンカチを受け取り頭を撫でていると、アイン様はぽつりと呟いた。
「鬱陶しい云々は置いといて、用心するに越したことはないかもねぇ。いくら接近禁止令を侯爵家全体にかけたうえで、個人にかけても、人、一人の自由を全部奪えるわけじゃないからね」
「ですよね」
アイン様の言葉とおり、接近禁止令って、別に、そういう魔法とかをかけて行動を縛り付けるわけでもない、そもそも、自由を縛るほどの罪犯したら、刑務所行きなんだよなぁ、とぼんやりしていると、アイン様は続けた。
「追い詰められた馬鹿の方が何するかわからないじゃない?」
普段なら、猛毒だな、とすら思えるその言葉を、水のようにのみこみ、私とニーチェさんは深く納得した。
「「確かに……」」
思わず、重なった二人の声にアイン様はすこし驚きと、少しの呆れを交えながら。
「なんか二人とも最近動きが同機してきたわね……まぁ仲が悪いよりかはいいけどね?」
と答えたのだった。
……でも、アイン様の言う通り、何をしてくるかわからないのは事実だし、他人のそら似かもしれないが、あれはあれで、用心するきっかけとして、いきなりは無理だが、前向きに考えようと胸に刻みこんだ。
「ねぇ、昨日隣のクラス、マオ先生の授業だったんだけどすごかったんだって。」
「聞いた聞いた、大型の飛竜以外にも、小型のもきたんでしょう?」
「それは許可がなかなか降りないわけだよ」
そんな話がクラスで流れる中、私は思わず小さく呟いた。
「大きい竜って、小さい竜、食べちゃったりしないのかなぁ」
「……どんな疑問なんだそれ?」
「だって、虫とか共食いするし、あるのかなーって」
竜に詳しくないからこその素朴な疑問に、隣に座っていたギャラン様は、思わず笑いをかみ殺している……っていうことは、私の言ってることってかなり見当違いなのか、シャロも信じられないものを見る顔してくるし、レベッカ様も疑問符を浮かべつつ苦笑していた。
「竜の生態は、色々個体差や種族差もあるからな。その疑問は、いい着眼点だベルバニア嬢」
隣のクラスから帰ってきた先生は、珍しく私の疑問に肯定的だったが、シャロは苦々しく答える。
「マオ先生、別にいい疑問だとは思うんですけど、最初に投げかける問いにしては物騒すぎません?」
せっかく、珍しいことにマオ先生が、私の発言に対し眉間に皺を寄せなかったのに、先生は少し考えた後に
「否定できないな」
と、淡々と答えられたので、もう私は投げやりに答えた。
「だって気になるじゃないですかぁ」
「まぁ疑問を持つのはいいことだ」
うんうんと、いつもより上機嫌そうに答えるマオ先生を見て、本当に生き物が好きなんだなぁと深く感心したが、そのあと先生は何かを思い出したように言葉を吐いた。
「動物は、愛情を注げば、裏切らずに返してくれるからな……」
マオ先生のその言葉に心底同意し、先生に負けじと遠い目をして答えた。
「そうですね、人間って平気で裏切りますもんね……」
「そうだな……」
その様をみて、ギャラン様は、可哀そうなものを見るような、でも面白いなと言いたい表情を浮かべ、レベッカ様はどうしていいのか分からず戸惑い、シャロは静かに呟いた。
「すごいわ、何がすごいってどちらも否定はできないところよ」
そしてちょうど鐘がなった。
「今日は王宮に行かないの?」
シャロの疑問に、私は小さく頷いた。
「うん、今日は薬草園の管理を代わる日だから」
そう、私は、婚約破棄のために協力してくださった、ギャラン様を応援している方々との交流はまだ続いていて、もう金銭は払わなくていいと言ったのだが、払わせてくれ、と懇願されたため受け取ってはいるが、申し訳が立たないので、その会合にお菓子や飲み物を差し入れしたり、社交界で困っていたら、なんとか橋渡しをするだとか、こうやって、何かの当番を代わる等の行動をしていることを、シャロは知っているからか、とくにそこに言及しなかった。
「あぁ、そうなの?本当にくれぐれも気を付けなさいよ?」
「うんわかった、じゃあねぇ」
シャロと別れた後、汚れてもいいように、作業用の服に使いなさいと、ノージュさんからもらったメイドさん風の服に着替え、靴も、ノージュさんに、私がたまに薬、草園の管理をしてることをいったら、持ってきなさいと渡された、一見可愛いブーツにしか見えない作業靴に履き替えてから、薬草園に向かった。
「とりあえず、雑草を何とかしようかな……」
一周薬草園を見て回った後、雑草の位置をなんとなく確認し、手を翳して呟いた。
「風の戯れ」
本来の火力であれば、大木すらも一瞬で倒せる魔法なのだが、最低出力しか出せない私が、これををかけると大体の雑草は綺麗に抜けたが、まだ残っているだろう雑草を、ちまちま抜いてから、また薬草園に手を翳した。
「水の恵華」
これは本来、植物に均等に水やりするための技ではなく、水を大量に出して、相手を流し去るという攻撃用魔法なんだが、そこまで至らない私は、こうやって生活を便利にするために使っている。
本当、この程度しか使えないのに、よく私魔法学科にいるなぁと感心してしまう。多分、私をこのクラスに入れるって決めた人は、徹夜二日目とかだったんじゃないかなぁ、お願いだから、ちゃんと寝てほしい……。
そうしてあらかたの仕事が終わった後、一つの花壇から大分花が減っていることを思い出したものの、そもそも、何の花があったのかも分からないこともあり、管理の先生に報告しに行ったら先生はまず、いつも、嫌な顔をせずやってくれてありがとうと、お礼を言った後、一緒に花壇まで来てくれた。
「あぁ、ゼダの華ね」
「ゼダ?」
首をかしげる私に、先生は嫌な顔せず続けてくれた。
「えぇ、でもこれは薬草というよりかは、呪術や黒魔術の授業で使うことが多くてねぇ、ウィッチクラフトによく用いられるし、多分、授業か補習かとは思うけど」
「そうなんですか」
「とりあえず報告ありがとうね フルストゥル嬢」
「はい」
そうしてその日は学院から、オルハの迎えでそのまま帰ったものの、なぜだかずっと、ゼダの華のことが、胸に引っ掛かったままだった。
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