ぼんやり令嬢と眼帯従者はみせつけるそうです。
そんなこんなで日々が過ぎていった。
そういっても一週間程度だが、あっという間にロゼットロアでのガーデンパーティ当日になった。
そしてその日の朝、アーレンスマイヤのタウンハウスは慌ただしかった。
「うん、ドレスはいい感じですね。エマ、ヘアセットするからアクセサリー類持ってきて」
「はい、リノ姉」
「じゃあエマは、そっちからセットお願いね」
リノンの指示で、エマが小さな花の飾りが色とりどりで可愛らしい髪飾りを、丁寧に付けつつ、私のセットしにくいふわふわの髪の毛を綺麗に整えていく、姉のそんな様子を見たからなのか、オルハもそわそわしながらリノンの側に寄っていく。
「姉さん、俺は?」
「オルハは鏡持っといて」
「はいー」
そういった使用人みんなのおかげで、何とかセレスのドレスの存在感に負けない程、綺麗に整っていた。
あまりの化けっぷりに、よくある恋愛小説の主人公のようにつぶやいてみた。
「あら、これが私?」
「お嬢、そういう茶番はいいですって」
「一回やってみたかっただけだよぉ」
「お嬢様は元からお綺麗ですよ」
「そうそう、もっと笑えばみんなお嬢様のこと好きになっちゃいますよ?」
オルハを除いた二人が、よいしょよいしょと持ち上げるを超えて、もはや打ち上げる勢いなのを、嬉しさと恥ずかしさが入り混じった気持ちで聞いていた。
「それにしても珍しい色の宝石ですねこれ、こんな綺麗なミントグリーンなんてあまり見ませんよ」
リノンがテキパキとアクセサリーをつけながらふと、ペンダントをみて呟いた。
「……ぁ、これイズゥムルの魔石、ミドガルド様がくれたの」
おずおずと答えると、リノンではなくエマは驚きの声をあげた。
そういえば、エマはミドガルド様に憧れて剣術習い始めたんだっけ、エマの得意武器が太刀なのもミドガルド様の影響も強いだろうしなぁ、と驚くエマを眺める。
「えぇ、英雄姫から貰ったんですか?」
「うん、いつもありがとうって」
目をキラキラさせてるエマをみて、今度お迎えにエマもきてもらおうかな、直接会わせろなんてちょっとハードルが高すぎるし、遠くから姿だけでも見れるだろうし、とぼんやり考えている私をよそにオルハは心配そうに首を傾げた。
「……お嬢、クティノスの王子からも前なんかもらってましたよね?」
「あ、お礼に綺麗なアイオライト貰ったよ。」
あの石、結構高そうだから触るのも怖くて箱にいれっぱなしにはなってるけどもね、とこころのなかで付け足すと、オルハはじっとこちらを見ながら続けた。
「……お嬢、なんか魅了の術使ってませんよね?」
「使ってないよ、というか使えないよ」
「ですよねー」
……なんか、あっさり納得されるのもそれはそれで癪なんだよなぁ。我ながら乙女心は複雑よ……。
そんなことはおいといて、最後の微調整を終えたリノンが満面の笑みで告げた。
「さて、終わりましたよ。」
「おおー、これが私?」
「またやるんすね……」
オルハの少し冷ややかな視線を感じながら、私は堂々と答える。
「たまにはちょっとくらい、このヒロイン気分に浸らせてもらってもいいかなーと」
鏡をみて、流石エマとリノンといわんばかりのヘアメイク、あまりの変貌ぶりにオルハも頷いていた。
「まぁ 綺麗なのは認めますけど、ヒロイン気分に浸るならもうちょっと表情筋動かしましょうよ」
「ぐぅ」
あまりの正論に呻くも、オルハは全く動じずに間髪をいれずに突っ込んだ。
「ぐぅのねをそんなあっけなく出さないでください。」
そんなやり取りをオルハとしていると、アーレンスマイヤの執事であるウォーレンさんが告げる。
「フルストゥルお嬢様、お迎えがきたようです。」
「ありがとう、ウォーレンさん」
「あと お嬢様」
「ん?」
「今日は一段とお綺麗です、どうか心から楽しんできてください。」
……と、心の底からの紳士対応に私とオルハは思わず目を見合わせた。
「「いや、かっこよすぎなのでは????」」
と、品性の欠片もなく大きな声を出してしまった。
そしたら今度は伯父様が笑顔で現れた。
「おやおや うちのお姫様はかわいらしいねぇ」
とかそんな綺麗な顔で言い始めて、おいおい、いいのか?私じゃなければうっかり恋に落ちてるところですよそれ、とよくわからない抵抗をするも、やはりアーレンスマイヤの血なのか、伯父様、顔がいいなぁと感心していた。
「おはよう、フルル」
いつものように迎えにきてくれたニーチェさんは、パーティー仕様なのか、鮮やかなミントグリーンと白のストライプシャツに、淡いブラウンのオシャレなスーツを、それはもう見事に着こなしていた。
「はわぁ……」
あまりのオシャレさとスタイルの良さに放心していると、ニーチェさんは心配そうに顔を覗き込んだ。
「フルル?」
「あぁ、ごめんなさい、ニーチェさんスタイル良すぎて、そんなオシャレスーツとかアクセサリー着こなせるの流石だな、とか思ってないです」
しまった、心の声が爆速で漏れるどころか突き抜けてしまった。
ニーチェさん、引いてないかなと心配しておずおずと見上げると、少し照れてるような表情で思わず、本当に失礼なのだがかわいいな、と思ってしまった。
「おー…ありがとうな、でもフルルも似合ってるよ 可愛いし綺麗だ。」
さらりと褒めてくるのはいつものことなのだが、いつもと違う格好だからか、なんだか照れくさかったことが意外だった。
いやほら、レヴィエ様も見た目は良かったのに、ここまでドキドキしなかったし……。なんでだろう私、もしや眼帯好きなのかな?
なんて脳内で会議を開いている間に、馬車はロゼットロア侯爵家に着いた。
いつものように、ニーチェさんのエスコートで降りるのかなと思っていたら、ニーチェさんが耳元でささやいた。
「なぁ、あの方がフィリア様でいいのか?」
「えぇ……」
フィリア様のあまりのガン見っぷりに若干引きながら頷くと、ニーチェさんは、控えめに頭を下げた。
「フルル、ちょっとごめんな」
と、先に降りたと思ったら、私の腰をつかんで抱き上げ、くるりとまわしたあと優しく着地させてくれた。
正直、内心では心臓がばくばくいいすぎて、うっかり止まりかねない勢いだったが、なんとかニーチェさんの思惑に気付き、涼しい表情を、いやいつもやってますが?といわんばかりの表情を作っていると、パーティーに来ていた人々がそれぞれ好きに呟き始めた。
「まぁ、可愛いらしい」
「ねぇ、あの方ってアイン王女様の……」
「そうそう、最近婚約者候補になったとはきいたけど、あそこまでなかむつまじいなんて、ほぼ決定じゃない?」
と、きゃあきゃあ可愛らしく噂話に花を咲かせている夫人、令嬢とは真逆に、こちらから一切目を離さないフィリア様にも、偽造とはいえこのいちゃこらは目にはいったであろう。
「フルル」
「シャロ 誘ってくれてありがとねぇ」
「いいのよ それよりそれがセレスのドレス?」
シャロの何気ない問いに、周りはまたわっと騒ぎ出す。
「セレスのドレス?」
「ってことは王妃からもらったってこと?」
「ブランデンブルグ侯爵子息とは違うわよね。たしか、今まで令嬢が着てたドレスってほとんどアーレンスマイヤ伯爵の見立てでしょう?」
「ブランデンブルグってそんな落ちぶれてたのかしら?」
おーい、おいおいおい、皆様言い過ぎだって。みてみなさいよフィリア様の顔を、怒ってる超えてもはやなんか計算してるやつだよ。復讐とかの。
と思っていたせいか、めまいを起こしそうなのをニーチェさんが支えてくれた。
「ん?大丈夫か?」
「ひゃい……」
そんなやりとりをみてまた周囲は盛り上がるが、背後にヨハンナ様がきたことでそれは収まったものの、ヨハンナ様はこちらをみて微笑んだ。
「相変わらず仲がよくてお似合いね」
その言葉で、周囲はもっと花が咲いたかのように盛り上がるのだった。
「いやぁ 最初のあれがきいたみたいだな」
なんか余裕そうなニーチェさんをみて、心底やっぱ大人はすごいなぁと感心してしまったのだった。
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