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ぼんやり令嬢とひさしぶりの社交界

「フルストゥルさん、よければ持ちましょうか?」


 「あ……あぁ……ありがとうございます」


 「フルストゥルさんよければ代わりにやっておこうか」


 「あ……ありがとう……」


 この通り、ダンスの授業で先生から頼まれペアを組み続け、彼の努力の結果。


がちがちに緊張するも、問題なくエスコートできるまでに成長したバーナード様は、やたら忠犬のように、私が何か先生に頼まれごとをすると、こうやって手助けをしてくれるようになった。


その理由は

 「フルストゥルさんは、全然踊れなかった自分を、ここまで導いてくれた恩人だ。恩人に尽くすのは当たり前だろう」

 騎士のお家らしい凛々しい理由なのだが、あまりにもこう、尽くされてしまい。

なんか、授業で組んだだけにしては、すごい忠義をつくされるのは正直心苦しい……。

本当に大丈夫だよ?と答えたのだが、隣にいたシャロは


 「あれ、多分自分が納得するまで続くわよ」


 「納得してよ~逆に申し訳ないよ~」


 うなだれる私に、シャロは別に、大したことでもなんでもないといったふうに、頬杖をついた。


 「まぁ荷物持ちができたと思えば?」


 「……そう思えるのはシャロくらいよ?」


 うーん、まぁバーナード様からは悪意や、こちらを害そうとか、そういう怖いものは感じないからいいのかな?

ひとまず置いておくことにしたが、一つの懸念点があった。

 

そうそれは

 「バーナード様のことが好きな令嬢に、後ろから刺される可能性を考えたら、怖くて夜しか寝れない……」


 「寝れてんじゃない……。まぁ、でもそんな馬鹿なことをする奴、いないでしょうよ?」


 怯えている私に対して、シャロは呆れたように肩を落としながら、意味がよくわかっていない私に、解説を始めた。


 「だってフルル、王女様から愛称で呼ばれてるじゃない?つまり、王族の友人同義なのよ」


 「すごい、私いつの間にか最強の盾を持っていたんだぁ……」


 まぁ、女神だからなアイン様。

そりゃチートでも無理もない、うんうんと納得すると、シャロは胸を張った。


 「それに私もいるしね」


 「シャロぉ……好きだよぉ。」


 「はいはい知ってるわよ~」


 シャロに抱きつくとよしよし、と頭を撫でられ、これはこれで役得だとしみじみ思った矢先に、シャロは見たくない現実を突きつけた。


「てかあんた週末のパーティー来るんでしょ?」


「ははは、はは……」


 現実から離れたいあまり遠い目をしてしまった。


「フルストゥルさん 、もしかしてそれって交流会ですか?」


バーナード様の問いかけに、悲しくも頷くしかできなかった。


 交流会というのは、狩猟祭の前に、社交シーズンの始まりとして、新興派、王室派関係なく交流するための夜会。


多くの貴族らが参加する、らしいというのも私は参加したことがない。


 一応、婚約者がいたから、未来の番となるものを探すためにがんばる必要がなかったし、うちの家は、首都でのしあがろうとか思ってもないし、何だったら、売り込むものもないし、あるとしても両親かお兄様が出ればいい。


そもそも、婚約者に誘われもしてないというと、バーナード様は信じられないものを見るように、びっくりされていた。


「今まで、お前みたいな辛気臭い女が来るな、空気が悪くなるっていってくれてたから、それ口実にいかなくてよかったのに…………」


「辛気臭いって…」

 そんなことない、とやさしいバーナード様は否定してくれるが、それをこえる罵詈雑言を言われたとしったら、この人気絶するのでは、と心配から陽気な雰囲気で答えた。


「あ、大丈夫。もっとひどいことざらに言われてるし。あんま傷ついてないから・・・」


 心配をこえて、若干引いているバーナード様に、大丈夫だよーって気持ちを込めてそう返すと、何を思ったか、バーナード様は心底憐憫の意を、これでもかというくらい込めた眼差しで見つめてきた。


「フルストゥルさんが……そんな辛い思いを……」


「いやいやいや」


 そんなの日常茶飯事だったから、そんな大袈裟な顔しなくてもいいのに、と力なく笑った。


「いや 苦労してる方よ?どう考えたって」


「そうですよ、どんな理由であれ言葉の暴力で女性をいたぶるなんて許されませんよ?」


「へぇ……そうなんだぁ」


 なんかそれが通常だったから、もうなんともないや、もう終わったことだし。


「あんたねぇ~」


「う?」


「あんたは自分の価値知らなすぎ!!!王家が手放しで認めてる、由緒正しき家門の令嬢で、ここの生徒で、しかも、王女の侍女見習いってどこもほしいわよ?」


「えぇ……」


 それは親友の色眼鏡なのでは、と首を横にふるもシャロは続ける。


「それにあのバカはいざ知らず、ブランデンブルグ侯爵夫妻に、気に入られてたことも有名よ?」


「それはフィリア様がお母様と…」


 家族になりたいがための、といおうとするも、シャロの勢いの前に呆気なく閉口していると、今度はバーナード様が口を開いた。


「あぁ、騎士系の貴族の集まりのときに、ダイアン様はよく、息子の婚約者のことを褒めていたよ。物静かだがよくできた婚約者だと」


 それは初めて知ったけど、あの夫婦私に甘かったからな。

 目論みはどうであれ、よくしてもらったなぁ。


「とにかく、まぁ、あんなこともあったから男探せなんていわないけどさ。ひさしぶりの社交界なんだし、気楽に楽しんじゃえばいんじゃない?」


「楽しむ……ねぇ…」


 シャロの言葉をうけて、少し考える。

楽しむ?楽しむってどうやって?ほぼほぼ、シャロくらいしか友達いないのに…。

はっ……友達なるほど?


 とひらめいて拳をにぎり宣言した。


「とりあえず、シャロだけじゃなくて、レベッカ様とも仲良くするね」


「あー……うん……そうね」


「私はいいですけど……」


 私の宣言に対して、シャロも、レベッカ様も、なんだか腑に落ちない表情をしていたが、私にはそれですらも難しいんだもの。


 ……それに、私、婚約者様以外と夜会で踊ったこと、血の繋がった身内以外ないから、踊って楽しむのは無理無理。


とりあえず、いろんな人が来るみたいだし、来た人の格好でも観察してればいいかぁ、とのんきにしていたが、真逆の考えの人物が、帰ったらそれはそれは、にっこにこの笑顔で鎮座していた。


「見てみてフルル、今度のパーティーのドレスなんだけども」


 そう笑顔でドレスを見せびらかす伯父の手には、それはそれは綺麗なドレスがあり、思わず


「わぁ……きれい」


 と、語彙力のない返答をしてしまったものの、伯父はその反応を見て、満足げに笑うだけでとがめることはしなかった。


「まるで、アジサイが咲いてるみたいだろう?」


「うん……とても綺麗」


 クリーム色の生地を、覆い尽くすように彩られた、淡い紫と、水色のレースとフリルのグラデーションは、伯父のいう通り、アジサイのように美しいのにキツイ印象や、冷たい印象は受けず柔らかく、儚いでも可憐さもあるデザインであった。


「だろう?うちの新しいジュエリーと、ぴったりじゃないかい?」


 と、出されたダイアモンドや、アイオライト、アメジストで彩られたヘアアクセサリーと、アクアマリンのイヤリングに。

同じデザインのネックレスは、確かにアジサイや雨の雫みたいで、すごくぴったりだった。


「わーほんとだー。今度の展示会に出すやつですか?」


 と純粋に聞くも

「違う違う、フルルが着るやつだよ?あとこれが靴でね~」


 と予想外の返答をしたあと、ノリノリでたくさんの箱を空けていく伯父を、私と、エマ、オルハは


「「「いやお金の使い方えっっっぐ」」」


 と呟くことしかできなかったが、リノンだけ


「これは絶対、お嬢様に似合いますね」

 と呟いた。


「あっさっすがリノンさん、わかってるねぇ」


 二人は意気投合し最終的には肩を組んだ。


「こいつとはうまい酒が呑めそうですわ」


「はっはっはっ僕もだよカンパーイ」


 と、なんか私を出汁にして、夜遅くまで呑み明かしてたそうな。


翌日、けろっとしてたからこのふたりはすごいなぁ、と呑気に感心していたが、こんな立派なドレスをきることが、確定事項になったことが、少し恐ろしくも感じたのであった。 

いつも読んでくれてる皆様、初見の方閲覧ありがとうございます。

いいね、評価してくれる方本当にありがとうございますとてもモチベーション向上につながっております。


お暇なとき気軽な気持ちで評価、ブクマ等していただけたら幸いです。

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