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ぼんやり令嬢は微力を尽くす。

「まったくうちのお姫さんは、ごめんな」


「いえいえ 大丈夫です。」


 帰りの馬車のなか、ニーチェさんは呆れつつ謝るも、別に、何か嫌なことされたわけじゃないしなぁ、気にしなくていいのにと思いながら首を横にふった。


「というか、それどころじゃないもんな。まずはあのガキ……、じゃなくて、侯爵子息のことなんとかしないとな」


「いや もう呼びやすい言い方でいいですよ。」


 とっくに気持ちは冷めてますし、と付け加えると、ニーチェさんは何ともいえない表情になった。


「いやいや、一応初恋の相手だろ?」


「初……恋……なんですかねぇ?」


「俺に聞くのか?それ」


 ニーチェさんは、驚きながら、首をかしげる私を、不思議そうに眺めた。


「うーん、昔は仲良かったですけど、私的には、長期休みの時に遊んでくれる人程度でしたし」


「まぁ 子供だしな」


「婚約者としていろいろあげたりとか、たまーに、パーティーに同席したりしましたけど。キュンとはしなかったですね」


むしろ無様さらして、お母様に怒られないか、それだけが、気がかりでたまらなかった。

というのは、さすがに憚られ、それは省略した。


「なるほどな」


「で、学院はいったら、あれじゃないですか…………。どうやって恋をしろと?」


 学院にも男子は多くいるけれど、婚約者いるし、元々人付き合いそのものが、得意じゃないのも相まって、恋愛経験ないんだよなぁ。


「………ごめん、俺が悪かったよ。」


「え?」


何故かニーチェさんに謝られ、今日はクッキーを渡されて、さよならしたあとふと思った。


そういえば、私、ニーチェさんには何故か、緊張しないんだよなぁと。


わりと顔近づけたり、覗き込まれたり、頭撫でられたり、手を引いてもらうことはあれど、基本心配とか、やさしさからきてる行動だからか、不安とか不信はあまりない。


 …………もしかして、ニーチェさんってハチャメチャおモテになるのでは?


 それをオルハにいったら。


「俺、お嬢のそういう斜め上の発想、嫌いじゃないですよ。」


 と、なぜだか暖かい眼でいわれ、何故だとおもったが、多分、馬鹿にされてるということは解った。


「……エマどこかなぁ」


 そう呟くと、オルハは、真っ青になりながら、私を全力で引き留めた。


「待って、お嬢待ってすいませんでしたーーー。」


「オルハぁ、歯ぁ食いしばんな?」


 いつからいたのか、エマが、オルハを奥の間へ引っ張って連れていくのを、止めることなく見送った。


「いやーーーー。」


 と奥から聞こえる、姉弟のやりとりを音楽のように聞き流し、リノンは微笑む。


「お嬢様、ココアですよー。」


「ありがとう、リノン」


……まぁ、なんにせよ、久しぶりに恋愛の話のようなものもしたし、明日は、お昼休みに図書室で、恋愛小説でも借りて読もうかなぁ。


翌日の朝、オルハ曰く、暗殺者のような表情で、朝食のサンドイッチをもそもそと食べていると、エマは呟いた。


「そういえばお嬢様、私、来週から正式にお嬢様の担当になるそうです。」


「私は、エマが来てくれて嬉しいけど、本邸の方は大丈夫なの?」


 実は、私が首都にくるときに、エマも同行を望んだが、本邸の手が足らなくなるので、泣く泣く領地にいた経緯があるので、ようやくという気持ちだが、不安もあったため素直にエマに聞くと、エマは、あっけらかんとした口調で話した。


「ブランデンブルグをクビになったり、また退職金もらえるうちにもらっとけーって、やめた人らをちょいちょい雇うみたいですわ。」


「ならいいけど、大丈夫かな?うちって仇みたいなものじゃない?」


「んー、大丈夫じゃないかなー?それに、お館様のとこで、悪さなんかできないでしょ」


「確かに、お館様怒ると怖いからねぇ」


 ……そもそも、使用人の数を減らさないとやっていけないくらい、搾り取った手腕も怖いのでは?とリノンに問いかけた。


「まぁ 安い方ですよ」


 と断言し、私に甘い三人に加えて、アーレンスマイヤ勢もうんうんと頷いていた。


「そもそも、使用人にまで、こうなった顛末しられてないでしょうし。まぁ、紹介状さえあれば、どこでも働けますよ。」


「へぇ、まぁならよかったよ。」


 リノンの説明に安心してると、今度はエマが微笑んだ。


「そもそも、お嬢様に危害を加える気なんて、起こさせませんけどね?」


「起きたとしても叩き潰しますしね~」


 エマも、後に続いたオルハも、瞳には暗い炎が宿っていた。

 や、やだぁ怖いわこの姉弟………。


「いやいや、二人が強いのは解ってるけど、危ないからやめようね?」


 そう、この二人は本来、ゆくゆくは、侯爵夫人となる予定だった私の護衛もかねている。

元々、武術の才能があったことから、魔法なんて使わずともハチャメチャ強い。

それこそ、きちんと試験とか受ければ、騎士としても、いいところまでいくといわれているのだが。


「えー騎士とかめんどくさいじゃないですか、俺、長生きしたいし?」


「なるほど」


 たしかに、騎士って危ない仕事だよね、怪我がたえないって聞くし、オルハのその気持ちはわかるわかる。


 ちなみにエマ曰く。


「私みたいな美少女が、そんな男所帯のところにいったら、いろいろ危ないじゃないですか」


「たしかに、心配だわ。」


 そうよね、まぁ、女性の騎士も増えてはいるけど、やっぱり、男性が多いし、そんなとこにうちの可愛いエマが入ったら、エマを巡って争いが起きかねない。

うんうん頷くと、オルハが小さく呟いた。


「え?男側の命が…????」


「…ちょっとしばいてきますわぁ」


 およそ弟に向けるべきではない表情と、その可愛らしい見た目から、どうやってそんな力がでてるのかわからない力で、オルハは引きずられていった。


「あーーーごめんなさいねーさん」


「口は災いのもとだよオルハ~肝に銘じときなね~」


って具合に、普段、私の侍女や、侍従として、働いてくれている二人はわりとお強いけど、主人兼友人としては、心配なので暴力沙汰は止めていただきたい。


……とそこまで考えながら、今日やるべきことを不意に思い出した。


「あっそうだ。今日は恋愛小説借りるんだった。」


「どうやったら、この状況で、それを思いだすんすかお嬢。」


 「あと世界の暗器一覧みたいなのも借りたいな。」


 「何でですか」


 「いや、最近読んだ悪役令嬢もので出てきてね?カッコいいなぁって」


 「……お嬢は暗器持っちゃダメですよ?怪我しちゃうんで。」


 オルハは心配そうな声色で聞いてくるが、私は自信満々に答えた。


「持たないよ。なんも持ってなくても、体術の授業で転んでるんだから。武器なんて使えるわけないじゃない」


 えっへん、と言いたいくらい、堂々と答えた私に反して、オルハは心配そうな表情を崩さず、答えた。


「え?俺これ安心していいんすか?それとも心配したほうがいいんですか?」


「馬鹿、両方しとくに決まってるでしょ。」


 エマにそういわれ、そっかぁと納得しているうちに、学院に到着した。


 「じゃあ、いってきます二人とも、姉弟喧嘩はほどほどにね?」


 「「はぁい、お気をつけて」」


 「ありがとー」


 二人に小さく手を振ってから、しばらく歩いていると、突如後ろから衝撃を受けた。


 「フルちゃーん」


 そう可愛らしくいうのは、みんな大好きシャルル先生ことルル先生だった。

それを脳で理解してるのに、体は固まっていると、そのさらに後ろから、ルル先生によく似た風貌の、線の細い教師、チェルシー先生がやれやれという微笑を浮かべ、ルル先生を引きはがした。


 「こーら、ルル急に抱き着かない 転んだらどうするんだ」


 「ちえー」


 「先生おはようございます。」


 可愛らしくむくれるシャルル先生を、まるで飼い猫を可愛がるように撫で、チェルシー先生はこちらに話しかける。


 「フルストゥル嬢、昨日いってた授業のことなんだけど、バーナード君と組んでもらっていいかな?」


 「あぁわかりました、えっと確か新興派の騎士から手柄を立てた辺境伯のお家の方ですっけ」


 一応、クラスメイトだからその辺の情報は知っているけれど、流石に、個人個人の得手不得手までは知らなかった。


まぁ割と、新興派というか、一代でのし上がったお家出身の方々って、そういうの学ぶ機会もなければ、教え方もわからなくてっていうこと多いみたいだし、まぁ無理もないよなぁ、でもそういう生徒も見捨てない先生は立派だなぁと感心した。


 「そうそう、今は騎士も踊れるようにならないと、ほらモテないじゃん?」


 「あ、基準そこなんですねぇ……」


 「マオちゃんは踊れるよー」


 「そうだねぇ」


 「……とにかく善処します。」


 まさかのチェルシー先生の発言に、驚く暇もなく、ルル先生の平和な暴露に仲いいんだなぁとほっこりし、そう答えると、二人は猫のように人懐っこい笑顔を浮かべた。


 「「よろしくねー」」


 ・・・本当に猫みたいにすぐにどこかに行ってしまった。


「よし、がんばろ」


 とにかく、今日はダンスの授業を頑張らねば二人に頼まれたし。

 珍しい義務感で教室に向かうのであった。

いつも読んでくれてる皆様、初見の方閲覧ありがとうございます。

いいね、評価してくれる方本当にありがとうございますとてもモチベーション向上につながっております。


お暇なとき気軽な気持ちで評価、ブクマ等していただけたら幸いです。

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