神官候補生の葛藤とぼんやり令嬢の課題終了
皆様お久しぶりです
約半年更新せず申し訳ありませんでした。
理由のほう活動報告に書いてありますのでお時間あったら目を通していただけたらありがたいです。
フェオドラ・マクシミリアン子爵夫人といえば、眩い金色の髪、鋭い色合いのはずなのに優し気なアイスブルーの瞳、いつも困ったように垂れた眉が特徴的な夫人だった。
繊細で、病弱でありながらも貴族としての矜持と誇りを持った誇り高い女性。
あの貴族の中の貴族であるロゼットロア公爵夫人であるヨハンナ・ロゼットロア公爵夫人も認めるほどの人物だった。
彼女の唯一の失敗はロバート・マクシミリアンという嫌な意味で典型的な結婚したことだろう。
そういわれても仕方がないくらい、婚姻後病弱ながらも心根の明るい彼女から笑顔が消えていった。
そして花が萎れるように、あっけなく儚く散ってしまった。
彼女の死を、多くの人々が悼んだ。
それはヨハンナ夫人をはじめとした貴族だけでなく、彼女が援助していた孤児院や、神殿の人々
彼女の死後、すぐに平民の愛人を迎えたロバートには非難の眼を向けられた一方で、彼女によく似た美しく聡明な息子。
ルギオスに対して同情の眼を周囲は向けている。
向けてはいるが、あまりにも達観した彼の様子に、周囲はどこかでこの子は大丈夫だと遠巻きに見るようになってしまった。
それでも彼は真面目に、ただ真面目に母の残したものを壊されないように守っていた。
彼女が作った財産、彼女が守ろうとした恵まれない人々、マクシミリアン家の財産、名誉……そしてルギオス自身。
これからもそれらをそのまま守ろうと、清く正しくあれると本人も周囲も思っていた。
変わらないと思っていたものが少しずつルギオスの中で、ちりちりと音を立てて燃え始めていた。
「すいませんルギオス様……」
帰りの馬車内でフリッツがばつが悪そうに、表情を伺うように謝罪するもルギオスはぼんやりとしていた。
「…………」
「ルギオス様?」
まだ自分が余計なことを言ったせいでまだ怒っているのかと恐る恐るいうも、あまりにも何の感情がないその様子にいぶかしんでいると、ルギオスがぽつりとつぶやいた。
「…………似ているか?」
「はい?」
ルギオスの唐突な主語のない問いかけに、フリッツは失礼にならないくらいの声を上げた。
「……そんなに彼女はお母様に似ているか?」
彼女というのは、フルストゥル嬢のことだろう。
そこまで話したわけではなかったが、脳裏に残るフェオドラ様と重ねながら呟いた。
「え?……あぁ、なんというかあの眉もそうですけどほらフェオドラ様もまつ毛が美しかったじゃないですか?それに髪も黄金の波のようでしたし……」
困り眉に、長いまつげ、短いとはいえ癖のある羽のようにふわふわとした髪
……こうしてあげるとたしかに共通点が多いように思えた。
けれど、それより感じたものが確かにあった。
「何より雰囲気?ですかね?……こうなんと形容したらいいかわからないですけど」
「そうか」
ルギオス様は小さくそれだけ言うと、深くため息をついた。
「そういえば、お母様の瞳は青だったな」
そういったルギオス様の瞳は、どこかロバート様に似ていたのは気のせいだろうか。
いや、まさか聡明で清廉潔白なルギオス様がまさか、とフリッツは失礼なことを考えてしまったと自分を恥じた。
「あぁ、そうですねまるでサファイアのように美しかったですね」
フリッツが過去を懐かしむようにいうとルギオスは深いため息をついた。
――ルギオス、この家をお願いね――
脳裏に母のはかなげな表情と声が浮かび、それと同時にフルストゥル嬢の困ったような笑顔と自虐的な言葉が思い浮かんだ。
それと同時に彼女の深い青色の瞳と母の瞳が重なってしまい、それがなかなか焼き付いて離れてくれなかった
同時刻、学院の空き教室は放課後だというのに盛り上がっていた。
「フルルちゃーん、絵の進捗どう?」
「うーん、なんとか下絵ですかね?いやぁ竜って難しいですね」
「いや、骨格もちゃんととらえられているし迫力もある充分だろう」
数十分前、図書室から出たフルストゥルは安堵からため息をついていた。
やっぱり目の前で誰かが怒ったり怒られたりするのをみるのは心によくない。
ひとしきり深呼吸をした後、ルル先生に偶然会って事情を説明すると、あっさり空いてる教室を貸してもらい、先生も暇だったのか話し相手になってくれた。
「本当フルルちゃんって魔法以外はなんでもこなしちゃうよねぇ」
「あ、ありがとうございます?」
一応ほめてくれているしなぁと首をかしげながら答えると、マオ先生も同じような表情でつぶやいた。
「ルル、発言が危ういぞ?それにしても初めて描いたとはおもえないな……展示が終わったらもらいたいくらいだ」
「うんうん、きれいだもんねえ」
「いやいや……でもありがとうございますこれも二人のおかげです」
ルル先生が話し相手になってくれ、マオ先生が竜の骨格や生態を教えてくれたおかげだ。
一人だと煮詰まってたであろう構図や、色合いなどのアドバイスはかなり助かった。
「よかったねぇこれで芸術祭の課題おわったんじゃない?」
「はい、私はこれで終わりです」
「えらーいおつかれさまー」
ルル先生に勢いよく抱きしめられたおかげか、先生二人に褒められたおかげか、先ほど抱いた気まずい気持ちは消え去ってくれただただ上機嫌にその日は帰路につけたのだった。
ご機嫌だったそのせいか、ニーチェさんもいたら褒めてくれたかな?なんて子供みたいなことも思ってしまった。
久しぶりの更新でも読んでくださって感謝
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