ぼんやり令嬢と忍び寄る社交シーズン
長らくお待たせして申し訳ありません
そんなこんなで、若干お兄様を哀れに思いつつリーセ様に似合うドレスはどれだろうという長い思案の時間に戻った。
「綺麗……」
「あら、綺麗な色ね」
リーセ様が手に取ったドレスは優しい黄緑色で、フリルや装飾は控えめだが宝石が散りばめられているのか元々の生地の質感のせいなのかきらきらと輝いており、まるで本当に春の女神がいたらこんなドレスを着ているんじゃないかと思うようなものだった。
「絶対似合います」
「そうねぇ……じゃあアクセサリーはどうしましょうか」
「これも悩むなぁ……」
そうして、一日かけてリーセ様のドレス選びは終わった。
ちなみに後日、お兄様に聞いたら
「ねーさんが服とか選んでくれるならいーよ別に、フルルの友達なんでしょ?」
とあっけらかんとした返事だったらしい。
優しい通り越して、あまりにもカラッとした返事に感謝以前に謎の心配をしてしまったが、最近会っていないだけでお兄様はそういう人だったなぁ。
相変わらず元気みたいで安心したよ……。
……安心はしたんだけど後日、アイン様に呼ばれ、自分もあぁでもないこうでもないといわれながらドレスの着せ替えをしたのは、言わずもがなであった。
相変わらず当たり前のように上級貴族御用達の、いやそんな簡単にお目にかかれないブティックだのサロンだのたくさん来てたけど流石王族すぎない??というか私のために読んでもらってるけど私にはもったいなくない?とぽかんとしていると、ニーチェさんがやれやれと首を振った。
「全く、フルルは着せ替え人形じゃないんですよ?」
「いいじゃない似合っているんだし、ね?」
アイン様の有無を言わさない笑顔の前で、私は首を縦に素早く降った。
「あ、ありがとうございます」
しどろもどろになっている私を見てニーチェさんが、アイン様と私の間に入った。
「こらこら圧かけないの」
「ちぇー」
「いや、本当に大丈夫なんで……」
むしろこれだけいろいろしてもらって感謝しかない……。
圧倒はずっとされてるけれど、と思いながら再度感謝を述べた。
「それにしても、フルルちゃんって案外ディルフィニウム侯爵と仲がいいのねぇ」
「あぁ、割とよくしてもらってます。妹が欲しかったとよくいってくれて」
お姉ちゃんの前だから、多分、建前で言ってくれてるとは思うけど……と、調子に乗らないように自制しつつ答えると、望んだ答えではなかったのかアイン様がつまらなさそうに口を開いた。
「ふぅん、まぁそれにフルルちゃんくらいよね彼の話についていけてるのって」
「そうですかねぇ?」
首を傾げる私を見た後に、アイン様はニーチェさんの方に向き直った。
「ニーチェ、あまりわかってなかったでしょ?」
おいてけぼりだったものねーと少し意地悪そうに言うアイン様に、ニーチェさんは肩を落とした。
「いや、あんな細かい話わかりませんって……フルルはどうしてわかったんだ?」
「え?いや、そういえばそろそろリヒャルト様に会うなぁって思って色々一気に叩き込んだだけですよ。祝福のお陰で翻訳探さなくてもいいし……ほぼずるですけど」
叩き込んだとはいったものの、課題ついでにさらっとながめただけなんて言えない……。
もともと、興味があったものだからっていうのもあるけど……と思考していると、ニーチェさんは優しく頭を撫でた。
「ずるも何も、そうやって先んじて行動できるのは偉いなあ……というか祝福はずるじゃないからな?」
「ありがとうございます」
「ちぇーイチャイチャしちゃってー……でも、今度の社交シーズンは割と外国の人も多いから、フルルちゃんも忙しいかもね」
「えぇ……」
「露骨に嫌そうな顔するのやめな?」
「忙しいってことはいろんな人と話さないとじゃないですかぁ」
「まぁそうだな」
何を当たり前のことを言っているんだ?と心の底から思っているニーチェさんに私は小さく呟いた。
「早めにシャロを見つけて隠れないと……」
「その処世術に関して俺は怒ったほうがいいのか?」
「別にいいんじゃない?誰彼構わず媚びを売るよりかは貞淑でいいんじゃない?」
そう呟くアイン様の瞳には一切の光が感じられなかった。
……貴族社会って怖いんだなぁ……と、つくづく痛感するのだった。
そうしているうちに社交シーズンがすぐそこまで迫ってくるのだった。
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