ぼんやり令嬢たちは模索するようです
がっつりスランプに陥ってしまいました・・・。
「あら、あの馬車じゃない?」
「あ、そうだね」
やや重厚感すら感じさせる馬車には、ドミートリィ伯爵家の紋章が描かれており、そこから現れたのは上品なお方、その人こそドミートリィ伯爵夫人だった。
「ロゼットロア公爵令嬢、ベルバニア伯爵令嬢……今回はお世話になります」
「夫人、お久しぶりです」
「えぇ、私たちはあまり北部から出ませんから……美しくなられましたねフルストゥル様」
「ありがとうございます夫人」
相変わらず、控えめだけど美しい人だよなぁ……ドミートリィ伯爵夫人ことフェヴローニヤ様、確かにおばあ様に少し似ているような……いや、血縁者だから当たり前かと考えていると、いつの間にかシャロたちがもう先に進んでいた。
「ほらフェヴローニヤ様に見とれてないで行くわよー」
「あぁ~待ってぇ」
「あら嬉しいこと」
そうして向かったのは、まさかでもないがフロルウィッチである。
そして私たちを出迎えたのはノージュさんでも、ニーチェさんでもなく、まさかのツーイお姉ちゃんだった。
「久しぶりフルル~元気してた?」
「お姉ちゃん」
「仕事が案外早く終わってねぇ~フェヴローニヤ様もお久しぶりです」
「お久しぶり、相変わらず姉妹仲がいいみたいで見てるこっちが癒されるわ」
フェヴローニヤ様は心からそう思っているのだろう。
細められたダークグレーの瞳には、優しい光があった。
「こんなに仲がいいのになんで認知されてないのかしらね?」
「お姉ちゃんがお母様にそっくりだからじゃない?」
「やぁねぇ私はあそこまで怒りっぽくないわよ?怒りっぽすぎなのよお母様は」
……うわぁ、お母様が聞いたら顔を歪めて怒りそうな発言、私が言ったら存在意義を問うくらい詰められそうと固まってしまった。
お姉さまがこういうことを隠しもせず言えるのは、ある意味うらやましいかも?いや、陰口は褒められたものでもないかぁと首を傾げると、フェヴローニヤ様は困ったような笑顔を浮かべた。
「単にツーイ様の輿入れが早かったのと、お二人の年の差が原因じゃないでしょうか?……フルストゥル様が社交デビューする頃にはもうディルフィニウム侯爵夫人でしたし」
「確かにそうかぁ、そもそも私とフルルは10も離れてるしねぇ」
珍しいのかもねぇとお姉ちゃんが言うと、一瞬そういえばこの人私と10も違うんだった。
お姉ちゃんの若々しさでうっかり忘れてしまっていた。
えぇ~わかぁいお姉ちゃん、それに美人だし……え?こっそり国中の美女集めて血とか抜いてない?大丈夫?なんかそういうの犠牲にしてその美貌たもってない?とか、大分失礼なことを考えているうちにフロルウィッチの扉が開いた。
「待たせてしまって申し訳ございません」
「いいえ、こちらこそ人様の家の前で集まってしまって申し訳ないです」
「大丈夫です。上がってください」
そうノージュさんに促されてフロルウィッチに入るとおびただしいほどの布、布、布……ではなくドレスがあり、よく見たらアクセサリーなども揃っていた。
勿論靴もある、業者かな?何人か商人いるのかな?と疑うほどには。
いや、ここでショーでもするの?と言いたいくらいの物量に脳の処理が追い付かず、やや間抜けな顔をしてしまった。
「えぇと……これは」
「ざっくり事情は聞いていてね。」
「リヒャルト様」
落ち着いた声で優しくそう声をかけてくれたのは、リヒャルト・ディルフィニウム侯爵……暗い茶色の髪に、トパーズのような瞳は重厚でどこか落ち着きがあり、安心するような雰囲気もある。
同じ大人の男性とはいえ、ニーチェさんとはまた違った雰囲気だ。
それでいて、これだけ華やかなお姉ちゃんの側にいても見劣りしないのは流石だなぁ。
「久しぶりフルルちゃん元気そうで何より」
「ありがとうございます」
「あら?それだけ?あれだけフルルに会ったら色々話せる~って喜んでたのに」
「いやぁ事実だけどねぇ」
相変わらず仲がいいなぁと思いながら、そんな風に思ってくれているのを素直に嬉しく思い、小さく笑みがこぼれた。
「私でよければいつでも……それにしてもこの量、二人が協力してくれたんですか?」
「何せ妹の友人の社交デビューと聞いたら張り切っちゃうのが姉ってものでねぇ」
「って、ツーイが言うもんだからね。それに一介の令嬢の社交デビューにアイン様が関わってしまうと憶測が生まれるからねあくまでもクラスメイト兼友人の伝手であるっていうのが大事だからね」
「なるほど、悪目立ちしないため」
たしかにただでさえ美人なのに変な目立ち方をしたら、悪い方向の噂になってしまう。
それだけは避けたい。今までえらい大変な目に合ってるのにこれ以上辛い目にあってほしくない。
なにせこの大らかな国であるキャシャラトでも、そういうの日常茶飯事だしね……。
ちなみに私も、何もしてなくてもなにかしら言われてたしねぇ……。
傷つくほどそういうところに行ってなかったし、シャロと知り合ってからはシャロの庇護下にいるせいか変な絡み方をされることは少なくなったし、さらに言えばアイン様の庇護下にいるせいか、いつの間にか違う意味で視線を集めてしまっているんだよなぁ
攻撃されないだけいいかぁ……。
そうぼんやり考えているとシャロがいやいやと頭を振った。
「事実だけど言い方よ」
シャロのその言葉でさらに空気は和むのだった。
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