ぼんやり令嬢と従者の距離感
「人様に迷惑をかけてないでさっさと国に帰ってください、あとアシュリー様にご迷惑かけないでくださいみっともない」
冷たい表情のまま、至極当たり前なことを言った後今度はシャロが口を開いた。
「どうして男って自分から手放したものが帰ってくると思ってるのかしら?」
大げさに肩をすくめて、心の底からバカバカしいと言いたげに言い放った後に、リーセ様の方を振り返った。
「もういいの?リーセ」
「時間の無駄ですし……そうだこの後お二人とも暇ですか?気になっているお菓子屋さんがありまして」
「あら?いいじゃない行きましょう?」
話の切り替え具合と切り捨ての速さについていけず、少しぽかんとしていると二人の当然来るよね?という目線に気づいた。
「えぇっとぉ」
この場合、私はここに残って何か手伝った方がいいのか、それとも二人と一緒に去っていいのかわからずニーチェさんの方を見ると、それだけですべての意図が分かったのかニーチェさんは
「ん?今日は特に仕事ないから行ってきな?あ、お小遣いいるか?」
「完全に親戚のお兄さん過ぎません?婚約者的な甘い雰囲気皆無ですけど?」
シャロのつっこみにニーチェさんは少し困ったような、ちょっと恥ずかしそうに見える笑顔を浮かべた。
「なんかフルル見てると甘やかしたくなるんだよなぁ」
……いや、もう本当に親戚の子供扱いだよこれは……まぁ割と年の差があるからそうなるよねぇ……。
でもまぁ、いやな気はしないからいいかぁとニーチェさんに頭を下げた。
「ありがとうございます」
「うん、どーいたしまして」
「まぁ当人同士がいいならいいか……」
仲がいいならもういいよと言わんばかりにシャロはまた肩を落とした。
リーセ様もまるで小動物を見ているかのような、慈悲深い笑顔を浮かべていた。
ちなみに忘れてしまいそうだが、未だにロイエンタール皇帝は固まっていてその場から動く気配は見られない。
よし、じゃあ行こうかと和気あいあいとしていると、その和やかな空気を壊すように皇帝が声をあげた。
「待て、本当にもう、だめなのか?」
「…………」
リーセ様は口もききたくない、と瞳だけでロイエンタール皇帝にわからせたのか、微動だに出来ずにいる間にニーチェさんが手配してくれた馬車に乗った。
え?竜車じゃないのかって?案外、狭いところは馬車の方が扱いやすいし、案外竜車は一般には出回っていないからか狙われやすいんだよねぇ。
いや、普段姿を隠してるけどシャロにも護衛はいるし、私にもオルハたちがいるんだけどね?一応、念には念をと手配してくれたニーチェさんには感謝しかなかった。
そのあと、まるでロイエンタール皇帝のことなんてなぁんもなかったと言わんばかりに、お菓子屋さんに寄って課題もやって、楽しい放課後を過ごしたのだった。
一方的、王宮では
「あーあ、取りつく島もなかったなぁロイ」
「……わかってはいたさ」
あそこで縋り付いたとて、シャルロット嬢があそこまで軽蔑している以上、こてんぱんにされかねない。
むしろあの程度で
「どうして今になってまた謝罪なんて……リーセ嬢はもうとっくに新しい生活をしているというのに」
「知らなかったんだ……彼女が皇后であったころ、あそこまで尽くしてくれていただなんて」
「……はぁ、お前馬鹿なの?そんなの今更気づいたところでお前が彼女をどれだけ傷つけたかわからないのか?」
「リーセ嬢はお前の所有物じゃないんだ。いい加減にしろ気が済んだのなら早めに国に帰れ」
曲がりなりにも皇帝なんだから、とギャランは諭すように言った後、ロイエンタールはうなだれながらそのばから立ち去った。
「言い過ぎたかな?」
「いやむしろ優しい方ですよ……全くどうしてこうも爵位だの何だのあると傲慢なやつって増えるんでしょうね?」
キャシャラトを見習ってほしい、とニィリエがぽつりと漏らすとギャランは困ったような笑顔を見せた。
「俺が聞きたいよ……というかニーチェさん、いっつもフルストゥル嬢に対してあんな感じなんですか?完全に親戚のそれでしたけど」
一応、婚約者ですよね?とギャランが再確認するとニィリエはうーんと唸った。
「なんていうか……フルルのこと甘やかしたくて仕方がないんですよねぇ」
そういうニィリエの表情は、ギャランから見てもフルストゥルが可愛くて仕方がないという気持ちが伝わってきたのだった。
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