ぼんやり令嬢と冷たい一撃
ニーチェさんに案内された先はアイン様のサロンで、そこにはすべてを理解した表情でアイン様がほほ笑んでいた。
「話は大体聞いているわ」
「アイン様」
「……よかったわ話は聞いてたけど、こうして一緒に来てくれるような友人がいて」
そういいながらリーセ様の方を見てから、私とシャロを眺めてから優しい表情を浮かべた。
「ありがとうございます」
「私も同席したいところだけど、あまり第三者がいると話がややこしくなるからね」
「それなら私たちも……」
シャロと顔を見合わせていると、アイン様はゆっくりと首を振った。
「ううん、二人はいてあげて?友達がいたほうが心強いだろうし」
「ありがとうございます」
「まぁ何かあったら俺が何とかします」
「うんニィリエがいるなら安心かなギャランもいるし」
アイン様の言葉に、いや待てよ?確かにリーセ様にしたことを考えたら許す理由も何もないんだけどあまりにも多勢に無勢過ぎない?私と友人であるギャラン様はともかく、王女の右腕と国で五本の指に入るほどの影響力を持った公爵家の令嬢……。
いやもうほぼいじめなのでは???絵面がちょっとあまりよろしくないのでは?と首を傾げていると、ギャラン様が考えを読んだかのように首を横に振った。
「いや、急にきて無茶いってきたのはあっちだから、しかも単身できたからな?自分の世話もできないくせにな」
あぁ、容赦ない、いいじゃないですかもっとやれと、思っていると今度はニーチェさんがあまり見たことも無いくらい冷たい表情になっていて少し驚いた。
「もうそこまでいうなら友達やめればいいじゃあないですか?正直レイラントとの交流無くなっても痛くもかゆくも無いですよね?」
意外、ニーチェさんがここまで言うなんてと細い目をすこし開けているとギャラン様はほほ笑んだ。
「相変わらずニーチェさんは鋭いな」
「俺がああいう人間が嫌いなんですよ権力だけはある馬鹿なんて最低ですよ」
「同意です」
最後に冷たくシャロが言い放ったのを見てふと思った。
あれ?ニーチェさんとシャロが組んで、そこでギャラン様が後方支援したらできないことなんてないのでは?いやぁ敵にまわしたくないなぁ。
普段この二人によくしてもらっているせいか改めてそのことを自覚した。
そりゃ、オルハたちも驚くよなぁ……。
「いや、お嬢に友達ができたのは嬉しいけどロゼットロア公爵令嬢????」
と驚いていた理由が改めて分かった。
……あ、いけないいけない、一応戦力にならないとはいえ、私もリーセ様のことを守らねばと心の中で自分を叱咤した。
「リーセ様、大丈夫ですか?」
「えぇ、不思議と落ち着いているんですよ不思議ですね」
優しい笑みを浮かべた後に、リーセ様は首を傾げた。
「生まれ育った国にいた時よりここにいる方が安心できるんですよね……ドミートリィ家の方々もとてもよくしてくださいますし」
「あぁよかったです」
「そういえばこの前教えていただいた本とても面白かったです」
「本当ですか?今度続きをお貸ししますね」
どこかほわほわした雰囲気のまま、ギャラン様が扉を開くと此方の和やかさと反面するように冷たい空気がロイエンタール皇帝の周囲に漂っていた。
「ロイ、待たせたな」
「……イ……リーセ、久しぶり」
イブリス、と言いそうになったのだろうか?それにしても自分で会えるまで帰らないと言ったわりにどうしてこうも委縮しているんだろう?
委縮するくらいなら変なこと言ってないでレイラントにいればいいのに……と呆れていると、リーセ様も私同様なのだろう。
いつものやわらかく優しい
「…………お招きいただきありがとうございますロイエンタール皇帝」
「っ……あぁ、かけてくれ……彼女たちは?」
「私のご友人のです私のことを心配してくれて……構いませんよね?」
「も、勿論だ」
「まぁお前がダメって言える義理ないもんなぁ」
「……っぐ……そちらの方は?」
「あぁ、姉さんの秘書でそちらのフルストゥル・ベルバニア伯爵令嬢の婚約者でな?短気なお前に暴言を吐かれないか心配してな」
もはや隠す気がないほど呆れた様子を見せた後、ギャラン様は私たちに座るように促してくれた。
「まぁいいじゃないかそんな些事、ほら言い訳したいなら言えば?」
俺たち暇じゃないんだけど?とあからさまに圧をかけると、ロイエンタール皇帝はリーセ様に潔く頭を下げた。
「今まで申し訳なかった……」
「……それだけのためにこんなに他人に迷惑をかけたんですか?恥ずかしいんでやめてください」
取りつく島もないとはこのことだろうか、きっぱりと冷たい声音と表情で言い放った。
まさか許してもらえるなんて思っていたのだろうか、あぁ人間ってここまで顔から一気に血の気が引くんだなぁとのんきに眺めていると、リーセ様がとどめに入った。
「イブリス・ジークレスト・レイラントはもう死んだんです誰にも愛されず必要とされず蔑まれて殺したのは父と、貴方ですよ」
その言葉の後に、ロイエンタール皇帝は何も言えずずっと頭を下げていた。
今更頭を下げたところで、何も取り戻せないのになぁと私とシャロは冷めた表情でその様を見ていた。
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