王女と従者の相談ごと
久しぶりにあったフルストゥルの相も変わらずのぼんやり具合と、いつも通りの様子にしっかり楽しめたんだなぁという安心感、そして何よりもただ単純なうれしさからニィリエの口角が上がっているのをみて、アインはぴしゃりと言い放った。
「ニィリエ……気持ち悪い顔やめなさい」
「ひどいこと言うのやめて」
どこかコミカルなニィリエの仕草に煩わしそうに髪を払ってからアインは口を開いた。
「まぁよかったじゃない久しぶりに会えて」
ふぅと呆れた様子で頬杖をつくと、ニィリエは一度頷いた。
「まぁ、それはそうだけど……はぁ、全くマクシミリアン子爵家かぁ」
心配を煮詰めたようなため息と声に、アインも思わず同調した。
「ベルバニア伯爵家を見習ってほしいくらいよね。ジルベール様もチェーザレ様も、基本領民優先、よくバザーとかに協力してくれるし相変わらず過分な税金を納めてくれているし…………まぁ、もうちょっと王宮に顔を見せてもいいんじゃない?とはおもうんだけど」
「ルイヴィエール様もよく言ってますねぇ」
少しの沈黙の後、思いついた名案だと言わんばかりにアインは指を立てた。
「はぁ……いっそフルルちゃんここ住まわせちゃう?」
「いや、フルルの胃がすごいことになっちゃいますって慣れるまでの過程で疲れるだろうし、いやまぁ最大限のフォローはするし、なんなら家財一式全部買いそろえるし、リノンさんたちもここに住めるように手配するけど」
ほぼ一息で、長々と噛むことなく言い切るニィリエに、父親かなんかなのか?とまたまた呆れながらゆっくりと呟いた。
「過保護ねぇ……ねぇ、ニィリエもうわかってるとは思うけど」
「ロバート様、じゃなくてルギオスの方ですよね」
あまりに早い返答と、どこから出てるのか分からない程の淀んだ声にに思わず笑みをこぼしながら答えた。
「えぇ、かなりフルルちゃんのこと意識してるわね。ニィリエの話を聞くに……でもフルルちゃんは多分同情しか抱いてないけど」
なんとなくだけど、フルストゥルに向けるあの視線は、ただ利用してやろうという野心めいたものは感じず、やや熱っぽいような焦がれているようなものを感じた。
勿論、フルストゥルからルギオスから向ける視線は、同情や心配といったもので愛だの恋だの、ましてやニィリエに抱いている安心や信頼などはあまり見受けられなかった。
ちなみに弟を見てるときの表情は相変わらず、遠い目をしているけれど……。
できたらもう少し普通の顔をしてくれたらありがたいんだけどねぇ……。
「はぁああぁあああ……」
「フルルちゃん優しいものねぇ~何かしら気にかけてくれてたんじゃない?」
フルストゥルが優しいことは王宮内でもよく知られている、それこそ狩猟祭の準備期間でそれはそれはいい関係性が築けていたし、あのルイヴィエール様も「ささいなことに気が周りますし、」
「そういうところが心配すぎる……」
「そりゃ元婚約者クンも束縛強くなるわよねぇ……まぁ、何も肯定できないけど」
好きだから、心配だからと一声かけるだけでも見たところ素直なフルルちゃんのことなら、少しなら心が動いたかもしれないし動かないにしても寄り添ってくれただろうに……と考えるもつかの間、ニーチェが間髪入れずに答えた。
「いや、あれは束縛とかじゃないですけどね未だに謎じゃないですか?構ってほしくて意地悪するの範疇を超えてるしそもそも、自分のことばかりだったくせにどういう思考だったんだ……何もしなくてもフルルは何も求めず側にいてくれただろうに……」
「そこはよくてもあの家族よ?自分勝手な人間ばかりしかいないじゃない?レヴィエとうまくいったとして両親にめちゃくちゃにされてお終いよ」
どう転んでいたとしても地獄でしょ?という思いであそことの縁は断ち切って正解よと続けたあとに、軽く頭を振って笑顔を浮かべた。
「まぁフルルちゃんにはニーチェくらい世話焼きで、しっかりしてる方がいいわよ。友達の雰囲気的にも世話よく焼かれてるじゃない?」
「まぁまぁ」
それほどでもと言いたげなニーチェにアインは、口角をあげた。
「あ、でもルギオス君ももしかしたら世話焼きかもね?」
「ねぇどっちの味方なの?????」
悲鳴にも似た疑問を情けない顔で言うニーチェにアインはいい笑顔を浮かべるのであった。
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