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ぼんやり令嬢といつもの空気

「それにしても大丈夫だったか?」


 ニーチェさんの心配そうな表情と声に反して私はぐっと親指を立てて続けた。


「心折れかけました いやぁ山の天気はなんとやらってかんじで」


「雨が降ったんだなぁ」


「でも、リネン類は無事でした」


「偉いわねぇ」


 よしよし、と綺麗な手でアイン様は私を撫でてくれた。


「まぁルギオス様が迎えに来なかったら色々とお終いでしたけど……」


 私がそういうと、ニーチェさんとアイン様は顔を見合わせて固まった後、困ったようにため息を吐いた。


 「やっぱりそういうことするよねぇ~」


 「はぁ……まぁ大けがしてないならいいけど」


 「……ごめんなさい」


 流石に二人の前で、ニーチェさん以外の男性の名前を軽々しく出すのは良くなかった。

 以前なら、レヴィエ様がああいった人間だったのでこんなぽろっと出てくることは無かったのに、ニーチェさんが優しいあまりになんでもかんでもぽんぽん喋ってしまう癖が……全く、私ったら愚か者なんだから……。

 どうするの?この空気と真顔で固まっている私を見てアイン様は優しい表情を浮かべた。


 「いいのいいの、フルルちゃんは何にも悪くないからねぇ」


 「そうだぞ……というか今のは俺が大人げなかったわごめんな」


 「いえいえ、すいません」


 「フルルちゃんにしてみたら何のこと?って話よねぇ」


 「どうやらマクシミリアン子爵がフルルちゃんのこと狙っているみたいでねぇ」


 「無茶をお言いになられてないです?というか狙ってるとは?」


 「私のお気に入りであるフルルちゃんをルギオス君と婚約させようって魂胆よ」


 「……もしかして、愚かなのでは?」


 お父様云々、よりも私とニーチェさんの婚約関係を知らないはずはない。

 たとえ、あまり表舞台に出てこないとはいえアイン様が主導となって結んだこの婚約を台無しにするような真似をするのはあまりにも自分の首と胴体が離れることへの恐怖心なさすぎじゃない?

 というかそもそも……ルギオス様の意志は?


 「「正解」」


 「あぁ、なんて息ぴったり……にしてもいろいろとひどいですね」


 「そうねぇそもそもルギオス君の意志もあるでしょうに……まぁ、フルルちゃん可愛いから恋心寄せられる可能性だってあるし」


 それはないです。と即答してしまいたかったが、何せアイン様のお言葉だ。

 遮るのは不敬だと思い何とも言えない表情を浮かべていると、ニーチェさんがぽんぽんと頭を撫でてきた。


 「まぁ、とにかくマクシミリアン子爵……というかロバート様の動きには注意ってことで、フルルから見てルギオス・マクシミリアンはどう見える?」


 「どう?」


 「うーん、例えば野心に満ちあふれてるーとか?まぁ、会ったときはそんな感じはしなかったけどさ」


 「あぁ、なるほど……野心とは程遠い感じはしましたね……私が感じたのは、根は優しい人なんだろうなぁって感じですね。ロバート様とは違って権力とかには興味無さそうですし」


 「あれ?割と高評価だね」


 「まぁあくまでうわべだけの判断になっちゃうんですけどねぇ……まぁ、家でかなり苦労してるんだろうなぁとは」


 まぁそれくらい簡単に想像つくところだろうけどと思いながらいうと、アイン様は可愛く首を傾げた。


 「なるほどねぇ……なんか好意持たれたりしてる感覚とかアプローチとかはかけられてない?」


 「故意的なものはないかと……雨降った時に迎えに来てくれたのも多分親切ですし……」


 私がそういうと、アイン様はにこにこと可愛らしい笑顔のまましばらく固まって数秒後、ニーチェさんの方を振り返った。


 「…………うーん、どう思う?ニーチェ」


 「フルルが鈍いのか、はたまたあちらが本当の親切心なのか……うぅん」


 「大変ねぇ、ニーチェ」


 ニーチェさんとアイン様の会話の意味が深いところまで理解できず、首を傾げることもできず固まってしまった。


 「?」


 「まぁとりあえず、子爵の考えとルギオス君がそれにどれだけ同意しているか……も気になるかな」


 「でもあそこの親子は本当に正反対だよな。権力に目がない古参貴族なロバート様と、清廉潔白を地で行くルギオス……おそらくフェオドラ様の育て方が良かったんだろうな」


 「素晴らしい方だったんですねフェオドラ様って」


 ……きっと母親としても良い方(いい方)だったんだろうな……。

 というか、夫婦仲悪い上に父親が権力大好き?というかそういう性格の父親かぁ……。

 うちは夫婦仲ものすごく仲がいいからなぁ……。

 仲が悪い両親なんて想像もつかないけど、精神的負担はすごいだろうなぁと首を傾げて唸っているとアイン様は意外そうな表情を浮かべた。


 「あれ、わりとルギオス君に対しては悪い印象は無い感じ?」


 「無いですね……むしろ苦労してるなぁ……っていう気持ちの方が大きいかもしれませんね」


 「そう、フルルちゃんは優しいわねぇ、いい子いい子」


 アイン様に撫でられながら、あぁこれこれと思い目を閉じるのだった。

いつも読んでくれてる皆様、初見の方閲覧ありがとうございます。

いいね、評価してくれる方本当にありがとうございますとてもモチベーション向上につながっております。


お暇なとき気軽な気持ちで評価、ブクマ等していただけたら幸いです。

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