ぼんやり令嬢、久々の平和的日常と変化。
職場でコロナが出てしまいました。
しばらく忙しくなってしまうためもしかしたら投稿頻度が下がってしまうかもしれませんがご理解いただけるとありがたいです。
ご心配おかけして申し訳ありません。
「おめでとう、フルル」
「ありがとうシャロ」
ことの顛末をシャロに伝えると、まるで自分のように喜んでくれるシャロは本当に大天使。
優勝、とおもいつつ、昨日父が言ってくれた言葉を思い出した。
「そういえば、ペルシュワール法律事務所に証拠預けてくれたんだね。」
「あぁいう手合いのやつらって色んな手を使ってでも証拠を消そうとするからね。」
「えぇ……怖い」
それ裏社会すぎません?あ、でもお金積めば可能なのかも?
…………どっちにしろ怖い。
「まぁでも杞憂だったけどね」
念には念を、とウィンクするハチャメチャ可愛らしいシャロを、ありがたく眺めるのは健康にいい。
「お礼になるかわからないけど、これ良かったら写して」
「ありがと~私、古典苦手なの~」
「いいえ~」
いつもより手早くレポートを終らせ、シャロが写せる時間を確保する。
今日できるお礼は、これとお昼をご馳走するくらいだ。
もちろん、ちゃんとしたお礼は、後日用意するつもりだ。
そういえば、ギャラン様のファンの集いには、返金した方がいいのかな?
結局集めたお金は使わなかったし、むしろ証拠集めてもらっちゃったし、と会長さんに聞くと。
「いいの、いいの私らが役に立てたなら、でも解決して良かったわね」
「ありがとうございます。」
優しくそういわれ、ありがたいな、とおもった矢先に、ずずいっと顔を近づけてささやいた。
「ねぇ?解決したからって席売りやめないよね?」
「皆さんが望むならつづけますけど、さすがにもうお金はいいかな?と」
「「「いやいやいやいや」」」
素直な気持ちで伝えるも、どこにいたのか幹部さんたちや会員の皆様は、思い切り首を横に振った。
「頼むから、頼むから払わせて」
「金ならあります。」
推しに金を払わせてくれ、とすごい勢いでいわれ、後退りすると会長さんは微笑んだ。
「フルストゥル嬢、このとおり結構好評なんですよ……できたらやめないでもらいたいんだけど。」
「あ、はい」
結局、話し合いのすえというか、勢いに負け、3分の1を私が貰い、3分の2を、その集いの運営費として使うということで話は纏まった。
皆さんにも今度お礼をしないと、今日の帰りにでもあのケーキ屋さんにでも寄っていこう。
そうだ、ウィンターバルドさんにもお礼をしないと、ワインとかのがいいかなぁ。
ことがおわり、解放感でいっぱいな私とは対照的に、マオ先生はまた眉間に皺を寄せた。
「まさか……。自分の生徒がそんな思いをしてるのを見抜けなかったとは……。申し訳ない。」
なんか、こちらの方が申し訳なくなるくらい、落ち込んでいた。
「いや 大丈夫ですよ。相談しようとかしなかったのこっちですし」
「次からはちゃんと相談しなさい、心配になるから。」
「はぁい」
「そんなのんきな返事ある?」
あまりにのんきで、間延びしすぎな返事にシャルロットは突っ込むも、マオ先生はうなだれながら、スーツのポケットから二枚渡してきた。
「今日のお昼はこれでたべてきなさい、もちろんシャルロット嬢も一緒に」
そのチケットは、教師や来賓の方が使うラウンジの優待券で、なんと、これがあれば生徒だけでもラウンジに入れるのだ。
しかも、これがあれば食事代が無料らしい。
あまりのレアアイテム出現に、素直に喜んだ。
「いいんですか?やったぁ」
「私もいいんですか?」
「二人は友人だろう?一緒に行きなさい」
「ありがとうございます。」
「いやぁ、まさかマオ先生があそこまで落ち込むとは……」
「落ち込むわよ、あの人この学校でもトップはいるくらい生徒思いだもの」
確かに、わからな過ぎて虚無顔な私に根気よく教えてくれたしなぁ。
一度も匙を投げられたこともないし、時間作ってくれるし。
わからないところがわかりません、って言った時は流石にすごい困ってたけど。
「たしかに面倒見いいよねぇ、よく眉間に皺作ってるけど」
「多分作らせてるのよねぇ……」
「まぁでも、ダメな子ほどかわいいっていうじゃん?」
「ポジティブに、ネガティブなこと言うのやめなさいな」
あ、でも完璧だと可愛くないってなると、シャロは可愛くないってことになるのかな?
こんなに可愛いのにてことはそれはちょっと違うのかな?
「いま、下らないこと考えてたでしょ?」
「え?なんでわかったの?大丈夫?結婚する?」
「しないわよ~」
テンプレートと化したやりとりをしてるうちに、教師用のラウンジにたどり着くと、何て言うのだろうか、まるでちょっとした高級ホテルみたいな洗練された雰囲気と、落ちついた空気に思わず本音が漏れた。
「立派だなぁ、こんな立派なラウンジつくれるなら本棚もうちょっと改善して欲しい」
「まだいってるのそれ……」
「言うよ~」
本当に使いづらいんだわぁ……というより、あんな高いところに置かなくても良くない? ってだけなんだけどね。
あきれ顔も可愛らしいシャロを眺めていると、前方から嬉しそうに、駆け寄ってくる二つの人影があった。
「あれーシャロちゃんにフルルちゃんだ、珍しい」
「ねー珍しいね、マオちゃんがチケットくれたんでしょー?」
「昨日、家ですんごい落ち込んでたもんねー」
「ねー」
そう口々にいいながら、シャルル先生とチェルシー先生の、通称チェシャコンビは、可愛らしく首をかしげていた。
……てかそんな落ち込んでたんだ、マオ先生
「別に私は大丈夫なんだけどなぁ。」
「フルちゃん、苦労しすぎなんだよぉ~プリンたべな?」
「おいしそー」
シャルル先生に、よしよしと頭を撫でられながら、プリンを受け取り、もくもくと食べていると、それを知ってか知らずか、シャロが淡々と答えた。
「そこは同意します先生、この子はいろいろ麻痺してます」
「だよねぇ~」
「……シャロこのプリンすごい美味しいんだけど……」
「これからご飯なのによく食前に甘いの食べれるわね……」
すこし呆れたように、感心したような表情をするシャロを、納得させるべく知恵を振り絞る。
「食前薬てきなこう」
「ないない」
「でもでも卵は健康にいいんだよ?」
「へりくつ言わない」
「ぐぅ」
あまりのはしにもぼうにも、引っ掛からなさに、むくれるも、可愛らしく腕を組み澄まし顔でシャロはぼやいた。
「ぐぅのねでたじゃないの。ふつーはでないのよ」
「なかよしこよしだねぇ。」
「ねぇ かわいい、かわいい」
と、チェシャ先生たちに可愛がられつつ、なかなか食べれないラウンジのご飯も堪能することができ、心の底からマオ先生に感謝を述べた。
多分、三日間くらいは恩を忘れないであろう。
「やっぱり、王家が直接的に経営してるからか、美味しかったわね。」
「うん、本当、首都のレストランと同じくらい、美味しかった。」
「知ってた?ここって、あの名門レストランのシェフだった人が、引退してからやってるんだって。」
「そりゃ美味しいに決まってるねぇ。」
ラウンジから出てそんな話をしていると、なにやら何人かの令嬢たちがこちらに向かってきた。
ローブとリボンの色からして、上級生らしいが上に何か用があるのかな、と階段を見上げるとおずおずと声をかけられた。
「あの、フルストゥル・ベルバニア伯爵令嬢でしょうか?」
「はい……そうですけど、どうされました?顔色悪いですけど……医務室は」
顔色が悪いのは、声をかけてきた令嬢だけでなく、後ろに控えている令嬢らも青白く見える。
そういう化粧だとしても、流石に心配になるレベルだ。
「いえ、ちがくて……その」
じゃあ何なんだろう、と首をかしげるも思い当たらず、天井を見上げていると、令嬢らは一気に全員で頭を下げた。
「「レヴィエ・ブランデンブルク侯爵子息に、婚約者がいるとは知らず、申し訳ありませんでした。」」
「いや、あのぉ」
別に、好きでも何でもなかったからいいですよもう、と言おうとするも、それはシャロによって阻まれた。
「へぇ、虫がいいわねあんたたち、知らなかった。なんてほざかせないわよ?」
「……ロゼットロア公爵令嬢。」
「まぁ中には本当に知らなかった人もいるみたいだけど、少なくともチェスター男爵令嬢と、ケリー子爵令嬢にアドレアさんは知ってたうえで、さらにはフルストゥルを一緒になって侮辱してたわよね?」
おっと?証拠も証人もあるわよ?といった後シャルロットは可愛らしく、毒々しく微笑んだ。
それは私も知らない話なのだが、シャロが魔道具を出し再現魔法をかけると、出てくる出てくる、圧倒的な証拠が何個も何個も、流石にこれを見たら言い逃れできないのか、名指しされた彼女たちは固まった。
「……で、ベルバニア伯爵の仕打ちが、恐ろしくなって謝りに来たってことかしら、浅ましいわねぇ」
クスクスクスと、あえて敵意を全開のままシャロはほほ笑み、令嬢らは絶望を体現した表情をしていた。
「謝って済むなら法律なんていらないと思わない?」
そう言い切ったときに丁度、始業10分前のチャイムが鳴った。
……いやぁ、悪い顔なのにシャロはかわいいなぁ。
怒涛すぎる展開に、もうそんなことしか考えられなかった。
明日、明後日は0:00投稿となります。
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