ぼんやり令嬢は流れをかえてしまったそうです
間があいてしまって申し訳ございません。
シャロの忠告があったからか、警戒しようと頷いたからにはするつもりだったが、そもそもルギオス様と関わるときは基本班の誰かがいることが多かったせいか、何も起こらずにほとんどの日程を過ごした。
初日から怪我をしてしまったことを除けば、トラブルというトラブルもなく初めて心から学校行事を楽しむことができたといっても過言ではない。
いや、本当むしろ一年生の頃って何がありましたっけ?一学期も何がありましたっけ?という気持ちだが、この話をしたらマオ先生が少なからず悲しむので言わないでおこう。
むしろニーチェさんにも心配かけるかもなぁと思いながら、今日で最後になる焚火をみんなで囲んでいた。
「明日には首都に帰るのかぁ」
「なんか変に懐かしいような気もするなぁ」
そんな会話に頷きながら、ホットチョコレートを眺めて冷めるのをじっと眺めていると、ギャラン様が問いかけた。
「そういえば本当に足の痛みないか?」
「?大丈夫ですよ」
自分でもわかるほどあっけらかんとした表情と声に納得したのか、ならいいけど、とギャラン様は今度は視線を変えてルギオス様の方を見た。
「ルギオスがいなければ怪我が長引いてたかもな」
それはそう、と潔くそして深く頷いているとルギオス様は控えめに首を横に振った。
「いえ、大したことでは」
「謙虚だなぁ……きっと家ではいい兄なんだろうな」
「さぁ、どうなんでしょう……いいかどうかは分かりませんけど、少し距離は開いてるかもしれない」
「そういえばシャルロット嬢も兄上がいたよな?」
どういう距離感だ?とギャラン様が聞くと、確かに気になると周囲の視線ががっと集めた後に、シャロは首を傾げた後に答えた。
「どうもこうもないわよ?正直、仲の良さで言ったらフルルのところには及ばないし……仲が悪いわけでもないしねぇ、でもお互いの業務のこととかもあるから事務的な会話が多いかもね」
「業務……?」
学生なのに?と驚く声もよそにシャロは頷いた。
「うん、まぁほんの少ししか携わってないけど……サロンの経営と美容系の仕事くらいよ?」
自虐風自慢でもなんでもなく、さらっと言うシャロに男子たちはいやいやいやと首を横に振った。
「いや、結構すごいと思うけど?」
「そうかしら、あまり他の家のことってわからないのよね」
確かに言われてみれば、と周囲が納得したと同時にラフレーズ様が驚いたようにこちらを向いた。
「え?フルストゥル様ってお兄様いたんですか?」
「いますよ~」
確かに同じ学院にいないし、そもそもお姉さまとは歳離れているしなぁ……言われないと分からないものかも?
ニーチェさんが半分兄代わりみたいな感じだしなぁと考えていると、シャロが続けた。
「フルルのところは不思議な年の差よねぇ……ツーイ様とフルルは10離れてて、ジィド様とは1つしか変わらないのよねぇ」
「んーまぁ、そういうもんかなぁとしか思ってなかったからなぁ……割とお姉さまの育児が落ち着いた後、領地で色々あったみたいだしそれじゃない?」
「自分のことなのに他人事ねぇ……」
「親とあまりこういう話しないしねぇ」
そもそも、距離的に離れてるしねぇと付け加えるとシャロはため息をついた。
「いや、領地にいてもティルディア様とは喋らないでしょ?」
「そうだねぇ~」
部屋かはなれに引きこもるか、おじい様のところに行くかの選択肢が余裕でよぎるなぁ、とのほほんとしていると、驚いた表情をシャロと殿下以外は浮かべていた。
「え?そんな不仲なのか?ベルバニア嬢とティルディア様って」
「そうでもな……」
い、と言おうとしたがその言葉はシャロの一言で阻まれた。
「不仲でしょうよ」
「そうなの?」
驚く私にシャロはそうなのってねぇ、といつものようにうつむきになりながら頭を横に振るのを見てどこか他人事のように感心していると、即座にシャロが顔を上げこちらを指さした。
「じゃあ学院で何か嫌なこととかあったら誰に相談するの?」
「うーん、ニーチェさんか伯父様かリノンかなぁ……あっでもアイン様も聞いてくれるよ」
私の答えに、いやいや相談相手が豪華すぎるよという声が聞こえたがそれは確かにと頷くとシャロが続けた。
「進路のことは?」
「マオ先生とか?身内だったらお父様かおじい様かなぁ……ニーチェさんもいるし……」
そういうとさっきより間隔を狭めてシャロが続けた。
「社交界とかマナーのことは?」
「お姉さまかロクス叔母様かギーゼラ様かなぁ」
「友達付き合いでのことは?」
「リノンかなぁ?」
「勉強は?」
「基本先生に聞くかな?最近はアイン様やニーチェさんとかも教えてくれるし」
そこまで質疑応答をテンポよく返していると、シャロはやっぱりねぇと呟いた。
「やっぱりどの選択肢にもティルディア様は入ってないのねぇ」
「……言われてみれば?」
「気づいてなかったの?もー……」
「まぁだって、叩かれるのは嫌だしねぇ」
私のその言葉に、周囲の空気が一瞬で疑問と驚きに染まったのだった。
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