ぼんやり令嬢と朝の珈琲時間
ひとしきり恋バナ?のようなものをした後、いつもより疲れていたせいか転んだ反動なのかぐっすりと眠れてしまった。
こういうのって、朝まで起きてようとかそういうのが定石としてあるのでは?なにか損してるのでは?と思ったが、寝てしまったものは仕方がない。
心地いい疲労感の反動で良質な睡眠だったのか、それとも気が付いていないがいつもと寝床が違うせいで落ち着かないのか私にしては珍しく、誰に起こされるわけでもなく、不思議と早く起きてしまった。
こんなこと知ったら、いつも寝起きの私は暗殺者みたいだなんだ言ってるオルハは驚くだろうなと、思いだし笑みが零れた。
たった一日しか離れていないのにこんなことばかり考えてしまうほど、もしかしたら心細いのかも、なんて考えながら、少しだけ重い瞼をあげるために顔を洗い歯磨きをすると、やはり山だからか空気が澄んでるのか深呼吸をするとひんやりとした空気が喉を通り抜けた。
当たり前だけど使用人など誰もいないので、少し寒さを感じる中温かいものでも飲もうと、ゆっくりとリビングまで降りると視界に、綺麗な金色が目に入った。
「ルギオス様」
「フルストゥル嬢……おはようございます」
「おはようございます。早いんですね」
「いつもこの時間に起きてるので……フルストゥル嬢も早いですね」
「いや、いつもはもっと遅いんですけど……よく寝れたからですかね?」
「環境が変わるとそういうのありますね」
まるで自分もそうだと言わんばかりのルギオスのその言い方に、昨日の会話を思い出し苦労してきたんだなぁと、傲慢かもしれないが同情のような気持ちを抱いていると、ルギオス様は一瞬怪訝そうな表情を浮かべたが、それが嫌悪に変わるということはなく、そのまま会話が続いた。
「もしよければコーヒー淹れましょうか?ついでですし」
「え?いいんですか?」
「手間は変わりませんから」
「ありがとうございます……じゃあお言葉に甘えて」
そうしてやはり慣れているのかコーヒーを、まるでカフェ店員のような、もしくは喫茶店のマスターのように淡々とスムーズにいれ、目の前に温かいコーヒーを出してくれた。
「どうぞ」
「ありがとうございます。よくご自分で?」
「えぇ、作業の共に」
「作業……」
「家業の方ですね、うちは色んな事業に関わっていますから」
そういえばシャロが言っていたっけ、ルギオス様もその家業をなんこかを自分がメインになってやっているとは聞いたけど、その口ぶりから慣れてしまうほどにはこなしているんだなぁと感心してしまった。
「すごいですねぇ……」
「すごくなんて……母の業務を引き継いだだけですから」
「お母様の……」
後妻だけどエミリィ様がいるなら、エミリィ様がやるのが筋なのでは?とよぎったが、貴族社会に入ったばかりだから勝手がわからないということなのだろうか、だとしてもルギオス様の負担は大きすぎる。
私も色々と淑女教育で習ったりしていたからか、その大変さは分かっているつもりだがこれに神殿機関でのことも考えると……いや、お母様を亡くされた心の傷も癒えていないのに、仕事なげるってどんな父親?私自身、少し古風な考えがあるせいか、そもそも論、形だけとはいえ愛がないとはいえ、妻が亡くなって即座に後妻とその娘を迎えいるのって何なんだろう。
そして、その妹の世話だのなんだのばかり押し付けられるってなんなんだろう……。
苦しくないのかな?私だったら耐えられるのかなぁ……。
でもここで変に同情するのは薄っぺらい気がするしなぁとコーヒーを眺めていると、ルギオス様が口を開いた。
「大丈夫ですよ。母が存命の頃から習っていたことですし……あの女に母の仕事をめちゃくちゃにされるくらいなら自分でやる方がましです」
少しあの女という時だけ、少し表情が硬かったがそれも仕方がないよなぁと同意しつつ、そんなことより心配が勝りおもわず頷いてしまった。
「そうですか……でも、無理はしないでくださいね。体が何よりの資本ですから」
少し間をおいて、ルギオス様は一瞬目を
「……ありがとうございます。……フルストゥル嬢は、そういうことを言うなとか言わないんですね」
「部外者が何か言えることじゃないですし、ルギオス様が苦労してるのは事実ですから」
「ありがとうございます。そういうことを言ってくれる人は少ないので」
そりゃ、一般的にはそうだろうけど……人には人の事情があるんだしなにもしらないのにそういうこと言うのも違うような気がしただけなのだが、まさか感謝されるとは思わず少しぎこちない手つきでコーヒーを口に運ぶと、砂糖とミルクが入ってないせいか、苦みに驚いてしまったことにルギオス様に気づかれ無言でそれらを出されて恥ずかしくなってしまった。
「すいません」
「いえ、でも意外ですね」
その時、初めてルギオス様の表情が和らいだのを見て、この人もこんな穏やか表情するんだなぁと考えていたせいか折角もらった砂糖とミルクを入れ忘れまた口内に苦みが走った。
「うっ」
「いや、入れましょうよ……」
ルギオス様が心配そうに呟くその声が、朝の静かな空気に紛れていった。
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