ぼんやり令嬢はなんだかんだ愛されてるようです。
何とか心を落ち着けて食事の席に着くと、お母様と同じプラチナブロンドに、ダイアモンドをラベンダーで染めたように美しい瞳をした、社交界の華であるお母様の遺伝子を多く受け継いだ現・社交界の華であり、アメジストの・・・なんだっけ、薔薇だか百合だかなんかこう・・・高尚な名前で謳われている、私と10年の離れている姉。
ツィリアーデ・ベルバニア……ではなく、ツィリアーデ・ディルフィニウム侯爵夫人。
そしてもう一人、私と同じ青い髪に、青い瞳をした、凛々しいぱっとみて誰もが、好青年であると答えるであろうこの青年は、私のいっこ違いの兄で次期ベルバニア伯爵。
立派な領主となるべく、国内でも有数の騎士の学校に通いながら、父やおじい様から、領主としてのいろはも習い、領民からも将来を楽しみにされ、とても愛されている上に騎士学校でも結構上位の成績を誇る、ジィド・ベルバニアの二人は、何も功績を持たない私を、優しく出迎えてくれた。
「フルル~久しぶり」
「大変だったな」
「ツィリアーデお姉さま、ジィドお兄様お久しぶりです」
普段と変わらない二人の様子に、驚きつつ頭を下げると、ぼんやりしているように見えたのだろうか、お母様はすこし、いらだったように睨みつけてきた。
「二人ともうんと心配してたのよ?」
「ごめんなさい……」
「ティア一番つらかったのはフルストゥルだ。小言は後にしなさい」
「わかってるわよチェーザレ」
お父様が珍しく、手早くお母様を制してくれるなんて、と少し感動していると、リノンがすごい形相でお母様を睨んでいた。
リノンに、大丈夫だよぉ。という思いとともに、ほほ笑むも、その隣のオルハもエマも、これから戦地に行くのか、というほどの表情をしていた。
それを見て、私って愛されてるなぁ、と思う以前にみんな、そんな顔できたんだ……と変に感心してしまった。
「フルストゥル、玄関でも言ったが婚約は破棄となった」
「……はい」
「あぁ、フルストゥルがとっておいた証拠と証言、こちらの方で探って出てきた証拠だけでなく、ロゼットロア公爵令嬢が、ペルシュワール法律事務所に預けていたのもあって、あちらの有責でな。」
「慰謝料その他もろもろ一括で払わせるし、今まで使われてこなかった交際費、学院の学費とかも払ってもらうつもりよ」
それに付け加え、今までの私の淑女教育や、婚約者としての義務を果たしてきたことを鑑みて、相場の10倍ほどお金は払わせるそうな。
どう見積もっても侯爵家には、いや、どこの貴族であってもかなりの痛手だろう。
「……フルストゥルには申し訳ないが、レヴィエを廃嫡にすることは叶わなかったが、しばらく彼は謹慎になるだろう。そしてその理由は学院にも伝えてある。」
「廃嫡云々は正直どうでもいいです、もう関わらなくていいならそれで」
「……そうか、そして彼らには説明責任として、この婚約に関して問われた場合、正直に答える義務がある。逆に、我々も答えて大丈夫だ。そこに関しての箝口令はない。」
それは、レヴィエ様の所業を、包み隠さず言ってもいいということ。
ブランデンブルク侯爵家の、品位が損なわれる結果になるのだが、そうまでして廃嫡にしないあたりきっと、レヴィエ様は女性関係以外は優秀なのだろう。
でも、だからといって、あんな理不尽な行いに耐えれる令嬢がいるとは、なかなか思えないけれど、結果侯爵家の跡継ぎ問題になりそうだが、とそこまで考えて一度思考が止まった。
……もしかしてお父様、あえて廃嫡をさせなかったのでは?
家門の恥を捨てれないのは結構痛いはず、しかも、王妃が力をいれてる学院に知られてるのは、かなり不味いような、私の性格も理解しての結果だとしたら怖すぎる。
少しばかり寒気がしたが、それをみたお姉さまに怖かったわね、と心配されるが一番怖いのはお父様だよぉ、とは言えずに固まっていると。
「あとは法律にそって絞れるだけ絞る」
お父様は、どこかの悪の組織の参謀のように、手を組んで物々しい雰囲気で言った。
生かさず殺さずとはまさにこのことだ。
ただでさえ、私への慰謝料が法外すぎる金額を払い、規定どうりなら、私への社会的フォローもしなければなのに、家門の恥をさらし続けなければならない侯爵家が、ほんの少しだけ、気の毒に思えてしまった。
「全くバカよね、フルストゥルに、優しくしてれば王女が味方になったのに」
「あいつ、昔はそんな奴じゃなかったのになぁ」
呆れたようにつぶやく母と、まさかの友人の顛末に落胆する兄を眺めつつ、本当にただ普通に好きな人ができたり、シンプルに私とは合わないってことを相談してくれれば、ここまで咎められることはなかったのに、ともう関わらなくていい安心感から、他人事のように考えた。
なんていうか、終わればあっさりしていたなぁ。という感慨に耽っているとお兄様が、わくわくと擬音がつきそうなくらい目を輝かせて問いかけた。
「そういえばフルストゥル、王女の側仕えになったんだって?」
「ぁ、あぁはい、今日から」
そう答えると、今度はお姉さまがあらぁと優雅に首を傾げた。
「すごいわねぇ、何が目に留まったのかしら?」
「ちょこっと異国語が喋れるから……ですかね?」
「フルルは何語が喋れるっけ?」
きょとんとした顔の姉に、何時ぞや面接官の前で言ったように、淡々と説明を始めた。
「キャシャラト語と、共用語以外だと、旧レウデール語と、ガリカの共用語と、最近知ったんだけど、クティノス語とイズゥムル語もできるみたいです、私」
「……すごいな、私も読み書きはできるが喋るまではできない」
お父様は、感心したようにいうも、補足のために、今日言われた知られざる事実を付け足した。
「あぁでも今日国王様に言われました、私の目と耳には妖精の祝福があると」
「あぁ、そうだったのか」
お父様はなるほどと一息置いたのちにつぶやく。
「多分それは、読者の瞳とよばれる祝福だな。下級の祝福だが便利だし大きな代償もない」
「読者の瞳?」
「興味を持った言語や、聞いたことのある言語の読み書きが、可能になる祝福だよ」
祝福にも、細かな種類とか名前があるんだ、と驚く私をよそにお兄様は、心配そうに問いかけた。
「代償とは?」
「あぁ、初めてみた言語を覚えるときに、ちょっと魔力を消費する程度だよ。けど翻訳魔法とちがってラグもないし失うこともないから安心しなさい。」
それをきいて安心したのか、お兄様はほっと息をついた。
「祝福っていろいろあるんですね」
「今度妖精に関しての本を貸そう」
「はい、ありがとうございます。」
「……まさか、フルストゥルに祝福があるとはな、こんどツイもジィドも、鑑定を受けてもいいかもな」
お父様の呟きに、お姉さまが露骨にめんどくさそうな顔をしていたのは、見なかったことにしよう。
「まぁそれは今度にしましょう、皆疲れたでしょうもう休みましょう」
お母様の一言で解散し、自分の部屋に戻ると、エマにオルハ、そしてリノンが出迎えてくれた。
「お嬢、婚約破棄おめでとうございます。これよかったらどうぞ」
「ありがとうオルハ 私にどうしろとこの鈍器……やれと?」
そう聞くとオルハは、いい笑顔で頷いた。
いや、だめなのよそれは・・・。と思いつつ、視線を横にずらすと、エマも恭しく頭を下げた。
「お嬢様、お勤めご苦労様です。あいつ根性焼きしてきましょうか?」
「うん、私はどこぞの組織の人じゃないんだよ。あとエマが心配になるからやめようね?」
二人の気持ちは、とてもありがたいんだけどね、と断ると今度はリノンが口を開いた。
「お嬢様、お疲れ様です。今日は柑橘系の入浴剤にしましょうか?入浴後は苺のアイスとあったかいココアはどうですか?ヘアオイルはいつもより少しお高めのにしましょう」
「リノン~大好き~」
癒しのフルコースの提供に、おもわずリノンに抱き着くと、リノンは優しく抱き留めて頭を撫でてくれた。
「リノンもお嬢様が大好きですよ、よし、これから侯爵家の使用人全員酒でつぶしてきますね?」
「リノンまで?」
もう、全くみんなしてと思ったが、それだけみんなに大事にされてるのが、とても嬉しく感じた夜だった。
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