ぼんやり令嬢は隙あらば苦労を考えるようです
「……でもフルストゥル様って恋したことないんでしょう?」
「恥ずかしながらねぇ……」
ラフレーズ様の問いかけ、というより以前自分が投げかけた疑問に恋愛小説はたくさん読んでいるんですけどねぇ……。
一応世間体的に婚約者がいるのにあれこれ目移りする方が問題だろう。
……レヴィエ様はそうは思ってなかっただろうけど、少なくとも今現在、ニーチェさんに面倒をみてもらっている分際でそれはあまりにも失礼すぎる……。
一応、アイン様とニーチェさんには好きな人が出来たらいつでも言ってくれとは言われているけど……そういった人ができる兆しは一切ないんですけど……もしかして、このままいくとニーチェさん私と結婚する羽目になっちゃうのでは?ニーチェさん的にそれって大丈夫?人生設計的に大丈夫?本当に……最近会ってないけど、ちょっと今日心細くなって会いたくはなったけど別の意味で今度話し合いをした方がいいのでは?間にアイン様……は恐れ多いからマオ先生あたりに入ってもらおうかなと、固まりながらいろいろと考えていると、リーセ様が柔和な雰囲気で問いかけた。
「明確な好みが思い浮かばないなら、こういうことはされたくないなぁっていうのをあげるのは?」
リーセ様のその発言に、レベッカ様がうんうんと頷いた。
「なるほど減点方式ってやつですね?」
「そのほうがフルルはイメージしやすいかもねぇ、何て言ったってニーチェさんに非の打ちどころがなさすぎるもの」
「なるほど?ちょっと考えてみますね」
シャロもそれに頷き、本当それねぇと同意した後に、私は腕を組んでうんうんと悩んだ。
体感一時間は悩んだ気でいたが、おそらく数分後私はようやく口を開いた。
「精神的な暴力と肉体的暴力?あと罵詈雑言?あと被害妄想?あたりですかね?」
「えぇ……どんな人と婚約してたんですか?」
侯爵子息とは一応聞いていましたけどと、思わずたじろいでいるラフレーズ様に、そういえばと私は思いだしたように付け足した。
「これが全部入って尚且つ浮気?もされてましたね」
あれって浮気になるのかなぁ?恋愛感情は無かったみたいだけど、必要以上に口にすればするほど改めて、あの人えらいことしてたんだなぁと思い返していたが、ラフレーズ様の表情は真っ青になっていった。
「最悪じゃないですか……それにしてはけろっとしすぎじゃないですか?」
「んー?まぁもう会うこともありませんしねぇ」
仮に……本当に奇跡的な確率で会うことがあるとしても、色々清算はできているし、きっとお互い何の感情もなさそうだしなぁと思っていると、ラフレーズ様がため息をついていた。
「もしかしてですけど、そのせいでニィリエさんがとてもよく見えてるだけなんじゃ?」
「いやぁ、そうだとしてそれを抜きにしたとしてもニーチェさんは優しいですよ…………はぁ申し訳ない」
「情緒めちゃくちゃじゃないですか、何があったんですか話してる最中に」
「法外に優しくされてる気がして……規制とかされませんよね」
そんな法律がないのは分かっているけど、あまりにも乖離がすごくてこうやって口にすると本当にすごいことしてたんだなあの人……と驚いていると、私以上にラフレーズ様が頭を抱えていた。
「いや考えるのそこ?というよりそうは見えなかったんだけど……」
「いやぁなんででしょうねぇ」
やはり綺麗にお互いの意見も言えたし、距離も遠くなったし、色んな意味で清算したからかなぁ、とつぶやくと同時にラフレーズ様は顔をあげた。
「なんかルギオスと似てますね、苦労しているところ」
「……えぇ?うち後妻とかいないですし……母親は存命ですし、父親とそこまで確執も無いですよ?義理の妹とかいないですし……」
「そこまで具体的なことまで似てたら逆に怖いんじゃないですか?」
「それはそうですね……」
リーセ様の指摘に確かにそれもはやそれは身内になっちゃうよねぇと反省しながら、ルギオス様の境遇を考えていると同い年なのにやっぱりあまりにもルギオス様、苦労しすぎているなぁと少し同情のような気持ちを抱いてしまった。
その苦労に比べたら私の苦労ってそこまでではないのでは?となり、あれしきのことで休学までした自分が恥ずかしくなってしまったのだった。
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