ぼんやり令嬢は周辺を確認したいようです
「おぉー」
室内はアンティーク、というよりドールハウスのようなかわいさがあり一瞬、子供の頃好きだったなぁ人形遊び……と、童心に帰りかけたがそんなことをしていたら手が止まるどころじゃない。
窓を開けて軽く換気をした後、荷物を広げ、ある程度不便なく生活できそうなくらいに部屋を整えた後、リビングに戻ると、まだ他の人は荷物が多いのか、私しかおらず、暖炉を囲むようにあるソファ……ではなく、ロッキングチェアに揺られてみることにしてみた。
……いいなぁ、ロッキングチェア……おばあ様もよく暖炉の前でこうして座ってたっけなぁ。
でもこれに揺られながらよく編み物したり、コーヒー飲めたりするよなぁ。
手元が狂ったり、溢したりなんてするとこみたことないや……と、おばあ様に思いを馳せると同時に、自分には無理だろうなぁと思い、うっかりうとうとしてしまいそうになりながら、ゆっくりとロッキングチェアから降りた。
「ふぅ……危なかった」
「危なかった?」
「あ……」
その様子を見ていたのか、ルギオス様は心底、いや何が危ないんだろう?という疑問符を隠すこともない様子で、なんだか悪いことをしている気分になってしまった。
「あーいやぁそのぉ」
別に悪いことをしている訳じゃないから言い訳なんてしなくていいはずなのに、正直にゆらゆらしているうちにうっかりうとうとしてしまいそうになったなんて言えず視線を泳がせていると、二階から可愛らしい声が聞こえた。
「全く、隠居するには早すぎるんじゃない?フルル」
「シャロ、はやかったねぇ……おとと」
思わずふらつくとシャロはいつものように溜め息をついた。
「揺られすぎ……こんなことで怪我しないでよ?」
いつのまに階段を降りたシャロが、私を支えるように後ろに立ってくれ思わず手を口に当て、まるでときめいてる乙女のようなポーズを取ってしまった。
「もしかして支えてくれるってこと?」
「フルルくらいなら私でも支えられるわよ」
可愛い顔で頼りになりすぎる声でそういわれて思わずときめいてしまい声が出た。
「さすがシャロ……好きぃ」
「はいはい、ありがとありがと」
なんだか久しぶりだけれど、相変わらずなやりとりをゆっくりと集まっていた班の人たちは、あぁいつもやつといった雰囲気で見ているレベッカ様やバーナード様やギャラン様……あらあらほほえましいという表情で見ているリーセ様、それをまぁ知ってるけどと言いたげに見ている男子生徒をよそにラフレーズ様はぽかんと口を開けていた。
「えぇ……なにこれ?」
「大丈夫、すぐ慣れますよ」
戸惑うラフレーズ様に、レベッカ様が涼しい笑みを浮かべてそれにこたえるが、ラフレーズ様の疑問符は消えることなく彼女は首を傾げた。
「大丈夫って、何が?」
「言われてみれば?まぁ、何にせよいつものことなんで」
「えぇ?」
そこはスルーするんだ……と少し呆然とした後に班全員でコテージ、コテージ周囲の確認をしようと各々動き始め、自然と男女で別れると思ったが、ラフレーズ様がギャラン様から離れるそぶりが見えず、明らかに困っているなぁ……。
アイン様にも、弟を助けてやってね?まぁ、あの子何でもできるけど……って言われたし、どうにかしないと、と思いおずおずと口を開いた。
「裏手の小屋に猟銃とかあるみたいなんですけど見に行きません?」
「お、旧式のとかあるかなぁ」
「あってもお前には使えないだろ」
私のその一言に男子生徒は食いついてくれ、レベッカ様もいいですねと言ったところでなし崩し的に全員で小屋にいく流れになり、
ギャラン様は心底助かったと言わんばかりにほっと息を吐いているのを見るに、余計なお世話ではなかったらしい。
その証拠に通りがかりに小声で
「助かったありがとう」
と、言ってきたことが何よりの証拠だろう。
「いえ」
アイン様に言われたからというのもあるけど、いつも授業でわからないところとか、こっそり教えてもらってるしなぁというあまりにも小さすぎる恩返しだったが、役に立てたならよかったなぁと思い。みんなの後ろにゆっくりと続こうとし、自分が一番最後尾だと思っていたが、ちらりと後ろを見るとルギオス様がぽつんと立っており、まさか自分の後ろに人がいるとは思わず、少し驚いてしまった。
「ルギオス様?」
「あ、すいません少しぼんやりしていて」
「移動長かったですしねぇ」
私は結構、帰省の時とか長い距離を行き来しているから慣れているけれど、慣れてないと辛いよなぁ……と、そこまで考えてそういえばとポケットから薬を取り出した。
「あ、よかったら……これどうぞ吐き気とか倦怠感にきくんですよ」
「……ありがとうございます」
「あ、安心してください王宮から貰ったやつなので安全ですし効能は確かです」
「王宮?」
「えぇ、ニーチェさんがくれたんです。心配だからって」
……もはや、本当にお兄様より兄なんだよなぁと言いながら少し天井を見つめていると、ルギオス様がぽつりとつぶやいた。
「仲がいいんですね」
「まぁほぼ私がお世話されてるだけですけどね……」
そう呟いた後、ようやく私たちも班と合流した。
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