ぼんやり令嬢は到着後、悟るようです
最終確認も終わり、先生の指示にしたがい各々竜車に乗ろうとしたその時だった。
「それにしても、大きい竜ですね」
「あぁ、リーセはあまり見たことないかもね?北部にはほとんどいないでしょう?」
「そうですねぇ」
シャロとリーセ様のやり取りを、わかるーという思いで聞いていると、それが聞こえていたらしいマオ先生が解説を始めようとしたその時、ルル先生が
「はーい、マオちゃん長い話はみんなが乗ってからにしようねぇ」と、背中をぐいぐいと押されていた。
あぶなー……我らが担任、マオ先生、生き物のことになると話長いからなぁと一命をとりとめた気持になりながら、竜車に乗ろうとしたらずっと座っていたせいか少しふらついてしまった。
あ、これは転ぶかも……と思ったその瞬間、痛みではなく何やらちょっと硬い?けど温かい?と思って振り返ると、何とルギオス様が支えてくれていた。
「大丈夫ですか?」
「ごめんなさい、ありがとうございます……あの……」
「はい?」
何も考えていないのか、真顔のルギオス様におずおずと問いかけた。
「重くなかったですか?」
「いえ、心配になるくらい軽かったですけど」
「そんなに?」
「えぇ、ちゃんと食べてますか?」
レヴィエ様との決別後、わりと毎日健やかに過ごしているし、たまーにケーキ二つ食べちゃう日もあるのに?と一瞬よぎったが、あぁこれが噂のお世辞というやつなのでは?と気づき、我に返った。
「あー、食べてます本当にすいません」
なんだかちょっとでも色々と考えてしまった自分が恥ずかしいという思いで、頭を下げたまま竜車に乗った。
あー、恥ずかしい恥ずかしい……。
「遅かったわね」
「いやぁ、ちょっとこけましてねぇ」
シャロの声掛けに気恥ずかしさからへこへこと頭をさげると、全くもう仕方がないという表情でこちらを見た後にすぐに眉を下げた。
「怪我してない?」
「見ての通り~」
ならよかった、とシャロに頭をポンポンとされている間に、ルギオス様、ラフレーズ様も竜車に乗り、点呼の後ゆっくりと進み始めた。
「なぁ、カードゲームしない?」
「殿下、実はちょっとはしゃいでません?」
「馬鹿言うな、かなりはしゃいでるに決まってるだろ」
あぁ、そうなんだぁ、よかったねぇとアイン様の影響か、どこか親戚のような気持ちでギャラン様とクラスメイト達のやり取りを流して聞いた後に、正面のシャロの方へ視線を戻した。
「まぁ、好きよねぇ男子はあぁいうの」
「ですよねぇ」
と、もはやその輪の中心が殿下であることが分かりきっているのか、シャロもレベッカ様もそこには触れずにいるのを見ると、なるほど殿下のはしゃぎっぷりは今に始まったことではないんだなぁという気持ちになりながら、リノンが淹れてくれたお茶をゆっくりと飲み始めるとリーセ様が心底心配そうに表情を歪めた。
「でも、フルストゥル様、先ほどのこともありますし気を付けてくださいね」
「いやぁ本当に気を付けないとなぁ……」
ぼーっと天井を見ながらそう呟くと、今度はシャロがううんと唸った。
「意外とこれでいて包丁で指切ったりとかはあんましないのが不思議よねぇ」
「えぇ、本当に」
そこにレベッカ様も合流してしまい、思わず目を瞑ってぼやいてしまった。
「褒められてないことは確実に分かるけど普段が普段過ぎて、何も言えないや……」
「反省しなさいね」
「うん……気を付けるね」
本当に気を付けるね……と、こぼすと近くにいたラフレーズ様が大きくため息をついて聞こえるように口を開いた。
「いや、何で行く前から反省会モード何ですか」
やめてくださいよと言われ、じゃあどうしろと?と思いながら視線をゆっくり窓の方へ向けると、段々と建物と建物の感覚が広くなっていくなぁ、とか、ちらりと童話に出てきそうな可愛らしい町があったりだとか、そんな発見をしつつ、リーセ様が作ってきたクッキーをつまみながらたわいもない話をしているうちにだんだんと今回の課外授業で使う、広大な土地を目の前にして思わず口から出た言葉は
「うちの学校、お金あるんだなぁ……」
「到着していう言葉それか?」
この言葉には流石のマオ先生もがっくりと肩を落とし呟くが、その直後におそらくチェチェ先生がにっこりと答えた。
「まぁあるからね実際」
「ですよねぇ~」
「はぁ、まぁいい各々のコテージにいって荷物を置いてくるように……あと」
マオ先生がそういうと、各々指定されたコテージに向かおうとすると、マオ先生は申し訳なさそうな表情を浮かべ、それを見て嫌な予感がしたのは私だけではないらしくシャロは眉を顰め、レベッカ様は何かを悟ったかのように両目を閉じた。
私はとりあえず、リーセ様から貰ったレモン味の飴を口の中で転がすことしかできなかった。
「ラフレーズ嬢とルギオス氏は、一応班としてどこかに所属して何か係を持つことはないが、初日はこの班で行動してもらうことになる」
「はぁ、そんな気はしていました。私と殿下がいるからですよね」
「あぁ、あと二人と教師陣で泊まる予定だったんだが、それでは生徒との交流にならないと機関からあってな」
マオ先生にそういわれると納得するほかないなぁ、と思ったが以外にもシャロもギャラン様もそれは予想できていたようで、すっと切り替えていたのは流石だなぁと思いながら荷物をまとめてコテージへと向かうのだった。
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