ぼんやり令嬢と神官候補生たちの隙間時間
ニーチェさんが言った通りに、私の噂とか悪評とかはまるで最初からなかったかのようにさらさらと流れていった。
いやぁ、すごいね……今まで私のことを睨んできた人たちの存在すらもなかったように感じる……。
まぁ、そろそろ課外授業だし、問題が解決したことはいいことかな?とややのんびりした気持ちになりながらも、普段の生活に戻っていった。
私の噂が消えたとて、当たり前だがラフレーズ様の人気が全くなくなるわけではないし、彼女の美貌が消えるわけでもないのでそこの生活もあまり変わらないが、ラフレーズ様はシャロやレベッカ様がいないタイミングで色々と聞いてくるようになった。
それは以前のような人の神経をやや逆撫でするような質問ではなく、ただ単に疑問を聞くような形のものだった。
「フルストゥル様とアイン王女ってどう知り合ったんですか?」
そういえば、アイン様と知り合って、まだ一年も経ってないんだなぁと思い返しながら事のいきさつをさらっと話すとラフレーズ様は小さい声で呟く。
「たったそれだけの特技で?」
と驚いており、それに私も確かにと頷いていると、ラフレーズ様があ……という顔をしているのに気づいた。
以前の忠告を思い出したらしい。
どうやら思っていることが嫌みなく出てしまう質らしい、確かにマナーに厳しいシャロやレベッカ様がいたら眉を顰めるかもなぁ……。
現にリーセ様、少し瞼が動いていたし……と思いながら、まぁ治癒魔法使える人少ないしなぁ~という気持ちになり思わず本音が漏れた。
「まぁ、運がよかったんですよ、婚約者からの扱いがアレだった分」
と、少しコミカルに言うとラフレーズ様が、えぇ?という表情を浮かべた。
「自分で言うの虚しくないんですか?」
「事実ですしねぇ」
あと終わった話ですしねぇ~、一年以内の話ですけれども~と考えている間にまたまたラフレーズ様は問いかけた。
「…………フルストゥル様とギャラハッド殿下って親交あるんですか?あぁ、あとシャルロット様と殿下って幼いころからの親交って……」
気を使って会話を変えてくれたのかなぁとか思いながらそういえばそこはどうなんだろう?と思いながら私が首を傾げ続けた。
「うぅーん?どうなんでしょう確かにシャロは公爵令嬢ですし、多少はあるんじゃないんですか?あぁいつも見る人だなぁくらいにはあったんじゃないですか?」
そもそも、私があまりその辺に興味がなくて聞いてないのも貴族令嬢としてどうなの?とは思うんだけれど、うちみたいな地方貴族が王族に見初められようだとかあまりにも恐れ多すぎる……。
正直、雲の上の存在だしなぁ~とぽやぽや考えているとラフレーズ様は、ふむと考えこんだ。
「流石にそこまでは分からないか……」
「お力になれず……デビュタントくらいしか王都にめったに来なかったんで……来てもブランデンブルグのお屋敷くらいしか行きませんでしたし」
気力もありませんでしたし……と付け加えると、ラフレーズ様はまたまた、あぁ……と同情的な視線を向けてきた。
「貴族って華やかなだけじゃないんですね……」
「いやいや、どこもこんなもんですよ」
隣の芝はなんとやらってやつですよ、と付け加えるとラフレーズ様は夢がないなぁ……と小さく呟いていた。
そんな様子を見ていたルギオス様からは
「なにか迷惑をかけられてはないですか?」
「嫌なことがあったらすぐいってください」
と、ことあるごとに心配してくれたが、ラフレーズ様は以前の忠告が少しはきいたのか私があまりいい情報源じゃないからかあっさりと引き下がってくれるからあまり苦労らしい苦労はしていないと答えると、ルギオス様はほっとした表情を浮かべていた。
「私のことは大丈夫です。それよりルギオス様もなにかあったらいってくださいね?」
人様の親をとやかくいうのは憚れるけれど、ルギオス様がしっかりしすぎている分……いや、しっかりせざる得なかった分を考えると、流石に心配になってしまうのだった。
「……ありがとうございます」
「いえいえ、まだ何もしてないですし」
律儀だなぁ~と、つくづく真面目なルギオス様に感心するのだった。
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