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ぼんやり令嬢の腹心は安心するようです

「へぇ、嫉妬心から侯爵家をめちゃくちゃにしたって?本当なら、私たち平民なんて木っ端みじんにされちゃうね」


 リノンが、怖い怖いとすこし大げさに言うと男は大きく同意した。


「だよなぁ……いやぁ女の嫉妬は怖いねぇ……流石、王女のお気に入りそれくらいできないとなぁ」


 ……一生、何もしゃべれない口にしてやろうか?やろうと思えばできるんだぞ?いいのか?とやや物騒な思想を、酒で強引に流し会話の流れを切らさないように頷いた。


「でもさぁおかしくないか?」


「何が?」


「だって、それって狩猟祭ごろの話だろ?それが何で今更蒸し返されてるんだろうなって……というか、それだけで魔女呼ばわりは流石に突拍子ないような?」


「いわれてみれば?でもまぁ俺も人づてだしなぁ」


 言った本人のあっけらんかんとしている様子に


 「どこから聞いたんだよ全く、お前は変な話ばっかり仕入れてくるんだから……」


 「それはな……」


 

 そうして、男が言っていた貴族まわりの業者や、平民、貴族すべての名前を覚え、リノンはフルストゥルのことを言われた二人を腹いせに、酒でつぶし

 颯爽と帰路に就いた。



 「……新興派だけだと思ってたんだけどなぁ」


 まさか、神殿に深くかかわりがある貴族や平民にまで噂が回っているとは……と目頭を押さえながら眠りにつき、翌日ペルシュワール法律事務所へ行くとお館様が言った通り、ニィリエ・ハイルガーデンがそこにいた。


「わざわざ来ていただいてありがとうございます」


「いえ、お嬢様の為ですから」

 

 リノンがそういうと、それを後ろで聞いていたウィンターバルドは、ふむと不思議そうに首を傾げた。


 「前から不思議に思っていたんだけれど……君をはじめ、オルハ君やエマさんも物凄くフルストゥル嬢を大切にしているよね。俺も仕事柄色んな貴族や使用人をみているけど……君たちほど忠誠心をもって仕えているところは少数派だね」


 「忠誠心……ですか……奥様からは過保護だと言われますけど」


 何もない天井を見てそういうリノンに、ニーチェは前かがみになりながら即座に、ややかぶせ気味に頷いた。


 「確かに……」


 「こらニーチェ」


 流石に失礼だろうとウィンターバルドは諫めるが、リノンは気にした様子を一切見せずに出されたコーヒーを一口飲んだ後に頷いた。


 「いえ、大丈夫です……まぁ自覚はありますけど」


 「あったんだ……」


 「もうお前は本当に……」


 親子同然な二人の様子にリノンはほほえましさを


 「ふふ……まぁ私は半分、お嬢様の親代わりみたいなところもありますし、エマとオルハは年が近いから昔から遊び相手になってましたし……何よりお嬢様は感情の起伏が浅い上に、あまりご自分の感情をおざなりにしてしまうところがあるのでついつい構いすぎてしまうんですよね。あと奥様のこともありますしね」


 「……夫人とフルルって昔からああなのか?」


 ニーチェの何か言いたげな視線に、リノンは同意と言わんばかりに目を伏せた。


 「性格と考えがあわないんでしょうね。お嬢様の性格はお館様に似てますから」


 「それじゃあ合うんじゃあ……」


 ウィンターバルドがそういうも、リノンが首を横に振るのを見て、ニーチェは何かを察したように口を開いた。


 「女は明るく華やかに社交的であるべきっていう固定概念が染みついている感じ?」


 「そうですね……奥様のお陰でベルバニア領が豊かになったのは事実です。現に、奥様似であるツーイ様もディルフィニウム侯爵家で活躍されてます。何より妃殿下がその最たる例でしょう……だからこそ内向的なお嬢様が何かと目について仕方がない様子なのは昔からでした。」


 「チェーザレ様は?それについて何も?」


 「いえ、お館様は何度も奥様を諫めていました……ですが、ブランデンブルグとの婚約が決まってしまい。お嬢様は幼いころから侯爵夫人になるべく教育を受けていたのです」


 その中でも衝突、否一方的な叱責は多く、お館様だけでなく、前領主夫妻がでてくるくらいことは大きくなりお嬢様はより一層、奥様に恐怖心を感じるようになってしまった。

 それでも離縁という選択肢が出なかったのは、お館様が奥様を愛していることだけでなく、奥様の生家であるアーレンスマイヤがもたらした恩恵が大きすぎることもあったのだろうと、今になってわかる。

 ベルバニアを豊かにしてくれた奥様は、お館様ほどではないが慕われている。

 けれど、領民には漏れずともそれを間近で見ていた私たちは、どうしてもお嬢様に甘くなってしまう。


 それすら見抜いたかのように、またニーチェは頷いた。

 

 「苦労してるんだな昔から」


 「お嬢様は自覚が全く無いですが……」


 がっくりと肩を落とすニーチェとリノンの様子を見て、ウィンターバルドは何か思うところがあるように首を傾げた。


 「よくまぁ、あそこまで穏やかに育ったよなぁ……って話がそれたな調査ありがとうリノンさん」


 「いえ……ニィリエ様は、どうしてお嬢様のためにここまでしてくれるんですか?婚約者とはいえ仮ですし……」


 「確かに付き合いは短いからあまり信用されてないかもだけど……大事に思ってるからだよ」


 そう即答するニーチェを見て、リノンは心から安心したのであった。

いつも読んでくれてる皆様、初見の方閲覧ありがとうございます。

いいね、評価してくれる方本当にありがとうございますとてもモチベーション向上につながっております。


お暇なとき気軽な気持ちで評価、ブクマ等していただけたら幸いです。

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