ぼんやり令嬢といつのまにか終わっていた話
「マクシミリアン子爵のご子息と同じクラスらしいが大丈夫か?」
「あぁ、ルギオス様ですか?えぇ、真面目な方ですよ?」
先ほど、マクシミリアン子爵に言ったままの方ですと付け加えると、お父様はほっとした表情を浮かべていた。
「そうか、ならよかった。でも学院でなにかあったらすぐ言ってほしい」
「はい」
あのやりとりを見て、私がお父様の立場だったら同じことを言うだろうなぁと納得していると、お父様は珍しく続けた。
「あと、ドミニオン伯爵令嬢とはどうだ?今日王宮で色々聞いたから心配でな」
「あー、うーん、まぁ自分をしっかり持っている方って感じですかね?」
「……なるほど」
なるべく、オブラートに包んだつもりだったが私の言葉から何か察したのかお父様は頭を抱えた。
「嫌なこととかされてないか?」
「うーん、怒ったり困るようなことはあまり?」
確かに、一般生徒からにらまれることはあったけど、レベッカ様のお陰でだいぶそれは減ったし、アイリナ様との一件で遠巻きに見られるだけで実害もないしなぁ……と首を傾げていると、お父様も首を傾げた。
「ならいいのか?いや……」
そんなことより、という思いで手をポンと叩いて答えた。
「あ、ラフレーズ様といえば、あそこまで見事な治癒術初めて見ました」
「そうか……よかったな……」
その表情はどこかニーチェさんのような雰囲気を感じ……いやまて?私、ニーチェさんに娘のように思われている可能性ない?なんか会うたびに心配されてるし……。
今度、いつも送っているものとは別に感謝の品送らなきゃ……と思案していると、お父様はほっと胸を撫で下ろした。
「ドミニオン家も何かあるんですか?そこまでこちらに悪い感情を持ってるようには…」
ドミニオン家も確かに神殿よりの家系で、中央貴族よりの思想だけれど、という思考を読み取ったらしいお父様は首を横に振り、どこか呆れたように呟いた。
「そういうのではなくてな、本当に今日聞いただけなんだ……が……」
「どうやら令嬢を殿下の婚約者に……と思ってるようでな」
「ラフレーズ様を?婚約者に?」
それって、そもそも可能なの?
基本的に婚約者は侯爵、もしくは公爵令嬢から……さらにいったら隣国の王族や貴族であることが多いから失念してたけど、どうやらお父様がいうには、選ぶ権限はあくまでギャラン様にあるからこちらからはなんとも……といった感じらしい。
あまりにも自由、でもそれがキャシャラトといわれれば納得してしまう。
なにより、陛下だったらそういうだろうなぁ……笑顔で、と謎の確信をした後に、ラフレーズ様の性格や、学院でのギャラン様の様子を鑑みても、ギャラン様の婚約者になるの厳しいんじゃないかなぁ……と思ってしまう。
だって、たまにギャラン様、ラフレーズ様に絡まれてるときこっちに助けてって視線送ってくるくらいだし……。
うーん、人の恋路を応援したいというのが私の基本スタンスだけど、ラフレーズ様の妙な魔力も気になるし……そもそも、あそこまで強引なのはあまりみてて少し引いてしまうし……。
腕を組んで考えていると、お父様もため息交じりに答えた。
「全く、どうして神殿とかかわりが深い家はこうも……」
「まぁ、うちが無欲すぎるだけですよ」
そういうものか、とお父様は頷いた後に眉間を押さえて深い深いため息をついた。
「……一般生徒には彼女の熱狂的なファンも多いしな、あぁフルストゥルに妙なあだ名をつけた奴らは処理したからな」
「……うん????」
「いやぁ流石だなニィリエ君は」
「……うん????」
どうやら、知らないうちに何かが始まり何かが終わったことを知り思わずパンフレットを落としかけてしまった。
いやいや、仕事としても早すぎるしいつの間に二人は連絡を取ってたんですか?と聞きたかったが、心とは逆に口をぱくぱくさせるので精いっぱいだった。
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