ぼんやり令嬢と応急処置
その後、シャロの言うとおりほとんどが課外授業に関することだった。
「はじめて猟銃持ちました。」
狩猟と自衛のためにある猟銃、及び弓での狩猟の仕方の講義のあと、帰りの廊下で目をキラキラさせながら言うリーセ様の何と可愛いことか……でも確かに重いよなぁと思い同意した。
「重いですよねぇ」
「言う割にはフルル、慣れてる手つきだったけど?」
前から弓が得意なのは知っていたけれど……とシャロが呟くが、私は首を横に振った。
そもそも弓もお遊び程度だし……。
「いやいやレベッカ様に比べたら全然……止まってる的にしか当てられないし装填とかあそこまで早くできないですよ」
そもそも動いてるものにあてたことがないっていう……役に立つの?それ?っていう所なのだがレベッカ様はほほ笑んでくれた。
「いや、フルストゥル様も手慣れてましたよ?」
「いやいや……」
レベッカ様と比べると子供のお遊びよ?といいながらも口元が緩まないように注意した。
「まぁでも使い方が分かっている方が多い方がいいですから……というか、シャルロット様もかなり上手でしたけど、逆に何で狩猟祭にでなかったんですか?」
「確かに、なんで?」
「別に特に好きじゃないからだけど?」
さらっと言えちゃうところ相変わらずかっこいいなぁ~。
これで何でもできちゃうの流石にかっこよすぎるなぁと感心していると、他のクラスの男子が使っている演習場のほうが何やら騒がしく感じ、視線を向けると意識もそちらに向いたせいか声がよく聞こえてきた。
「うわ……派手にやったなぁ」
「たてるか?」
「いててて…」
その声と会話の内容から怪我でもしたのかな?と少し心配になったのは私だけじゃなかったらしく、レベッカ様がまず見に行くとあっさりと呟いた。
「結構血が出てますねぇ、肉までいってません?」
レベッカ様がそういった怪我は、右腕に何か刺さったのか、ひっかけたのかそこそこ痛そうな怪我だった。
しれっと結構衝撃的なことを言ったせいか男子生徒たちはみるみる顔を真っ青になったが、あまりにも可哀そうに思ってしまい、まるで子供あやすみたいに笑って答えた。
「まぁ大丈夫ですよ…こういう怪我は見た目に比べたら大したことがないのが多いんで」
そんな怪我した人見た訳じゃないし、医学とかに精通してるわけではないけど……と付け足した後にうずくまってる生徒同様、かがんでからさらに続けた。
「ちょっと染みるかもですけど洗いますね。とりあえずレベッカ様、養護教諭の方かクリスティーナ先生呼んでもらっていいですか?」
「わかりました」
そういうとレベッカ様はどういう仕組みでそんな早く歩けるんだろう……と聞きたくなるほど足早に校舎へ行ってくれた。
今度はシャロがリーセ様の手を引いて答えた。
「じゃあ私たちは次の授業の支度やっておくわね?あと先生に事情も説明しておくわ」
「え?シャルロット様治癒は?」
シンプルな疑問を口にするリーセ様にシャロは恥ずかしがらず、どうどうと答えた。
「あー無理よ?私、魔力多いけど攻撃特化だし、こういうのは適材適所よ」
そんなことよりも何とかしないと、と秘儀……でもない丁度ほしい量の水を出す程度の魔法で傷口を洗い流すと、傷口はやや深く若干肉まで行くのかな?行かないかな?具合でいや、これは痛いだろうなぁ……と思っていると、やっぱり染みるのか顔をゆがめるのを横目に、いつもポケットに入っている少し大きめのハンカチで止血したが、結構血が出ているのだろう、アイボリーの生地がじわじわと赤く染まっていった。
……ここまで赤いと元から赤いといってもばれないのでは?と思ったがいやいやそれで誰が得するんだ?とすぐさま正気に戻った。
「とりあえず応急手当はこんな感じで……あと先生がくるまでは安静に……」
「そうですね」
「あのハンカチ……すいません綺麗な刺繍だったのに……俺みたいな平民のせいで……」
しゅん、とうなだれる男子生徒の言葉を聞いて、初めて一般生徒であることに気づいたし、怪我してるときにそんなこと気にしなくていいよ大丈夫だよ別に、と思い首を横に振った。
「いやいいですよ別に、たかだかハンカチ一枚でどーこーなるわけでもないですし、予備ありますし……ちょっと上からぐっと力入れたほうがいいかもしれないです」
「ありがとうございます。」
「そろそろ、先生がくると思いますよ」
だから安心してくださいと言おうとしたら駆け足が聞こえ、よし先生がきたんだなと顔をあげたら鮮やかな赤い髪が目に入った。
「ラフレーズ様」
「あら?お怪我をされてるんですか?」
驚いた表情を浮かべるラフレーズ様に私は静かに答えた。
「そうなんです……応急処置はしたんですけど」
「可哀そうに…応急処置しかできなかったんですか?私が何とかします」
「ありがとうございます。助かります」
……うん、突き飛ばされたし、一瞬勝ったわって顔されたけどこの際なおしてくれるなら何でもいいかなぁと一歩後ろに下がると、ラフレーズ様はハンカチを外し、手を翳すと白金色の光が瞬く間に怪我はまるで何もなかったかのように綺麗に治っていった。
「わぁ……すごい」
おもわず私も男子生徒も感嘆の声を出すと、ラフレーズ様は満足そうに微笑んだ。
「まぁ簡単ですよ」
「いや、本当にすごいですよ」
純粋に尊敬も込めてそういうと、ラフレーズ様は虚を突かれたらしく、驚いた表情をしたがすぐにそっぽを向いてしまった。
「……そう?」
「あの、お二人ともありがとうございました。」
「いや……綺麗にしたのはラフレーズ様……」
それを聞いてくれてるのかどうなのかわからないが、男子生徒たちは校舎の方へと戻っていった。
「じゃあ、もどりましょうか」
「そうですねぇ」
何故かラフレーズ様に促されそのまま校舎へと戻るとき、何とも言えない空気が漂っていた。
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