聖女の予想は全て外れるそうです(ラフレーズ視点)
「どうしてうまくいかないの?」
私、ラフレーズ・ドミニオンはきっと物語であればヒロインだと確信できる。
実母の死後、神殿の孤児院で育てられ、その中で治癒術と結界術に優れていると神官たちからも褒められていた。
こういっては何だけれど結構、期待されていたと思う。
自分で言うのはあまりよくないだろうが、見た目だって悪くない、むしろかなりいい方だ。
そこは母親に心の底から感謝している。
そうして神殿の機関で様々な教育を受けている時に、自分が神殿派の貴族、ドミニオン伯爵家の血を引くことが発覚したときは自身の運を天に感謝した。
だって、本当に物語のヒロインのようじゃないかと歓喜した。
その頃から、いや何も知らなかった頃から、男子は何でも言うことを聞いてくれたし、私が優秀だからか神官たちもよく褒めてくれていた。
しいて言えば、ドミニオン伯爵と夫人には品位を保てだの、マナーだのなんだのうるさかったが、彼らの後押しのお陰で王立学院の交流学生になることができた。
ここまでの人生、トントン拍子だった。
だってほとんどの男子は……ルギオスとか教員以外は何でも言うことを聞いてくれたし、両親も今までの負い目から面会日は何でも買ってくれた。
おまけに、教育の一環としていった教会でのバザーやイベントのお陰で、市井の方々からも人気が集まりいつからか赤髪の聖女様だなんて呼ばれて、学院に入る前からその噂を聞いていた平民の学生に慕われて、王太子や優秀な成績を持つ生徒、名家の子息や令嬢たちが通うクラスに配属されることがきまり、今か今かと待ちようやく編入したその日、きらきらと輝く美貌を振りまくその人が王太子であることに気づいて、隣の席の陰気な女子に代わるように言ったら、担任に遮られてしまった。
ここで何か問題を起こしたら今後に響きかねないと思い、その場は大人しくしたがその時の反応はいつも、私に同情的だったはずの男子からも、やや何とも言えない表情を浮かべられ、少しだけ不安が残ったが一時的なものだろうと日和見していた。
だって、どうせどうにかなる、そう思っていた。
のに……。
王女には気に入られず、ギャラハッド殿下とも距離を縮められなかった。
だったら、周りから攻めようときっとあの陰気な令嬢に近づこうとすれば、他の令嬢に邪魔された。
けれど、きっとあの傷あり王女に虐められてるのだろう。
王女はどうやら顔に傷があるらしく、きっとそのことが原因で周りに当たり散らしてるんだろう。
だって、顔に傷が出来て普通に過ごせるわけないはず
ここで私が助けたら、きっと誰からも感謝されると王宮に乗り込んでみたら、全くの見当違いだった。
王女は傷なんてあってもそれを忘れるくらい美しかった。
それに穏やかで、かなりの好待遇であんな子を可愛がっていたし、ただ疑問を口にしただけなの何でか分からないけれど、いいなと思っていた王女の護衛からは睨まれてしまった。
「はぁ、なんでだろう」
本来なら、ここであのフルストゥル……?だっけ?あの青くて小さい見るからに何もとりえがなさそうな陰気な子を王女から助けて、王女の心の闇も晴らして、王太子や護衛から感謝されて、なんだったら王や王妃に感謝されて王太子の婚約者に据えられたり、王女の心を晴らした私をみて心を奪われた護衛に求婚されてるはずだったのに、何もかもがうまくいかない。
その上、王宮への出入りも制限されてしまった。
ドミニオン伯爵夫妻からは心配より、怒りが多い手紙も届いた。
「どうにか……しないと」
だって私は主人公で、聖女で、幸せになることが決まってるんだから……。
手のひらを少し、見つめて深く深呼吸をした後に、想像する。
フルストゥルとやらがいる立ち位置に、王女のお気に入り、見目麗しい護衛の婚約者、そして王太子の庇護を受けるもの……そこにいる自分の姿を
うん、おさまりがいい、あんなパッとしない子より聖女である私の方があんな子よりいいに決まってる。
大丈夫、ちょっと焦ってしまっただけ……気を取り直して明日も頑張って学院に行こう。
きっといまにすべてがうまくいく。
私は聖女、私は平民の希望この程度でくじけてられない。
そう自分を鼓舞して、眠りにつこうとしたがどうしてもあのニィリエという王女の護衛の冷めた視線と、温度のない声が脳内で何度も反芻されていくのだった。
「うん、頑張ろう」
頭を振ってそれらを振り払い、自分が彼らの輪の中に入る図を想像するのだった。
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