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ぼんやり令嬢と突然のスカウト

あぁ、かわいいお洋服って見てるだけでもこう気分がるんるんするなぁ。

のほほんと一つ一つ見ていきながら、流石フロルウィッチお値段が良心的だなぁ、どうやって布とか安く仕入れているんだろう。

なんてかわいくない考えがよぎるも、他のお客さんが入ってきたのかベルの音が聞こえ、そんな考えは霧散した。

 

 入って来た方は、雪のように白い肌と赤い髪が特徴的な綺麗な男性だった。

綺麗すぎて思わず長い間見てしまったが、流石に失礼だよなと思い会釈して、洋服や小物に視線を戻した。

 

「えっと……」

 暫くして、なんとも既視感のあるやり取りを店員さんとその男性がしていた。

多分あの綺麗な人は、イズゥムル人なんだろう。

前に、道案内をした方と同じようなしゃべり方だし。

分析しながらゆっくり男性の近くにより、ゆっくり柔らかいしゃべり方と社交用の笑顔で声をかけた。

 

『どうされました?』

『あぁ、君はワシが喋ってる言葉がわかるのか?』

『えぇ、すこしですけど……何かお探しですか?』

 

 そう聞くと、男性は服ではなく生地を買いたいらしい。

一通り要望をきいて、近くにいた店員さんにこえをかけた。

 

「すいません、生地だけの販売ってありますか?」

 私がそういうと、通訳したことに気づいたのか、店員さんは頷いて答えてくれた。

 

「ありがとう。希望の大きさを言ってくれればその大きさにカットして売れるのと値段はだいたい……」

「わかりました、伝えますね」

 

 そうして、男性の買い物をなんとか手伝うと、男性は困ったように笑って握手をしてきた。

 

『いやぁ、助かったよ。外国にほとんどいってなかったから、自分が共用語喋れないの忘れててさ』

『イズゥムルの言語は、共用語と類似してる点は少ないですものね。助けになったのならよかったです。』

『ありがとうな。そんないいこには飴をやろう』

「ありがとうございます。」

 

 ……と、美しい容姿にたいして、どこかおじいさんのような口調と対応をされ、とりあえず笑顔で対応すると男性は続けた。

 

『あぁそうだ店員にすまなかったといってくれこれはチップってことで』

「わかりました。渡しておきます。」

 

 そういわれて渡されたチップ代を、店員さんに渡し、店を出ようとしたところ、聞き覚えのある涼やかな声で呼び止められた。

 

「貴女、すごいのね」

 そこにいたのは、フロルウィッチの経営者であり、ニーチェさんのお母様である、ノージュさんだった。


「ノージュさん、あのお洋服返しにきました遅くなってすいません。」

「いいのよ、あげたつもりだったしでもわざわざありがとうね。」

 

 そういった後、ノージュさんは私のことを頭から爪先までじっと見つめた後呟いた。

 

「貴女、生まれつき青い髪なの?」

「……はい、父方の遺伝で……」

「そう……貴女王立学院の生徒よね?国際科?」

「いえ魔法学科ですけど…」

「……そう、そうだったの」

 ノージュさんはすこし考えたあと、視線を戻した。

 

「ちょっとお茶でもしていかない?」

「はい?」

「ミィナ、ニィリエに電話してくれる?探し物が見つかったわよって伝えといてくれる?」

「はい」

 

 なにやらニーチェさんに話があるようだし、邪魔にならないかな、と小さく手を上げた。

 

「あのぉ やっぱり私帰った方が……」

「飲み物は紅茶でいいかしら」

「あっはい」

 

 ノージュさんのペースに呑まれ、思わず返事をしてしまったが、いいのかなぁと思いつつ。

紅茶とクッキーをごちそうになり、ノージュさんからされる質問に答えているうちに、フロルウィッチのドアが世辞にも丁寧に、とはいえない勢いで開いた。


・・・と思えば、裕な表情ばかり見てきたニーチェさんにしては珍しい、焦った表情が飛び込んできた。

 

「母さん、探し物って…ってお嬢ちゃん?」

「ごきげんよう?」

 

 目があった途端、お互いに首をかしげながら挨拶すると、ノージュさんが私の頭に手をおいて説明を始めた。


「多分この子だと思うわ さっきイズゥムルの方とスムーズにお話しできてたし…フルストゥルさんクティノスの方とお話したことは?」

「一度だけありますけど……」

 

 そのやり取りを聞きながら、ニーチェさんは目頭をおさえうつむきながら聞いてきた。

 

「もしかして、王宮通りのケーキ屋だったりするか?」

「あっそうです、でもなんでそれを?」

 

 ニーチェさんは、それを聞いた途端天井を仰ぎ見た。

そんなニーチェさんの姿をみて、ノージュさんはぼそっと囁いた。

「灯台もと暗しね、ニィリエ」

「皆まで言わないでくれ母さん……」

 話の全容があまりつかめず、もしや少し立ち入った親子の話なのかなと思い、もう帰ってもいいかなと立ち上がり聞く。

 

「あのぉ……帰っていいですか?」

その言葉を聞いた途端に、突如行く手を阻むかの如く、ニーチェさんに目の前に立たれた。

 

「お嬢ちゃん、いやフルストゥル・ベルバニア嬢 お時間よろしいでしょうか。」

妙に丁寧な口調で喋られ、思わず後ずさりしながらなんとか答えた。

「……え?私怒られるんですか?」

「……ちょっとだけな?」

「えぇ……」

 

まさか、服を返すのが遅すぎて怒っているのかなぁ。

最近忙しくって、といえば許してもらえるかな。

淡い期待を込めながら、スタスタとあるくニーチェさんの後ろをぼとぼとついていくと、放心している間に、王宮の一般開放区画を抜け、中庭が見えるサロンに通された。


 王宮の中庭は季節に関係なく、いろんな植物が存在してるとは聞いたけどこうも見事とは……。

でも、どうしてここにつれてこられたんだろう、と首をかしげると気品のあるお声に呼び掛けられた。

 

「ごきげんよう」

 

 そこにいたのは美の女神。

もといアイン王女さまだった。

思わず見とれて言葉を失ってしまったが、なんとかして頭を下げるとアイン様は苦笑された。

 

「かしこまらないで?急につれてこられたんだものビックリよね。座って、座って」

「はい……」

 言われるままアイン様の前に座ると、アイン様は探るように美しく微笑んだ。

 

「ねぇ、どうしてニーチェに隠していたの?」

「はい?隠すとは?そもそも何を?」

 

 一体、何の間違いかと思わずすっとんきょうなこえをあげてしまった。

なんでそんな話になったんだろう。

疑問符をたくさん浮かべる私をみて、アイン様も首をかしげた。


「え?」

「え?」


 それをみかねて、うんうん唸りながらニーチェさんは呟いた。

「あー、お嬢ちゃん、じゃなくてフルストゥル嬢。

俺がイズゥムル語と、クティノス語を流暢に喋れる人を探してたのは、知ってたよな?」

「え?あぁまぁ」

 なんかそんな話してたな。

くらいだけど、それがどうかしたのだろうか。


「で、お嬢ちゃんは喋れるんだよな?」

「一応、ですけど……でも流暢かはわからないですよ?文法とかあやふやですし、それに語学の授業とってるわけでもないので……」

 そこまでいうと、ニーチェさんとアイン様は、心底納得したようにまた天井を仰ぎ見た。

 

「あー……」

「そういうことだったのね……」

「……フルストゥル嬢 頼むから自己評価高く持ってくれ……」

「えぇ?」

 

ニーチェさんの呟きに私はただ、ただ驚くことしかできなかったが、呆けてる場合じゃない謝らないと、と急いで頭を下げた。

 「ニーチェさん、お洋服返すのが遅れて申し訳ございませんでした。」

「あー怒ってないから座ってくれ」

「……はい。」

 

 怒られることは回避したけど、どこか居心地がわるく体がどうも萎縮してしまう。

「なにか理由があるのかなとは思ってたんだけど違うのね」

 アイン様の表情に翳りがおびて、それはそれは美しいがそんなことより、申し訳なさが勝り首を横に思い切り降って答えた。

 

「いえ…まさか自分のこととは思ってなくて」

「そう、謙虚なのねフルストゥルちゃんは」

「いえ、そんな……」

 

 大したことじゃないです、と言おうとしたらニーチェさんに

「はいはい 賛辞は素直に受けとる」

 と制され、ひぇ…とか細い声が出た後アイン様も頷いた。

「そうよ?本当にすごいことなんだから」

 アイン様にもさとされ、クラクラしそうになるも、もっとめまいが起きてしまいそうなことをアイン様は告げた。


「ねぇフルストゥルちゃん 私のところで働いてみない?」

「へ?」

間抜けな声のあとに、ニーチェさんがと物凄くいい笑顔で

「あ これ拒否権ないから」

 言っていたのをどうにか気のせいにしたかった、がそれはかなわなかった。

ノージュお母さんのナイスアシストが光る回になりました。

なんだかんだ息子の話をちゃんと覚えている良き母です。


いつも読んでくれてる皆様、初見の方閲覧ありがとうございます。

いいね、評価してくれる方本当にありがとうございますとてもモチベーション向上につながっております。


お暇なとき気軽な気持ちで評価、ブクマ等していただけたら幸いです。

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― 新着の感想 ―
[一言] 間抜けな声のあとにニーチェさんが「あ これ拒否権ないから」 ニーチェって、そんなに権力持っているの?それにしても、人にものを頼む言い方じゃないね。
[一言] うん。ニーチェ!お前は怒っていい!(笑)
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