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ぼんやり令嬢は聖女とお昼を共にするそうです

「フルストゥル様、聞きたいことがあるんですけど」


「はい?私に答えられることなら……」


 お昼休み、さてこれからシャロとレベッカ様とリーセ様の案内もかねて、カフェテラスにでもいこうかなと思った矢先、ラフレーズ様に席の前に立たれ思わず、きっと誰がみても間抜けな表情を浮かべ、ラフレーズ様を見上げてとっさにこたえる私とは反対に、レベッカ様がそれまでの表情を一切捨てそれを遮った。


 「それは私たちがいたらできない質問ですか?」


 笑顔で、けれど圧をものすごくかけてレベッカ様がそういうと、ラフレーズ様は一瞬で目を潤ませ甘えた表情を浮かべた。


 「そんな、やはり半分平民の血を引く私が由緒正しい血筋であるフルストゥル様といるのが許せないんですね」


 思わず庇護欲を掻き立てられるようなその仕草に、私は思わずおぉ、素直に可愛いなぁと感嘆の声を上げてしまったが以前、空気は冷え切っている。


 「平民とかそういうのは正直、気にしてませんよ。貴女がフルストゥルさんに危害を加えないかが心配なだけです」


 「……危害?」


 きょとんとまたまた愛らしい表情を浮かべ、首を傾げるラフレーズ様を一瞬ひどく冷めた視線でみてから、少し意地悪そうな笑みを浮かべた。


 「もしくはあることないことを言いふらして扇動するとか?」


 「そんなことしません、私を何だと思ってるんですか」


 憤慨してもなお可愛らしいラフレーズ様を見た後に、すっきりとした清涼感のある笑みでレベッカ様が告げた。


 「はい、言質とりましたよ」


 やり取り的に、レベッカ様が私を守ろうとしてくれているのはしっかり伝わるんだけれども、肝心のラフレーズ様が私に聞きたいことの内容が分からず、空気を壊さないように小声でシャロに問いかけた。

 

 「?授業で聞きたいことがあるだけなんじゃ……」


 「そんなわけないでしょ」


 「そうなの!?」


 その様をいつから見ていたのか、リーセ様がその場に似つかわしくない穏やかな笑みを浮かべて提案をした。


 「ふふ……まぁ、聞きたいことが何かは分かりませんけど私たちもご一緒してもいいですか?何せお昼もまだですし……」


 いいながらふと私と目が合った後に、もう一度ラフレーズ様の方をみてにっこりと答えた。


 「もし、フルストゥルさんがお昼を食べそこなったなんて第一王女に聞かれたら、私たち怒られてしまいますわ」


 「あー、たしかにね」


 にこにこと相変わらず可愛らしく微笑むリーセ様、ため息を吐いた後に仕方がないなと言いたげな表情のシャロに、まだ少し警戒心をあらわにしたままのレベッカ様がぽつりと口を開いた。


 「フルストゥルさんがいいならいいですけど」


 「まぁ、簡単な質問だったらいいですけど?」


 それでもいいですかね?と視線でラフレーズ様に訴えると、彼女は即座に上機嫌になった。


 「ありがとうございます」


 そして、ようやくカフェテラス……だといろいろ話が聞かれてめんどうだということで、学院創立のために多額の融資をした家門でなければ利用できないサロンでお昼を取ることになった。

 勿論シャロ名義だし、なんなら顔を見せただけでするっと入れた


 ……何回か連れてきてもらったことあるけど、相変わらずなおしゃれ空間だなぁと感心していると、ぼんやりしている暇もなく美味しそうなミートパイとアイスティーが出てきた。


 「おいしいやつだぁ」


 「よかったわねぇ」


 よしよしとシャロに撫でながら感動している私を見た後に、リーセ様が眉を下げてほほえんだ。


 「すいません私たちまで」


 「大丈夫よ こういう時にこそ使わないとね」


 シャロの笑顔をみて安心した後にふと視線をラフレーズ様にうつすと、やはり豪華さに驚いているのかしばらくサロンの中を眺めていた。

 わかるわかる、おしゃれだしリッチだよねぇと心の中で同意していると、こちらの視線に気づいたのかむっと可愛らしくほほを膨らませた。


 「なんですか?ばかにしてます?世間知らずの田舎者って」


 「ど、どうして?私が田舎出身なのに?」


 「そうなんですか?」


 「まぁ栄えては無いねぇ……良くも悪くも普通だねぇ……」


 生活する分、全く不便はないんだけどおしゃれなブティックとかは無いし、バーとかよりも酒場とかのが多いし、どうしても若者が少ないんだよねぇ……。

 あ、いろいろ思い出したら領地に帰りたくなったかも?とカーテンの柄を見ながらボーっとしているとラフレーズ様がばつが悪そうにうつむいていた。


 「じゃあ……なんで……」


 机の下でぐっと拳を握りながら、怒りというより戸惑いと少しの恨めしさを感じつつ、その感情の原因が分からず首を傾げてしまった。


 「はい?」


 「いや、すいません」


 「怒ってないですよ別に」


 ちょっと考えこんじゃったせいか、顔怖かったかな?それとも威圧感を与えてしまっただろうか、とやや不安になりながら手をふり答えるとラフレーズ様に怒ってないことが伝わったのか、おずおずと顔をあげた。


 「あの……じゃあどうして侯爵家と婚約出来ていたんですか?」


 「…………あのさぁ……」


 あまりに踏み込んだ質問にシャロはぐっと眉間を抑えながら、呆れたように肩を落とすのを見て即座に、やや早口で答えた。


 「あぁ、シャロ大丈夫、大丈夫よー……簡単にいうとあちらの家の事情かな、うちは歴史だけは古い家門だし……まぁ後、当時の侯爵夫人が私の母のことが好きすぎてねってかんじかな?」


 「え?じゃあ恋愛感情は」


 「ないですよーそもそも小っちゃい頃からですし……」


 そもそも、淑女教育で忙しかったし、あまり会えなかったしなぁ……。

 それで学院きたらあれだったしなぁと遠い目をしつつ思い返し、とある疑問が口から漏れた。


 「そもそも恋ってどうやってするんでしょう……」


 私の言葉にラフレーズ様だけでなく、その場にいた全員の視線が私に集中したのだった。

いつも読んでくれてる皆様、初見の方閲覧ありがとうございます。

いいね、評価してくれる方本当にありがとうございますとてもモチベーション向上につながっております。


お暇なとき気軽な気持ちで評価、ブクマ等していただけたら幸いです。

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